最終話 LadyRadyLady

王女の王位継承の式典の後


研究所で片付けをしている途中

「俺は虫の研究に戻る」

とユリウスが突然告げた。



「えぇ、勿論です。私が巻き込んでしまっただけですから」

寂しい気持ちが無いわけではないが、そんな予感はしていたサナは

引き止めないと最初から決めていた。


「最後に1つ聞いていいか?」

そういうと、ユリウスは握った手の平を前に突き出すと、サナの目の前で開いた。

そこには2cm程の小さなキラキラしたてんとう虫が乗っていた。

赤にも緑にも見える表現しようのない変わった色をしている。


「この虫のように角度で色が変化するアイシャドウがあったら、君は欲しいか?」


サナは一瞬ぽかんとしたが、まじまじと虫を観察すると、いつもの理想の化粧品を話す熱の入り過ぎた口調になり

「そうですね、瞼の上が瞬きする度に様々な色に変化するなんて最高だと思います。それに一つで何色分も楽しめるのでコストパフォーマンスも良いので確実に売れると思います」

と答えた。


「そうか……なら、やっぱり俺は虫の研究を続けるよ」


手のひらを歩く虫を観察する様に眺めながらユリウスは意外な言葉を続けた



「そして、その研究を使って最高の化粧品を作る」



予想外の言葉に、サナは暫く返答が出来なかったが、やっと絞り出した言葉は喜びよりも疑問だった。

「良いんですか?これからも付き合わせてしまって……」

「俺は今日までも、やりたくない事をした事は一度も無い。自分で選んだ道の先に居るつもりだ」

手のひらの虫が、キラキラと輝きながら飛び立って行った。




「アイシャドウなら、色の変化があってもやっぱりある程度のカラーバリエーションは欲しいですよね!赤と緑に変化するなら、青系も欲しいですね。それにやっぱりピンクも……」

「一気に注文を付けるな!そんなすぐに何色も作れるか!まだ一色も出来てないんだぞ⁉」

「またまたご謙遜をユリウスさんならすぐ出来ますよ」

「それは俺の努力であって簡単に作っている訳じゃない!」



2人の言い合いは、これから先も途絶える事なく続いていく。

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美容オタクが転生したら、国を救ってしまうかもしれない。 夏目 夏実 @natsume_natsumi

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