なかったことに
わたしが死んだらどうする?と聞かれ、なかったことにする、と思った。これを口に出したらまずいとわかるくらいには正常なので、悲しい、と返した。
居なくなってしまった人が、そばにいた記憶は重すぎるのだ。歌が流れる、匂いがする、コンビニにふらっと立ち寄るたびに、あなたの好きなものが目に入る。その、着ているお気に入りの服はすごく有名なブランドだし。お揃いにしたスマホケースも、たぶんすぐに変えてしまうだろう。あなたが居なくなったとしても、それらはずっとこの世に残りつづけて、僕は見るたびに思い出す。居たことと、居なくなったことを思い出す。だから、出会わなかったことにする。
わたしも悲しいな。そう言って、顔を近づけるから、いつもの匂いがした。傷ついた自分を救うために、いつかあなたは僕から消されるのに。
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