第15話 子どものころに受けた心の傷
これはね、本当に残るんですよね。
そして大人になってからもその傷によってだいぶ苦しめられることになります。
今日はちょっとだけ真面目な、自分語りを交えつつ、作品のご紹介をば。
私は典型的なコミュ障で、子どもの頃友人関係ではやはり、だいぶ苦労しました。
うまく馴染めない私を、厄介者扱いする先生もいましたし、仲間に入れないもどかしさに、涙にくれた日も多々ありました。
暴力や、ものを隠されたりといったたぐいの、ひどいものではありませんでしが、いじめられた経験もあります。
人から疎まれる、という経験は、心に暗い影を落とします。人の目や言動、小声でのささやき、そういったものに過敏に反応するようになるんですね。
自分の言った一言が、どうやって受け取られたのか。平気な顔をしているけど、実はものすごく不快に思っていて、私のことを嫌っているんじゃないか。あの人があそこでコソコソ話しているのは、私の悪口ではないだろうか。
仲良くしてくれているけど、実は私のことを、疎ましく思っているんじゃないか。
幻覚のような「自分へのマイナスの感情」に、常に付きまとわれる生活が、長いこと続きました。その呪縛から完全に解き放たれたのは、三十代に入ってからだと思います。
この物語の主人公は、「親から疎まれる」という、最も愛されたい相手から見放されるというつらい経験を子どものときにしました。
大人になっても、辛い別れのそのときになっても、子どもの時親に疎まれたという「呪縛」が彼女の心をきつく縛ります。
人間の美しい心を文章で描くことは、とても簡単です。でも、「愛されたい」「悲しい」「苦しい」「憎らしい」「めちゃくちゃにしてやりたい」「寂しい」といった、人間らしい決して美しいとは言い切れない様々な感情を、その人物になりきって書き表すことは、とても体力のいる、難しい作業ではないかと、個人的には思っています。
この作品は、読んで幸せになるたぐいの話ではありません。でもそこには確かに、「人間」の姿があったと思ったのです。
寂しくて、苦しくて、醜くて、物悲しい。そんな感情を全力投球で投げきっているこの作品には、書き手として多くの学びがあるのではないかと思い、私は星3つをいれました。
ぜひカクヨム作家さんたちに、おすすめしたい作品です。
花が咲いて散ること、もしくは私にかけられた呪い
作者 三葉さけさん
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