第11話

 普通は、と、俺は。






 考えたら動けなくなった。で、突っ立ってた。






 だって普通さ。



 って、出るじゃん。出ねぇの?






 考えて。






 我が道しか行かない信。



 つんちゃん‼︎って抱きついてきたしい。






 出てねぇな。普通は、なんて。



 けど。



 けど、さ。







 普通は。






 普通は、やらねぇじゃん。



 いくら幼馴染みって言ったって。






『「普通」とかクソどうでもいい。そういうのってめちゃくちゃクソだ。クソ気持ち悪いからやめろ』






 なら。



 そのやめ方ってやつを教えてくれよ。






 引退試合、いつなんだろう。






 あーーーーーって、体育館から聞こえた何かを残念がる声に、俺もあーーーーーって一緒に落ち込んだ。











 信………信我にキレられてから数日。



 俺は結局何の答えも出せないままで、しい………史季とも相変わらず挨拶さえできないままだった。



 そのかわり史季を見る回数が一段と増えて、やたらとあのバスケ部のデカい………しいといいコンビネーションを見せていた、確か南ってやつをしいの横で見かけた。






 違うクラスなのに何だ?






 って。






 いや。






 思ったけど。



 何か。






 理由もちょっと分かった気がした。南がしい………史季のまわりをうろちょろする理由。






 何か、変だ。



 変なんだ。何がってしいが。史季が。






 いや多分普通に見える。変わらないように見える。でも何か。






 違和感があって、俺はその日の授業後こっそっとバスケ部の練習を見に行った。






 変わらない。



 変わらないように見える。



 何とかそう見せている。






 けど。






 前よりパスに切れがない。ミスが多い。カットされる。



 ロングシュートやフリースローが入らない。






 俺がしいのバスケやってる姿を見たのは、信に無理矢理連れて行かれたあの1回だけ。



 だからと言って気のせいとは思わない。






 だってしいのことだ。






 ブランクがあろうとなかろうと、どんだけ毎日一緒に居たと思ってんだ。すぐ分かる。






 前回との違いはほんの少し。



 それも多いって言うほどじゃねぇけど。






『引退試合までにその気持ち悪いのどうにかしろ。どうにかしたのを史季に言え。じゃないと負ける』






 ………信。お前っていつから予言者になったの?






 このままじゃ負ける。



 南は多分、分かって、それで。






 ………え、俺?



 しいの不調ってまさか、俺のせい?






 そのときだった。






「………っ」






 しいが、史季が、何でか何かの弾みでこっちを向いて、しいを見てる俺に気づいた。






 やべぇ見つかった‼︎って思ったけど、もうどうにもならなくてどきーって、なった。汗どばーっ。






 でもしいは。



 しいは。






 ………史季は。






 見てる俺に何のリアクションもしないまま、練習を続けた。






「………」






 嫌われた。






 しいに。俺。






 頭の中にガーンって音が、響いた気がした。

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