第15話 パーティー②
「本当にすごい人数ですね。」
僕が少し引き気味に言う。
町の祭りでもこんなに人は集まらなかったぞ…
パーティーの会場はかなり広くそして奥にはステージがあり、拡声器が置かれていた。
拡声器っていうのは魔石に魔法陣を書き込み、魔力を通すとその効果が発揮される”魔道具”の一種だ。
中でも拡声器は特に高かったはずだがまあそこは王族というところだろう。
魔法陣はまだわからないことだらけだからいつか学んでみたいなぁ。
そんなことを考えていると、
「まあこの国の人間だけじゃないからわね。それはそうとして、私は今日の主役としてちょっとしたスピーチがあるからお父様のいるところへ行かなくてはいけないから。」
王族自慢の後、王女様は一直線に王様がいるところに向かっていった。
「ちょ、待ってくださいよ!」
護衛として見失うのは結構まずい。
人ごみを抜けるとそこには王様と王女様がいた。
「よく来たね、ユリス君。今日は私の娘の誕生日だからね、楽しんでほしいが護衛のこともしっかりと頼んだぞ。」
「はい。」
僕はその言葉で肩に力が入る。
一気に緊張が走ってきた。吐きそう。
「もうユリス!お父様も今日くらい暗い話をしない、それに私なら大丈夫よ!」
王女様の言葉に緊張がほぐれる。
僕は王様や貴族たちの前で
僕は声に出さずに王女様を拝んだ。
「それではそろそろ始めよう。それじゃあマーガレット。」
「わかったわ。」
そういうと王女様は舞台に立ち、真ん中にある拡声器を手に取った。
そして咳払いを一度した後、始めた。
「皆様、今夜は王家主催のパーティーに出席していただきありがとうございます。今年で私ももう16歳となりました。まだまだ王族として未熟ですが、どうかよろしくお願いします。それでは、今日はしっかりと満足して行ってください!」
王女様がそう言い終わると、周囲の人たちから拍手が来た。
しばらくすると拍手はやみ、今度は話し声が聞こえてきた。
どうやら雑談タイムに入ったようだ。
王女様の方はどうやら全方向をしっかりと人でブロックされている。
そしてその中にはいつも通り猫を被った王女様が話していた。
王様も別で地位が高そうな人と談笑している。
僕は辺りを警戒しながら近くのテーブルにあったチキンを食べていた。
マジでうまいな、このチキン。
王女様がある程度の人との会話を終えてから僕のところへやってきた。
「よう、ユリス。楽しんでる?」
「ええ、本当に飯がおいしいです。」
「いやそこかよ。」
「それにしてもほんと人気者ですね。」
ほんと、王女様が話しかけてきた時から周りの『誰なんだこいつは』の目線が痛い。
「まあね、それよりもあなたも何人か気の合いそうな人を見つけて過ごしなさいよ。」
そういって王女様はまた人ごみの中へ戻っていった。
そのあと、パーティーが終わるまで特に怪しいものはいなかった。
いたとしたら王女様の終わりの挨拶の時、舞台の下からドレスの中を頑張って角度を調節して見ようとしている変態紳士がいたな。
と、それぐらいだ。
特に何もなくパーティーは終わりを迎えた。
何事もなく終わってよかった半面、これからが心配にもなる。
舞台から戻ってきた王女様が僕に話しかける。
「ね?何もなかったでしょ?」
「そうですね。このまま何もなければいいですが。」
「大丈夫よ。」
そういった会話をしていると、王様がこちらにやってきた。
「今日はお疲れだったな、もうよい今日は遅いから早めに寝なさい。」
そういって王様は眠たそうに廊下へ行き、自分の部屋へ向かった。
「さて王女様、これは僕からです。お誕生日おめでとうございます。」
そういって僕は王女様に一輪のバラを渡した。
実は剣をもらった後、こっそり買いに行っていたのだ。
…自分の金じゃないけど。
「ありがとうユリス!」
花を受け取ると王女様は笑顔でこちらに言った。
「それでは、また明日。おやすみなさい。」
「ありがと、また明日ね。おやすみ。」
やりたいことを済ませたので王女様の部屋の前で別れた。
とりあえず何もなくてよかった。
「今日はもう寝るか。」
そういって僕は自分の部屋へと足を進めていった。
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〈王女side〉
「ん…!今日はやっぱり疲れるわね。」
仲がいい人はいいのだが、あまり好きではないオッサンもさばいていかないといけないからかなり疲れる。
「…それにしても、まさかあんなにも気が利くとはね。」
一人、真っ暗な部屋の中でもらったバラを見る。
月明りに映り、いつもよりもきれいに見える。
正直、かなり驚いている。
「そういえば”アイツ”がくれた花もバラだったっけ。」
そういって目を細める。
「今日はもう寝ることにしますか。」
そういってお風呂に入ろうと移動したその時だった。
『”影縫い”』
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次回も王女サイドから始まります。
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