隙間怪談

第7夜 首を曲げる癖の話。

　これは僕が数年前から今日に至るまでずーーーっと体験している、っていうか、体験し続けている話。

　さてこの話する前にまぁなんだ、皆、自分にも直せない癖とか一つくらいもってるだろうか？って聞きたい。

一番よくあるのがコップ持つと小指が立っちゃうとかそういう些細なやつ。ペンの持ち方とか。

　僕にも、そういう癖が一つある。

無意識で右に小首を傾げる、っていう癖。

これの自覚が芽生えたのは、高校生の頃に美容院に行くたびに頭の位置を何回も直されるから気付いた。

　いつも髪を切ってくれる店長さんは僕の髪を何年も切ってくれてる馴染みの人だった。

なのですぐ「あの、僕、首の角度まがってたりします？」って聞いた。

店長曰く「あー、ちょっと右に傾げ気味かも？」との事で。

その時は(美術高校だったから)あー絵の描きすぎとかパソコン触りすぎとかそういうアレがアレして首の角度おかしいんかな〜…とか思っていた。

　この頃から友達にもよく「どしたの？」って聞かれる事があって「なんで？」て返すと「なんか悩んでんのかなって思って。首傾げてるから」とか言われたりして。

　日を置いて「また首曲がってるけど？？？」とか言われて「マジ？無意識だわ」みたいな。

いつの間にか“僕、変な癖ついちゃったのかなあ”ってそういう感じに思ってて。

でも別に生活に支障ないし、日常生活送ってて90度じゃない限り見た目もまぁおかしくない、ちょっと小首傾げるくらいはまぁいっか、って流した。

　で、この首を傾げる癖が本領を発揮したのが修学旅行の就寝時。

何人かのグループに分かれて和室に布団を並べて寝てたんだけど“僕の寝相がなんかおもしろい！！！！”って話題になって朝からめちゃくちゃに盛り上がった。

なんなら写真も撮られていたw(消せよｫ!!!??って騒ぎ散らかして先生に怒られたし、消させたけど割と沢山の人が見た(恥)

　で、どんな寝相してたかというと

仰向けに寝ていたはずの僕は、何故か体を“く”のじに曲げる感じで、頭がわざわざ枕に乗らないように避けるように寝てたのよね。

　その頃には僕が小首をよく傾げる癖ある、って大体の人が知ってたから「寝てても首傾げるやんお前www」「これもう身体ごといってるやんwww」って凄い笑われて。

いや僕もめっちゃ笑ったんだけどね？「首めっちゃ曲がってるwwwはじめてみたわ自分の寝相www」って。

　でも僕、当時、寝る時に“頭を枕から外すみたいに首を曲げないと寝づらい”のは確かだったんだよね。

寝てる時に動き回ったりとかはないから寝相が悪いわけじゃないんだけど、とにかく身体曲げてないと寝づらくて、寝れない。

　で、そんな朝の騒動があった後、朝ご飯食べて解散して部屋に皆揃って帰ってる時に、別の部屋に割り振られた友達の1人がそーっと話しかけてきて「あのさ、写真見たけどあの寝相って毎日？」って少し控えめに聞いてきた。

　「いやわからん、でもあの体勢じゃないと寝づらいから毎日だと思うんよね…」

　「…あの、たぶん、重ならないように身体が避けてるんだと思うんよ…」

　「……………………」

　何と重ならないようになのかとかは聞いてない。ただその子は「そのうち寝相なおると思うから気にしたらダメだよ」と言ったので「まじか。じゃあまぁいいにしとくね！！！」と答えた。

　あれから数年が経つ。

　僕はこの数年の間

“小首を傾げる癖がある上に身体を曲げて寝ないと寝られない期間”と“首なんて全く曲げないし、どんな寝方でも普通に寝られる期間”

を繰り返している。

　僕の左側に何かあるかもとか、そういう事はいっっっさい考えないようにしてる。

そんで最近は身体を曲げないと寝られない期間に入った。

　それはつまり“そういう事”なのかもしれないと、今も僕はひとり戦々恐々としている。