第6夜 光を透かして一瞬だけ何かが視える話。
これは僕の高校生時代の話だったりする。
怖い話だから頑張って書くので読んで欲しい。
ちなみに当事者の僕といえば“毎日冗談と寝惚けがキツいぜ!”みたいな心持ちで(いないと怖かったのでそういう風に思って)いた。
じゃあ本題。朝、皆起きたら何する?
僕はとりあえずスマホ弄ってじわじわ目が覚めてきたら身体を起こして起きる。そんでベッドから出たら、窓の大きなカーテンをシャッと開けて光を入れる。…みたいな感じで起床するのが常だった。
なんかおかしいな〜?って思ったのは、初めは小さな違和感だった。ほんとに些細なもので、何だったら“あ〜僕視力下がったんかな〜”みたいな感じに捉えていたんだけれど、カーテンをシャッ!と開いた時に、真っ直ぐ刺すはずの光が微妙にぼんやりしている。
なんだろう、日差しとか想像して欲しいんだけど、真っ直ぐ鋭く刺してくるもの、じゃない?
でも、ちょっと曇った汚いガラスとか、磨りガラスとまではいかないけど、そういう物を透かして見た光は鋭くなくて、ちょっとぼんやり丸くなって届く、ってな感じ。
朝っぱら、カーテン引っ張ったら光の刺し方に、そういう微妙な違和感があって。
なんか透明の何かに光が当たっているような、直にフローリングに光届いてないっぽいなぁ、みたいな。
でも別に何かあるわけじゃないし、ガン無視してた。朝だし、フツーに忙しかったし。
でもそういう変な日光の刺し方も一回気になるとめちゃくちゃ気になり始めるもんで。
そこから一気に“光の刺し方”が気になって気になってしゃーない。もう、なんか、よくよく見たら蛍光灯の灯りもつけた瞬間、たまーーーに変な光り方をするって事に気づいてしまった。
蛍光灯の方はというと、夜に部屋の電気とかつけた時に、ぱっちん電源入れた時、あの真っ暗な中に光がつくあの瞬間に、光の照らし方が「なんか変!」って感じ。
電気の下は家具さえなければ円形状に平等に光が床まで伸びるのに、灰色のガラスか何かに微妙に当たってるのかな?みたいなうっすいぼんやりした影が見える。
ちなみ「目を凝らしたら正常に戻ったり戻らなかったりするから心の中では“やっぱ僕の目、おかしいんかな…目ってなんか病気あったら怖いな”って色んな意味でずっと不安だった。
で、この状態が続いた何日かあと。
僕は冒頭タイトルの“光透かしたら一瞬だけ何かが視える”を体験する事になる。
場所は学校。
この日、フツーに登校して授業を受けて放課後を迎えた僕は、生意気にも美術部副部長という立場にあったから放課後は誰よりも早く美術室に行くし、美術準備室から絵を描くためのキャンパスなんかを引っ張り出すのだ。
というわけで、いつもの通りに美術準備室にいって、壁のボタンをパチーンとやって、電気をつけた。
いつも通りの美術準備室の棚と棚のほんの10〜15cmあるかないかの隙間に何かが見えた。見えたというか、見えた気がした。
それが見えたのは、薄暗い部屋が明るくなるあの一瞬の事だったから。なんか見えた!って確信は無かった。でも“なんか見えた”気がした。
僕の心の中に、好奇心がちょっと芽吹いた。
芽吹いた芽が育つのは止めらんないから、僕は好奇心の向くままに電気を消して、
もっかい付けた。
その“なんか見た”かもしれない隙間をがっつり見ながら、電気を消して、つけた。
棚と棚の隙間に、女が詰まっていた。
「………………」
10〜15cmのぺっらい隙間に、しっかりみっちり女の人が挟まるように立っていた。
電気が完全につくまでの、ほんの一瞬の事だった。
僕の好奇心もまぁその辺りで尽きたので、2回目は消さなかったし、付けなかった。ついでにいうとちょっとズルして“用事があって早めに帰りまーす!”と部長に帰り支度は押し付けて帰った。
部長は多分何も知らないから、あの日は何も気にせず電気をつけたり消したりしたんだと思う。ちょっとだけごめんって気持ちは未だにある。
話してないだけで怖い目みてたら悪いなとかやっぱり思ったりして。
だから僕は今でも、ちょっとそういう明るい光の刺す瞬間が苦手だ。
何か見えたらイヤだな、って思うから。
あと、この話最後まで読んでくれた人はもしかしたら気づいた人、いるかもしれん。
“最初、僕の部屋でも光ぼんやりしてたよね?”って。
……最悪だよねー!
これはもう何年も前の話だけど、そういう厭な気付きとか、なるべく気にしないように生きていきたいなって思ってる。
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