2章 5話 A color for you2
この少女はモニカは、王女の従姉妹に当たり
前、国王陛下の弟の末娘で、今年社交界デビューをする18歳だそうだ。
今晩、開かれる舞踏会への招待を受けてこの城に来ている。
この国は、四方を別の国に囲まれていて、海もなく、農業と林業だけが主な収入源で隣国と比べると国としての魅力が少ない。
そして大きな医療設備がないので、大病の患者が居れば隣国の医療施設を頼っている状態で、隣国との繋がりが無ければ国としての存続も危うい。
本来貿易や国同士の政治関係は国王が取り仕切るのだが、今の陛下は高齢でそれが上手くいかない。かと言って、今の王女になるとさらに状況が悪化しそうなので
この姫君にどうか隣国の王子と恋仲になり、政略結婚をして、この国の立ち位置をより安全なものにしたいというのが、大人達の企みなのだ。
しかし当の姫は、政略結婚どころかドレスの色でゴネている始末なので、この作戦はスタートする前から座礁したのである。
「色と言いましても貴族の決まり事で、初めての社交界にはピンクのドレスと決まっているんです」
「それでしたら、ピンクはそのままに、色味の違うものはありませんか?」
「色味…とは?」
「そうですね__」そう言いながら室内を見渡したサナは、思い付いた様に窓際に向い
「姫様!こちらへいらして下さい!」
と手招きした
「窓から何か見えるのか?」
と訝しながら近付いて来た姫に、突然カーテンをかけた
「貴方!何をなさるのですか!!」
これにはメイドさんも声を荒らげる
そんなメイドさんの叫びは周波数が合わなくて受信出来ないかの様にさっぱりと無視をして
「カタリナ!鏡をこちらに持って来て!」と指示をする
カーテンから首だけを覗かせ、何かの悪ふざけとしか思えない間抜けな姿にされた姫を鏡に写すと、背後に周りカーテンを捲ったり戻したりし始めた
「モニカ様、ご覧になって下さい。今お召しになっているドレスは肌に馴染まず悪目立ちして、鏡越しで見ると洋服にしか目が行きません」
「ですが、こちらのピンクのカーテンの色味だと、モニカ様のお顔に目が行って、顔色が映えるのが分かりますか?」
「ほん…とうだ…」
思わず漏れ出たような共感の言葉に驚き
メイドさんもカタリナもサナのようにモニカの背後に周り、鏡を覗き込む。
「本当ですね!カーテンの色の方が血色が良くて健康的に見えます!」
カタリナが興奮した様子で賛同する
「何故このような事が起こるのですか?」
メイドさんも訝る様に尋ねた
「パーソナルカラーというものです。肌の色によって似合う色味が違うのです。その事を知っておくと【好きなのに似合わない服や色】と出会った時に対処する事が出来るんですよ。似合わない色の服は着てはいけない訳ではなく、似合わない理由を正しく知る事で、色味を変えたり、使う色の面積を変えるなど正しい対処が出来ますよね?そのためにパーソナルカラーというものがあるんです」
「それに髪型とドレスの形も体型や骨格に合わせると、よりまとまりを出せると思いますよ。モニカ様は何かスポーツか武術の心得がおありですよね?」
「何故知っている?……確かにフェンシングが趣味だが」
「私とぶつかった時、体格差があったのにモニカ様は倒れなかったので、大幹が鍛えられる事をされているのだと思いました」
「そういう事か。しかしそれがドレスと何の関係が?」
「スポーツをされていると、他の貴族の女性よりも筋肉が付いているのでフリルが多すぎるドレスは広がってしまって余計に不釣り合いな印象になっていたのだと思います。
上半身はスッキリとしたデザインの物の方がお似合いになると思います」
「そしてこのドレスの色ならチークとリップの色は…」
「ちーく?なんだそれは?」
「お化粧品__コスメでございます」
とサナは満面の笑みで答える
「あぁ…作ることが出来れば処刑を取り止めると約束したという奴か…じゃあお前がその条件を持ち出した命知らずな奴か____納得だ」
とモニカは少し苦い様な呆れた様な笑顔を浮かべた。
「社交界は何時からでしょう?取りに戻って施しても構わないですか?」
「あぁここまでお前に任せたのだから、最後まで任せよう」
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