第5話 ファルマの王女達 Ep.第四王女

「今日の講義はここまで。また明日。」

『ソフィア先生ありがとうございました!』

「はい。帰路は皆さん気を付けてくださいね。あんまり遠くなくても、ですよー?」

『はーーーーい!!!!』


―PM4:30

青空教室での授業を終え、8歳から18歳の生徒の背中を見送る。

講師をしていたのは第四王女のソフィア。

臼桃色のくせ毛の癒し系末姫と言われるが

それはの話で

勉強にはすこぶる熱心で厳しく、

普段も大臣を口論で負かすほどに弁が立つ

才女である。


「疲れた……笑顔は可愛いけど五月蠅い……子供って不思議だなぁ…」


かく言う彼女も最年長の生徒の一個上の年齢なのだが、教師ソフィア生徒こどもたちとして接しているせいなのか親目線になってしまい、達観している節があった。


「城に帰ったら姉様に今日の報告をして、母様に子供達のお土産話をしてあげたいな。」


講義に使った資料をひとつにまとめ、ゆったりとした足取りで城へと向かう帰路につく。


「ソフィア王女。こちらにお目通しを。」


その途中で、周囲を警護していた近衛騎士から軽い荷物をうけとった。


「ありがとう。………………誰から?」


見慣れない小さな箱形の荷物。

宛名がわからず、開け口も見つからず、思わず立ち止まりくるくると荷物を回す。


からん ころん カチッ


箱が全体的に2・3周した頃に、箱の内部から音が鳴った。そして勝手に箱が開いた。

そこには一枚の手紙と、小さな種が数個。


手紙には

『見慣れないものに興味がわいて、箱をまわしましたね。そうでないとこの手紙は見れませんからね。愛しい婚約者殿が私の想像した通りの人で安心しました。

種は私の自信作の改良品種ですので、興味がわいたら自室でゆっくり育ててください。


貴女の頼れる婚約者フィアンセ・ハロルドより』


と、見透かしたような余裕たっぷりな文面が待ち受けていたのだった。

軽く頭に来て地面に叩きつけそうになったがソフィアは衝動を押さえて思考を回す。


「興味なんてありありよ。正体不明の種だもの。調べ尽くして綺麗に育てて見せるわ。姉様や母様にも教えてあげなくちゃ!」


余裕たっぷりな文面の婚約者ハロルドの驚く顔を思い浮かべながら、箱を抱きしめ子供のような微笑みを浮かべた才女は、城への歩みを再開するのだった。

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