2章 4話 A color for you1

化粧品開発を初めてから1ヶ月以上が過ぎ

今日は陽射しが高く、太陽が煌々と照り付けている。

今まではその日差しにうんざりしていたサナだったが、今年は熱望していた【日焼け止め】をユリウスが作ってくれた。


あれからユリウスは口紅に使った顔料を元に、様々な色の開発にあっさりと成功して、アイシャドウやチークなどの色物を凄い速度で完成させた。

まさかのファンデーションも粉タイプの物はあっさりと作ってみせたが、残念ながらまだカバー力は低く王女の痣を隠せるものではなかった。


それでも順調な開発速度で、希望が見え始めた。


そして夏が来て、サナが暑さと日差しに永遠と文句を言っていると、瓶に入った【日焼け止め】を差し出して来たのだ。


ユリウスが言うには痣を隠すのに光を乱反射させる技術を思い付いたが、それが日焼け止めに応用出来たのだそうだ。


最早サナの理解を超え始めたユリウスの開発技術だが、そのお陰で昨年よりは朗らかな表情と軽やかな足取りで太陽を照り返す道を歩いている。



サナは化粧品開発の経過報告のために城を訪れて居た。


定期的に訪れているので門番とも顔見知りになっているし、何度も訪れていると緊張する事もない。

しかも案内はいつもカタリナがしてくれているので、友人に会いに来ている感覚だった。


2人は他愛もない昔話をしながら王女への報告係をしている執事が待つ部屋に向かう。

王女と直接会う訳では無いし、使用人の殆どはサナ側の味方なので、気楽なものだった。


報告が終わり、出口までの道のりを二人は他愛のない昔話をしながら歩いていた

「あの時は本当に慌てたわ。サナってば凄い高い木に登ったまま降りられなくなって、でも慌てたて呼んできた大人達は皆高所恐怖症でね」

「そうそう!それで結局助けてくれたのはカタリナのお母様だったわね」

「本当。お母様が1番やんちゃだったわ…」

「嫌よ!!!!」

2人の談笑を引き裂くように、力の籠った拒絶の言葉が廊下に響いた。

「嫌だってば!!!!」

そう叫びながら目の前の部屋から飛び出して来た少女とサナがぶつかる。

どう見ても少女の方が小柄だし、華奢なのに、何故かサナの方が床に転がった

慌てたカタリナが助け起こそうと駆け寄ろうとしたが、それよりも早く少女の方が手を差し伸べた。

「ごめんなさい」

「いいえこちらも注意してなかったので…」

その時初めてぶつかって来た少女を認識すると、淡いピンクのフリルがたっぷりと付いたプリンセスラインのドレスを身にまとい、絵本の中のお姫様の様な様相だった。


しかし、なんと言うか…


「お待ち下さい姫様!」と少女が飛び出して来たドアから今度は年配のメイドの女性が飛び出して来た。

「追ってこないで!」また声を荒らげる。


少女は助け起こしたサナの背中に周り隠れた。

「あの、どうされたんですか?」

「そちらの姫様が、我々が用意したドレスではお気に召さないそうで…」


確かにそう…

似合っていないのだ。


クールな顔立ちをしているのに、無闇に可愛らしいデザインのドレスなので、顔と似合わずチグハグな印象だ。


「私にはこんなドレス似合わないだろう!お前達もそう思うよな?」

と少女はサナとカタリナに問いただした


物凄く答え難い質問ではあるが、社交辞令が罷り通る雰囲気でもない

「そうですね…正直お似合いにはなりません」

「ちょっサナ!?」

カタリナも慌てて口を挟む


「ほらな?やはり私はこんな可愛らしい服は似合わないのだな…」

そう言って少女はみるみる目を潤ませる。

「あ、いえそうではなく、肌の色とドレスの色が合っていないのです」

「「色?」」


呆気に取られた様に聞き返したのは、正直だけではなく追い掛けて来たメイドさんもだった。


「決めた!この者にドレスを選んで貰おう!」

「え?」

「さあ、来い!」

そしてサナは反論の余地もなく、部屋に引きずり込まれた。

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