第7話 いなくなったゼラ

 次の日、テリーヌはゼラを起こしに呼びに行った。


 彼女は、役場の男たちに連れていかれようとした事件以来、テリーヌの好意で彼女の家で生活していたのである。


 しかし、いるはずのゼラの姿がそこにはなかった。


「ゼラ……?」


 もしかしたら、ゴミ溜めに行ってしまったのかと思った。ここの所、毎日のように朝から晩まで根詰めて働いていたためである。それも仕方のないことで、彼女はゴミが増えるたびに、自分の使命が燃え出して、いつも以上に働きすぎてしまうのである。


 最近はそれが特にひどく、以前は楽しく会話をしていた食事もゆっくりできないせいで、ご飯を食べるだけになっていた。それもゼラの食欲は衰えていて、食事をしない日も度々あった。


 テリーヌは心配をしながらも、ゴミ溜めのほうへ向かう。ゼラがいると期待して――。


 しかし道に出ると、すぐ傍で顔見知りの人たちが集まり、人だかりを作っていたのである。彼女はゴミ溜めに向かう前に、そこに寄り道をすることにした。もしかしたら、ここに来るまでの間に、ゴミ溜めに向かったゼラを見かけたかもしれないと思ったからである。


「何かあったのかい?」


 テリーヌが近くにいたオーウェンおじさんに聞くと、何故か血なまぐさい臭いがした。


 すると彼は、皺だらけの顔に苦悩を浮かべて呟く。


「殺人があったみたいなんだ……」

「えっ!」


 テリーヌは、驚いて口を手でおおった。


「今、警察が来て現場検証をしているとよ……」


 彼女は人だかりの奥に視線をやる。そこには警察車や救護車などが止まっていた。


「で、でも、殺されたって、誰が?」


 あまり大きな声を出してはいけないと、小さな声で尋ねる。すると、オーウェンは苦渋くじゅうに満ちた顔で「ゴミ廃棄物の業者の男だそうだ」と呟く。


「え……」

「一体、誰がやっちまったんだろうな……」


 その瞬間、テリーヌは何だか嫌な予感を感じた。そして、早くゼラに会わなくてはいけないという気がしたのである。

 彼女はそこからゆっくりと離れ、ゴミ溜めのある方へ急ぎ足で向かった。

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