第11話 クレア

「ふぁぁ~」

僕はあくびをし、ベッドから降り、着替える。

さて、今日は何をしようかを考えていると。

コンコン。

ふいに窓がノックされる。

「街に出かけるわよ、ユリス!」


は?


「な、何て言った?」

「だから、町に出かけるって言ったのよ!」

「普通にダメなのでは…」

「そっちこそ、細かいことは気にしちゃだめですよ?それに気晴らしよ。」

何言っているんだ、窓枠に座っているこの王女は。

しかもちゃんと変装まで完璧にしている。

「わかりました…」

仕方なく僕は王女様と同じように窓から町へと飛び込んだ!



「にしてもよかったんですか?」

「ん…?ああ、王城を抜け出したこと?」

「ああって、それ以外ないじゃないですか。」

僕は売店で買ったオレンジジュースを飲みながら言う。

あの時からおよそ2時間たった。

王都を一通り案内してもらった後、僕たちは少し遅めの朝ごはんを食べた。

正直、王城は今頃どうなっているのか心配でしょうがない。

「それなら大丈夫よ、私にそっくりに見えるようになる幻術を従者にかけてあるから。」

大丈夫って、確信犯じゃないか。

「まあ、お父様が見たらバレるでしょうけど、今の時間帯は仕事で忙しくて会うことはないからね。」

さすがは王様だ、なんか親子愛を感じる。

「ん…、その恰好は…マーガレット様?」

「げっ、クレアじゃない。」

「『げっ』じゃないですよ、また王城を抜け出したのですか!?」

「あの…、この方は一体…」

僕が全く話についていけない。

「彼女はクレア、この国の騎士団長をやっているのよ。あ、あとクレア彼が私の護衛となったユリスよ。」

「は!?、こんな弱そうなやつがマーガレット様の護衛?冗談じゃないわ。」

かなり驚かれた…、僕はそんなに弱そうなのか?

「はじめまして、王女様の護衛に任命されましたユリスです。」

僕はあくまで、紳士的な態度で接する。

「マーガレット様、騎士団から何名か派遣しましょうか?この者ではいささか不安かと。」

「ん~…、そこまで言うなら二人で戦ってみたら?私も少し気になるし。」

…やってやろうじゃないか。

僕は珍しくかなり燃えていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「おっ…すごいな…」

思わずつぶやいた、僕は騎士団の闘技場に来ていた。

周りには騎士団員と思われる人たちによる人だかりができていた。

「団長ー!がんばれ~」「クレア様、頑張って下さーい!」

周りからクレアに対する歓声が、聞こえる。


「それでは、どこから来てもよいぞ。」

クレアは腰に付けた剣のさやから剣を抜き取り、構える。

…確かにこいつは強いな。

「…では、行きますよ。」


『”ファイヤーアロー”』

とりあえず、初級魔法で様子を見る。

「な、いきなり上級魔法だと!しかも無詠唱で!」

かなり驚いているようだが難なく躱す。

「…お前は、私の想像以上に強いな。悪いが団員達も見ているのだ。本気で行かせてもらう!」

クレアのが変わる。


『”神速しんそく”』

その瞬間クレアが僕の目の前にきて、一閃。

僕は紙一重でよける。

…結構危なかった。

「っち!これもよけるか!」

「そろそろ危ないので僕のほうからも行きますね。」


『”限界突破オーバーリミット20%』

僕は全身に魔法をかけ、腰から剣を抜く。


『”ブリザード”』

さっきのように動かれたら困るので、足元を凍らせておく。

そして動けなくなったクレアに近づき、剣を首元で寸止めする。

「これでいいですか、クレアさん。」

「あ、ああいいだろう。」


…あたりに微妙な空気が漂う。


「も、もういいですよね、王城に帰りましょう王女様!」

唖然としている王女様の手を引き、速やかにその場から離れる。


王城まであと5分というところでようやく王女様が口を開いた。

「…あなた、かなり強いわね。」

「まあ、毎日魔物を狩ってましたからね。」

「そういえば、あなたってなんでこの国に来たの?」

そういえば話していなかったな。

僕はこれまでの経緯を話した。

「えっ!無人島に6年も遭難していたの!?」

「まあ、はい。」

「ところで最後の体に使った魔法は見たことのない魔法だったけど、どんな魔法なの?」

「ああ、”限界突破オーバーリミット”のことですか。あれはですね、体に微弱な

雷魔法をかけることで、筋肉を活性化させているんですよ。あ、でもデメリットもありますよ。下手してら死ぬとか、100%で使ったら動けなくなるとか。」

「…普通はそんなことできないのよ。」

「何言っているんですか、こんなの雷魔法の応用ですよ?」

「まあいいわ、暗くなる前に早く着きましょうか。」


僕たちは出た時と同じように壁を登って窓から中に入った。


中には王様が居座っていた。


ものすごく怒られた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

・クレア

騎士団<剣の舞>団長

26歳 女性

固有魔法『”神速しんそく”』自分の間合に入るように魔力を消費して瞬間移動する能力 距離は半径15mまで。

マーガレットにとって姉のような存在。

団長なだけあって団員からの信頼は厚い。

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