第6話 再び

 それから数か月経った頃。

 ゼラがゴミ溜めに戻り、徐々にその場所がきれいになっていった。


 ――もう少しで、完全な更地になる。


 そう思った次の日だった。


「ゼラ、大変だ! ゴミ溜めが!」


 テリーヌの家で朝ご飯を食べていたゼラは彼女に言われ、急いでゴミ溜めに向かう。するとそこには、大量のゴミが山積みにされていたのである。


「どうして……こんなことに」


 ゼラは驚きを隠せない様子で見つめている。


「ゼラ、あたし、皆に知らせてくる」


 テリーヌに言われ、ゼラは小さくうなずいた。


「はい……」


 ゼラが呆然ぼうぜんとゴミの山を見つめていると、彼女を呼ぶ声が後ろからした。


「ゼラ!」


 振り返ると、近所の人たちがぞろぞろと集まって来ていた。


「皆さん……」

「テリーヌさんから聞いて、とんできた」

「すみません、急にこんなことになってしまって……」

「謝るんじゃねえ、ゼラ。お前さんは何も悪くないよ」

「……」


 すると傍にいたお兄さんが、しゃがんでゴミの様子を見た。


「これ……ゴミが新しいよ。きっと昨晩の間に持ち込まれたんだ」

「嘘でしょう⁉」

「信じられない」

「ふざけやがって!」

「もう少しで、もう少しで終わるところだったのに!」


 人々が口々に悪態をついた。それにゼラも共感した。


「本当にそうですよね……」


 そう呟き、ふらふらとゴミ溜めに踏み入る。


「ゼラ?」

「……大丈夫です。私、がんばります。また、きれいにしますから」


 口ではそう言っていたが、彼女の背中は丸まっていて、本当に悔やんでいる様子が人々の目に見えた。

 一番頑張って、ここが更地に戻ることを望んでいた人が、一番悲しんで当然である。


「ゼラ……、俺たちもがんばるよ」


 おじさんはそう言ってくれたが、振り向いたゼラの表情には、頑張って作った笑顔があるだけだった。


 それから、人々は懸命にゴミ溜めになっていた場所を片付けようと努力した。だが、その努力とは裏腹にゴミは増え続けたのである。

 どこからか噂を聞いたのだろう。


「捨てておけば廃棄物をきれいに片付けてくれる場所がある」と。片付けているのはゼラや町の人たちであって、魔法ではない。それなのに彼らは平気な顔をして、このゴミ溜めに毎日のようにゴミを持ってきたのである。


「――許さない」


 増え続けるゴミを見て、時折ゼラは小さな声でそのように吐き捨てるようになっていた。


 今まで物静かだった彼女の目には、恐ろしい光が潜んでいる。


 そしてついに、ゼラの堪忍袋かんにんぶくろが切れた。こうなっては誰も止めることはできない――。

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