15【意識していること】フィン感はどうして長いのか(2/2)

 どうしてフィン感は長いのか。後半です。

 フィン感は長いが、それは長くしようとしているからではない、短くしようとしていないからだ。

 その意識の話を前半ではしましたが、では実際問題どうしてフィン感は長くなっているのか。それについて私が思い至っている理由をお話ししたいと思います。



 理由は様々ありますが、そもそも指摘の数が多い。「細かいところ」ありのフィン感ともなると、ずらーっと褒めや指摘が並びます。よく応援コメント欄で他の方が気になった細部への指摘をなされているのを見かけますが、それが無数にある感じです。

 そんなフィン感の様を「角栓がごっそり取れるよう」「集団であれこれ指摘を出すのを一人で全部やってしまうよう」と表現されたことがあります。ありがとうございます。

 まず褒めや指摘の数が多い。だから長くなる。


 ただそれ以外にも主要な理由があります。大きく二つ分けます。



 ひとつめ。指摘に絞ってみますが、指摘ひとつの構成が大きい。

 みなさんが作品に指摘するときに指摘の構成を考えることはあまりないかもしれませんが、フィン感の指摘は構成が大きいのです。段階(フェイズ)の数が多い。

 フィン感の指摘の構成は大まかに

 ・意見表明

 ・データ、解釈

 ・根拠

 ・提案(方針)

 ・提案(方法)

 の五フェイズが組まれているのが基本です。「細かいところ」の指摘ひとつひとつでもこの五フェイズが成立しているものは少なくありません。

 (この五フェイズの内容については今回は割愛します)

 五フェイズでひとつの指摘が構成されているので、やはり文字数が多くなるのです。

 普通の指摘は、意見表明の一フェイズだけで構成されています。“良い指摘”とされがちな「指摘だけでなく解決策も提示してくれる指摘」は意見表明と提案(方法)の二フェイズだけで構成されています。だから文字数少なく指摘が完成するのでしょう。



 二つめ。伝達性を重視している。

 私が他の人から(指摘を含めた)感想を受けたときにたまに感じるのですが、「それってどういう意味なんだろう?」って思うことがあるんですよね。言っている内容はわかるんだけど、その真意がいまいちわからない。何となくの理解であれこれどういう意味なんだろうなーと考えて、自分なりの消化を余儀なくされる。

 これがただのコミュニケーションならいいんですけど、大事な自作に向けられた言葉ですから真意を推して理解に努めざるをえない。これがストレス溜まるんですよね。私は。

 その場合って大体感想筆者も言語化できてない(から曖昧な物言いになる)んですけど、その言語化作業をこちらが肩代わりして推してあげてるみたいな状態になるんですよね。

 それはフィン感ではできるだけしたくないな、できるだけ“真意を推す”作業はさせたくないな、感想内容を読むだけで真意が伝わるようにしたいな、と思っているので伝達性は重視しています。


 そのための細かいテクニックがいくつかあります。

 たとえばフィン感ではひとつの内容について二回か三回繰りかえすんですよね。言い回しを変えて。そのあとでまたまとめますし。同じことを何度も言う。

 これは複数の言い回しを置くことで、どれかの言い回しが読み手の芯を食うことを期待しているからです。私なりに芯を食う数種類の言い回しを用意することで、どれかが(あるいは相乗的に)読み手の理解を確保することを期待しているからです。ここでも同じことを二回言っている。もちろん単純なリフレインを狙っている節もあります。

 一内容一文だと、その言い回しが芯を食わなかったときのリスクが高いんですよね。読み手にハテナが残ったときにリカバーできる文がなく、先の内容へ進んでしまう。それは読み手(小説作者)の理解意欲が高い感想においては、避けるべきリスクだと考えます。

 フロスは複数本の糸で歯垢をかきとってます、みたいなことです。


 また別のテクニックとしては、フィン感では極力代名詞を使わないようにしてます。

 フィン感を読む人は思ったことあると思いますけど、フィン感中で生まれた用語をフィン感はめちゃくちゃ繰りかえすんですよね。「AさんからBさんへの〇〇の心情が示すホニャララナントカ」みたいなのが出てきたら、以降ではそれを省略することなくずっとパッケージにして繰りかえすのです。

 これは省略や代名詞を使うと、「これは何を省略したものだな」や「この代名詞はこれを指してるな」と読者が考える必要が出てくるからです。そこで惑ってしまうことがあると、伝達性に大きな影響が出てしまいます。

 なので「“それ”って何?」と思わせないように、代名詞はできるだけ使わないようにしています。使うときは特定が容易なことを確認しています。


 「同じ内容を繰りかえす」「代名詞を使わない」、いずれも文字数を膨らませるものです。仮にこれらのテクニックを撤廃したら文章量はかなり痩せるはずです。

 ただそれによって伝達性が落ちてしまうデメリットは重大であると考えていますので、伝達性を重視した書き方を心がけています。前記事のとおり、フィン感は短くするメリットがほとんどありませんしね。



 こういった複合的な理由により、フィン感は長くなっていると現段階の私は考えています。

 長さがフィン感の品質とは思っていませんが、フィン感の品質が長さに表れているとは思っています。

 他にフィン感の長さについて感じるところがありましたらコメント欄で教えていただければと思います。

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