14【意識していること】フィン感はどうして長いのか(1/2)

 フィン感の特徴といえば何でしょうか。

 フィン感を一言で紹介してくださいと言われたら、みなさんはどのように紹介するでしょうか。

 読みこみの深度(手前味噌)や指摘の納得感(手前味噌)などもあるかもしれませんが、一言と言われると皆さんの頭には文字数が出てきたのではないかと思います。フィン感は文字数が多い。まずはその文字数に圧倒された方が多数だろうと思っています。

 作品の条件は10000字以内なのに、返ってくる感想は当たり前のように20000字を超えます。「数万字の感想を書いてくれるよ」と紹介すればそれだけで相手は「えーすごいね」と興味を持ってくれるはずです、多分。


 ではどうしてフィン感は、そんなに文字数が多いのか。長いのか。

 今回はその話をします。



 まず大事な前提ですが、私は「長い感想を書こう」と思っているわけではありません。長くしたくて長くしているわけではありません。

 「短い感想を書こう」と思っていないだけなんです。短くする努力をしていないだけなんです。長くなっているだけなんです。売り文句にはなるので売り文句にはしていますけどね。

 短くしようと思えば短くできると思います。随分昔の話ですが、フィン感一本800字縛りをしたことがあります。現在のフィン感でも(本文ありきですが)500字程度の総評で感想内容は一通り記してあります。


 私がこの意識を持っている理由が二つあります。



 ひとつめの理由は、フィン感には短くするメリットがさほどないから。


 よくライターさんなんかは「文章は長すぎないほうがいい」「簡潔にまとめたほうがいい」というようなノウハウを持っていると思います。内容が不足してしまうのは駄目ですが、超過してしまっても駄目です。ダラダラと文字数が膨らんでしまうのは駄目です。

 これは感想に近しいレビューでも同様のノウハウがあると思います。レビューは長すぎては駄目だ。長けりゃいいってもんじゃないのです。


 どうして長すぎると駄目なのか。それは読んでもらえないからです。

 文章が長いと、当たり前ですが読むカロリーが増大します。最後まで読んでもらえなくなります。最初に文章を見たときに「うえー」と思われます。

 まず読んでもらおうという気持ちになってもらわないと意味がない。そんな具体目標型のアドバイスは非小説でも当てはまります。

 長くても読破できる筆力があれば別ですが、長くても読破できる筆力があればそもそも文章が過剰に長くならないようにするでしょう。


 逆に言えば、読む前からギンギンの読破意欲があるのならば、どんなに長くてもいいんです。

 「絶対に最後まで読みます」という保証があるのならば、短くする必要なんて一切ないんです。

 親が子に宛てた手紙、子が親に宛てた手紙、恋人に送る手紙、それらに「長すぎないほうがいい」「簡潔にまとめたほうがいい」なんてアドバイスする人はいません。むしろ思いの丈を書ききりましょうとアドバイスする人が多数です。それはどんなに長くても、読み手は絶対に最後まで読むからです。関係性にもよりますけどね。


 そしてフィン感も、読み手が絶対に最後まで読む文章なんです。

 数万字もあるフィン感ですが、ほとんどのケースで読み手(小説作者)は掲載してから数時間以内にペロリと読破してしまいます。

 自分から依頼した、自作に深く向きあって綴られた褒め・指摘のある感想。そりゃあ絶対に最後まで読みますよ。読まないほうがおかしい。

 だからフィン感は短くしないのです。短くする必要がないのです。

 これは想像ですが、フィン感の文章の長さを最初に見たときに読み手(小説作者)が思うのは「うえー」ではなく「おおー」でしょう。


 余談ですが手紙とフィン感に共通している特徴は「想定読者が特定個人」であることです。

 想定読者が特定個人なため、その想定読者の読破意欲をギンギンにさせることが可能です。その想定読者の読破意欲をギンギンにさせる舞台と内容を整えればいいわけですから。

 逆に「想定読者が不特定多数」である場合は、読破意欲をギンギンにさせることはかなり難しい。思い入れなく読み始める人が多数ですから。そのため読破意欲の灯火を消さないように、あれこれ工夫する必要がある。文章を短くするメリットがある。

 基本的に感想とレビューの違いは、作者に読ませようとしているのか読者に読ませようとしているのかが挙げられると思います。



 二つめの理由は、フィン感を短くする工程を省いているから。


 数万字の感想と聞くと「数万字も書くの大変じゃない?」と思われると思います。

 しかし私としては逆で、数万字を書いてしまうほうが楽なんですよね。2000字にまとめるほうがずっと大変なんですよね。

 30000字の思考を30000字に起こすのは難しくありませんが、30000字の思考を2000字に起こすのは難しい。

 私は30000字の思考を2000字に圧縮する作業を省いているのです。


 小説書きなら十分共感していただけるはずですが、30000字相当の物語を30000字で書くのは難しくありません。しかし30000字相当の物語を2000字で書くのはかなり難しい。30000字で書いちゃったほうが楽です。


 そのうえで(先述のとおり)フィン感は短くするメリットがほぼない。

 となれば30000字の思考は30000字で起こします。わざわざ面倒な思いをしてメリットの少ない作業はしません。


 もちろんこれは土台として30000字の思考をしているからです。2000字の思考しかしなければ2000字で書くでしょう。

 しかし小説を読んで30000字の思考をするのは性分のようなものですから、これを無理やり2000字の思考に留めることはできません。

 また30000字の思考をしているからフィン感なわけですしね。



 ということでフィン感は短くしようとしていません。短くする努力をしていない。だから短くない。

 しかしこれは短くない理由ではありますが、長い理由にはなっていません。

 どうしてフィン感は長いのか。それは次のページでお話しします。

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