第2話 テリーヌおばさん
ゼラは、ほとんどいっていいほど
しかし、近所に住む人たちは彼女のしていることが何となく分かってくると、目的を知りたくなってくる。それは好奇心という気持ちのせいでもあるが、ちょっぴり怖い存在であるゼラのことを知っておきたいという心がそうさせたのだろう。
人間は分からないものに対して、恐怖心を抱くものだ。
ある日、近所のテリーヌおばさんが、勇気を出してゼラに
どきどきして返事を待っていたテリーヌだが、待てど暮らせど一向にそれがない。彼女はずっと黙々と作業を続けている。
無視されたのかとも思ったが、もしかしたら作業に集中しすぎているのかもしれないし、もしかしたら話すのが苦手な人なのかもしれないと思い直した。そう思ったのは、彼女の傍に置かれた冷蔵庫が、見事にきれいに
それからテリーヌは、毎日挨拶をした。めげそうになったこともあったが、一週間続けていた。すると突然彼女が、にこっと笑いかけたのである。
テリーヌは、驚いた。
不思議と彼女の笑顔に惹かれたのだ。みすぼらしい格好していて、汚らしい姿をしているのに、何故かその笑顔がきれいだったのである。
テリーヌはさらに勇気を出して、ゼラに近づき声を掛けた。
すると、彼女は少しずつ話をしてくれるようになった。
「あんた、名前は?」
「ゼラ」
短く、澄んだ声でそう答えた。そしてこのとき初めて、テリーヌはゼラの名前を知ったのである。
「そうか……あんたの名前は、ゼラって言うんだね。あたしはテリーヌだよ。テリーヌおばさんとでも呼んでおくれ」
するとゼラは小さく繰り返した。
「テリーヌ、おばさん……」
おばさんは嬉しくなって、質問を続けた。
「ゼラは、どこから来たの?」
すると彼女は困ったような表情をし、首を横に振って答えた。
「分からない。気づいたらここにいた」
「家族はいるの?」
その問いにも首を振った。
「分からない。気づいたら一人だった」
「何故、ゴミ溜めに住んでいるの?」
「修理をしたり、きれいにしたりするために住んでいる」
おばさんは、ゼラの周囲を見渡した。確かにゼラがいるところだけ、きれいになっていたのである。
テリーヌは驚いた。行政でさえ手を付けてくれない
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。