第2話

ヒーローが、現れた。


「君たち、もうすぐ昼休みが終わるのに、玄関の前で何をしているんだい?先生にチクっちゃうよ?」

「君は…たしか、冬院君だったかな。いくら大企業の令嬢さんだと入ってもここは学校だ。あんまりヘマをすると通報しちゃうよ?」

「あなた、大層な物言いだけれど自己紹介せずに言うのは失礼じゃないのかしら?」


いや、それお前が言うのかよ。こいつ、肝が座りすぎだろ。と、内心ツッコんでしまった。


「おっと、それは失礼したね。僕の名前は石持由哉いしもちゆうや、この学校の生徒会長をやらせてもらっているよ。そこの洋一とは、そこそこの関わりがあってね、僕も黙認はできなかったってわけさ」


由哉は、俺が入学したての頃ちょっとした世話になった人だ。すれ違いざまに話すくらいで、そこまでの友情はない、と思う。


「とりあえず、冬院君はまず職員室に寄ってもらおうかな」

「っ…」

「覚えておく事ね」


そう言うと氷那は怒りのオーラをますます放ちながら、帰って行った。でも、意外とあっさり帰って行ったな。今回は偵察にでも来ていたのか?


「いやあ、洋一も災難だったね」

「ほんとですよ、いきなり転校だなんて」

「やめてくれよ、敬語なんか。ひとつ上だけど世話を焼いた焼かれたの関係じゃないか。」


全然敬語を使っていい関係だと思うが。それは彼の価値観的には違うらしい。


「でも次は何らかの手段を行使してくるかもしれない。こちらとしてもこの件は先生方にも相談してみるよ」

「そうですね、ありがとうございます」

「もおー、敬語はやめてって、言ったじゃんかぁ」


えっきも…


「それよりいいのかい?」

「ん、なにがですか?」


「―――だよ」


その瞬間、ハッとした。そして俺は急いで教室へ向かった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る