カレンダーに、ひと月後の未来はあるか。

@ramia294

第1話

 ある時、カレンダーは、気付きました。


「結局、自分たちは、破って捨てられる存在なのだ」


 新しい月が巡ってくると、人々は、新たなカレンダーを歓迎します。

 今月は、日曜日は何回だとか、祝日が多いとか、キラキラした目で、おしゃべりしますが、月末になると、用済みになった一枚は、破って捨てられます。


「結局、自分たちは、破って捨てられる存在なのだ」


 可愛い犬や猫の写真があっても、


 一度は訪れてみたい世界の美しい景色の写真でも、


 有名な建築家の手による芸術的な建築の写真でも、


 特撮ヒーローの写真でも、


 ちひろの絵でも


 同じ運命です。


 表紙には、前年の十二月が、記されています。新年を迎えると、表紙がどこへともなく消えていきました。


 もちろん一月は、張り切って、ご主人に日付を知らせます。手足ならぬ綴じられた金具と身体を一生懸命伸ばし、書き込まれた予定を少しでも見やすい様にと、日々頑張ります。


 時は、休む事なく流れ、季節が移ろい、花が咲き、やがて散り、若葉の季節を迎えます。         


 少なくなっていく仲間に、カレンダーは、このまま永遠に、ご主人様のためにと考えていた自分たちの運命に気付きます。


 雨の季節が過ぎ、太陽が全ての緑を輝かす頃、カレンダーたちの心は、歪んでいきます。

 役に立ちたい思いが強いほど、大きく歪んでいきます。


「復讐しよう」


 カレンダーの心に芽生えた、悪の誘いを否定する事の出来るものはいません。


 ちひろの絵の黒猫が言いました。


「時を戻して一月に還ろう」


 これは、ただの童話で、SFではありません。


 サグラダファミリアも意見を出しました。


「こういう時は、わら人形さ」


 カレンダーには、日付は分かっても丑三つ時のような時間は、分かりません。


「そんなの非科学的だよ。やはりご主人様を虐待で、訴えるのが良いかと」


 ウユニ塩湖が、波ひとつなく天空の鏡の様な姿通り冷静に言いました。弁護士がカレンダーを相手にしてくれるとは、思えません。


「そんなの面倒くさいぜ。ここは、必殺カレンダーキックさ」


 子供部屋の特撮ヒーローが言いました。そもそも、どこが足なのでしょう?


 カレンダーには、どれもこれも全て出来ません。


 出番の近い、とても見事な紅葉の写真が言いました。


「日付をかき混ぜればどうだろう」


 つまり、一日、二日と順番に日付を知らせるのではなく、一日の次は三十日とかその次が二十一日とか、出鱈目にしてやれば、ご主人様が困って、これから我々をもっと大切にしてくれるかも知れない。


 それなら何とか出来そうだという事で、みんなでワイワイしながら、日付をかき混ぜました。


 翌日は、一日。


 さっそくご主人が、一枚めくりました。


 みんなが、ドキドキして見守ります。ご主人が、反省してくれれば、すぐに元に戻す予定です。


 ご主人が、カレンダーをひと目見ると、


「不良品!」


 と、ひと言。


 カレンダーを、壁から外し、ゴミ箱へ捨ててしまいました。


          終わり(^-^;)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

カレンダーに、ひと月後の未来はあるか。 @ramia294

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ