2章 6話 A color for you3

そこからは大忙しだった。

ドレスはカーテンに近い色のものを大急ぎで仕立て直し、袖と上半身のフリルを取ってシンプルなデザインに直す作業が大急ぎで行われ

サナは慌ててメイク道具を取りに帰り、社交界にしっかり間に合う様に姫のヘアメイクの全てを仕上げた。


メイクを仕上げている間になんとか仕上がった少し青みのあるピンクのドレスに身を包み、毛先をカールさせた髪を高く結わえ、白い頬にほんのり赤みをさして、形の良い唇を色づかせたモニカの姿は、この世のものとは思えない美しさだった。


「わぁ!凄くお似合いですよ!」

カタリナが声をワントーン上ずらせながら興奮した様子で褒め讃える。

「えぇ…えぇ…本当に大変可愛らしいです…」

メイドさんは涙ぐみながら姫の姿を目に焼き付けるかのようにジッと見ている。


「そうか…」

と、素っ気なく呟いただけだが

照れた様な仕草で俯く姿は、やはり可愛らしかった。


「ありがとう、似合う色を選んで貰えて、綺麗にして貰えたから、これで自信を持って社交界に参加出来るよ」

そう言いながら手を差し出す

サナはその手を両手で包みながら

「いいえ、私がした事は大した事ではありません。元ある美しさに光を当てたに過ぎないです。輝いているのはモニカ様自身ですよ」


その言葉に姫は優しく微笑み、舞踏会へと向かって行った。



後日談


社交界の日の数日後、ユリウスが急に城から呼び出された。


予想より大分早く帰宅したユリウスが見るからに不機嫌だった。

「お帰りなさい。何の呼び出しだったんですか?」

ユリウスはその質問はサラッと無視をしたが、嬉しい報告を持って来てくれた

「カタリナさんが言っていたぞ、この前お前がお節介を焼いた姫様、社交界で隣国の王子に見初められて熱烈なアプローチを受けているらしい。これでこの国も暫くは安泰だな」

「そうなんですか!?」

「それで、姫様がメイクをしていた事で……」

そこでユリウスは深ぁぁぁぁい溜め息をつくと

「隣国の方々が挙って欲しがったので生産の速度をもっと上げろだってよ!!!」

「……へ?」

「今でもこんないっぱいいっぱいでファンデーションの開発に手が回ってないって言うのによぉぉ」

ユリウスは空中の目に見えない何かを恨みを込めて握り潰すような動作をしながら、沸き起こる怒りの矛先を探しているようだ

「その……ごめんなさい」

「俺がお前が悪いと思っているのに、怒らないと思うか?」

「いえ、絶対に私本人を怒鳴ります」

キッパリと言い切られると多少バツが悪いのかユリウスも歯切れが悪くなる。

「…まぁな…だからコレは、そう悪い事ばかりじゃなかったんだよ」

「隣国との貿易の品にまで上り詰めたんだ。そうなれば最悪ファンデーションが完成しなかったとしても、即処刑は間逃れられるかもしれない。まぁ可能性のレベルだけどな。

正直あの王女が完全に許してくれるとも思えない…ただ生産技術や生産する人材を全員同時に処刑はしないだろうから、今一緒に作っている奴らには作り方を教えておけば、その知識で命を繋げるかもしれない」

「保険になるって事ですか!?」

「あぁどれだけの価値か分からないけどな」

「それでも巻き込まずに済む可能性があるなら、全力で生産して貿易の品にまで昇格させましょう!

そうすれば生産技術も価値になる!知識で命を守りましょう!」


「どうなるか相変わらず分からないが、首の薄皮1枚が辛うじて繋がったと思おう」

「そうですね!次の一手はもう少し分厚めの皮が繋がるように頑張りましょう!」

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