第13話

 噂によると………っていうか、盗み聞きしてたしいに群がるヤツらの会話をまとめると、引退試合は次の次の土曜日と日曜日らしい。






 同じ市内の中学校5校によるトーナメント戦。



 前年度優勝校はシード校。



 運良くうちがシード校。



 毎年恒例のこの同市中大会、現在2連覇中だとか。



 3連覇を狙って猛練習をしていた、とか。






 そんな中でのしいの………史季の、キャプテンのケガ。






 何でまたこんな大事なときに‼︎って、あの輪の中に入れないくせに、会話は全力全身で聞いてて、まわりのヤツらと同じ反応な俺。






「部活終わってから残ってちょっと練習してて、そのときにね」

「練習のしすぎかよー」

「しすぎじゃないよ」

「しすぎだよ。お前の鬼の努力はみんな知ってる」

「えー、なに鬼の努力って」

「鬼の努力は鬼の努力だよ‼︎史季はすげぇ努力家なんだよ‼︎知っとけよ‼︎」






 うんうんうんうん。






 ひとりの発言にそこのヤツら………いや、まわりに集まってこそないけど俺みたいに聞いてる全員がいっせいに頷いた。






「オレなんか………まだまだ全然だよ」

「お前が全然だったら俺なんかどうなるんだよー」






 誰かの言葉に、笑いがおこった。











「翼」

「………へ?」






 帰り。



 挨拶してそれぞれがそれぞれに散って行く中、俺は何故か信に………信我に呼ばれた。






 信我と学校でまったく話さないわけじゃねぇけど、あんま教室で話したりしてなかったから………って、基本信は休み時間寝てたり、ぬぼーってしてるから話すタイミングがないってだけだけど、呼ばれて、え、俺?ってちょっとびびった。



 だって、アレから何もだし。






「史季送ってけ」

「………はい?」

「信ちゃん⁉︎」






 突然の発言に理解ができない俺と、ちょっと離れた席にいて、どうやら聞こえたらしいしい。






「家隣だろ?鞄持つか史季おんぶするかして送ってけ」

「な、な、な………」

「信ちゃんオレひとりで帰れるし‼︎部活覗いてくし‼︎」

「じゃあ部活に翼も連れてけ」

「なっ、なっ、なっ………」

「ちょっと信ちゃん‼︎」

「いいな、翼」

「んなっ………」

「信ちゃん‼︎」

「い・い・な?」

「………はい」

「つん………翼⁉︎」






 しいの………史季の、つんちゃん呼びわざわざ改めの翼呼びに、ううってなりつつ、我が道しか行かない信に反論しようにも、前に言われたアレがそのままなだけに反論できない。



 できないうちに我が道しか行かない信が勝手に決めて、念のおし方が。






 胸ぐら。






 またつかまれて、超至近距離。






 キャー、なんて俺らを見た女子が言っている。






 そりゃ言うだろ‼︎近い‼︎近い近い近い‼︎近いって‼︎顔‼︎



 そして。






 こわい。こえーよ、その顔。






 信の………信我のマジな目。



 分かってんだろうなあ?ああん?って目。






 だからもう………俺は両手をあげて言うしかなかった。………はいって。






 俺の返事を聞いた信が………信我がしばらく俺を睨んで。






「やだぁ、見つめあってる〜」






 見つめあってねぇ‼︎睨まれてるんだ俺は‼︎






 って、言いたいけど。



 言ったら、動いたら、くっつきそうな距離だ。何がって口が。






「じゃ、おれは帰る」

「ぅえええええ⁉︎」

「はあああああ⁉︎」






 ぱって離されて、離して、信が俺らに背中を向けた。






 帰るって‼︎帰るって‼︎帰るって何だ‼︎お前だって家俺らんちの向かいだろ⁉︎






 多分同じことを思ったしいが………史季が同時に叫んで、思わず顔を見合わせた。






「あ」

「あ、ちょっ………信‼︎信我‼︎」






 その間に信は………信我はぬぼーって教室を出て行った。






 俺としいを残して。






 ………ど、どうしろって言うんだよ、この状況。







 俺はがっくり項垂れた。

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