第2話
相手がしい………史季とはいえ、人を泣かせたことには間違いない。
だから、な。
すっげぇ後味わりぃんだけど。
一応ただいまーってリビングの母さんに言って、俺は自分の部屋に戻った。
「………」
きたねぇ。
父さんの海外赴任は実に父さんの会社の規約でまさかの最長の5年だった。
5年経って戻って来たのがほんの3日前で、俺は9月から公立の中学に通う。
この家は赴任前までずっと住んでいた家で、だから中学には同じ小学校に通っていたやつらがいる。
何年後かには戻ってくるからって宣言してたのもあって戻るのが楽しみだった。
段ボールだらけの片付かない部屋でため息ひとつ。
小4から中3。
成長期と言ってしまえばそう。
俺だって人のことは言えない。身長なんてどんだけ伸びたことか。身長だけで言えば別人の域だろ。
つまり。
「………あんなの、分かるわけねぇじゃん」
しいは、史季は早産で、生まれたときがそもそも小さかったらしい。
普通に育ったのが奇跡なぐらいだったらしい。
早産ではなく普通に生まれてたら、もしかしたら俺とは2学年違ったかも、らしい。
だから色々と大変そうではあった。
小さくてガリガリで、何をやるのにも人の倍以上時間がかかって、だからすぐ、よく泣いてた。
できないのが悔しくて、負けるのが悔しくて。
でもいつも一生懸命で、できるとやったあああああって全力で喜ぶから憎めなくて、応援したくて、いっつもつんちゃんつんちゃんって。
そんなしいが、史季が………『あれ』。
まだ、小さかった。今も。
中3であの身長は、小さい。細い。
そんでもって。
………何で俺好み100%の美少女顔になってるかなぁ。
ってかそもそもしいって、史季ってあんな顔だったっけ?
小さすぎて、細い通り越してガリガリすぎて、全然違った気がする。
確かに髪も目も真っ黒な俺より茶色っぽかった記憶はあるけど。
5年ってすげぇんだな。
『つばさー、今日後で四ノ宮さんとこにご挨拶に行くわよー』
「………え”?」
四ノ宮さんとこにご挨拶って。
よりによってさっきの今日って。
他はまわった。
右隣と向かいは、昨日。
そのときもうひとりの同学年幼馴染みには会ったんだよ。
昔から我が道を我が道しか行かない、まさに名は体を表す、のんびり屋の
俺らが行く5分ぐらいまで寝てたらしい信………信我は、終始寝てるのか起きてるのか分からない状態で、無言で手を上げただけだけど。
それを会ったと言っていいのか分かんねぇけど。
そしてしい………左隣の史季の家はまったくの留守で、そうだよ、せっかく行ったのに居なかった史季が悪いんだろ⁉︎
って。
昨日は平日。
今は夏休みだけど、あの格好。さっきの体操服に青いハーフパンツじゃ、学校だったのかも。部活。
まさかと思うけど、俺のために走って帰って来たとか?あのクソ暑いなか。
………ごめん。
言い訳は山のようにあった。
でも、最終的に俺の中に浮かんだ言葉はそれだった。
しいが、史季が居たら、会ったら謝ろう。
………俺、あんま悪くねぇ気がするけどな‼︎
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます