第611話 勇者のレゾンデートル(存在意義)18

ウルフを見つけることはできたが、ウルフが作った空間の中にいる。


そのため、手を出すことができない。


ウルフには、手を出すことが、今はできないから、地中深くに潜っていて、出てきた奴を、索敵しようと思う。


地中に潜っていたから、こいつの名称を”モグラ”とつけた。


モグラは、先ほど確認した冒険者の格好になっているが、まさか、このまま街に入っていくつもりなのか?


しかし、突然、モグラは、向きを変えて、飛行魔法を使った。


飛行魔法で飛ぶかと思いきや、そうではなく。転移した。


もちろん、俺は奴を逃すことなく追いかけているが、転移した先は、俺たちがいる国だった。


何かの指令を受けたのか、わからないが、急にモグラは、この国に現れた。


まぁ、よかったとしよう、イーノック王国で暴れられても、いい気持ちはしない。


イーノック王国は、まだ正式には国王になっているわけではないイアンがいるし、キャサリンの兄妹もいるから。


モグラが今、いる国に来たということは、何かあるのか?


しかしモグラは突然、行動を変えたように思えたが‥‥‥気のせいだろうか?


ソフィア、パトリシア、イザベラたちは、行動を別にして勇者を探している。


俺たちは、モグラが、この国に来たので、俺とアリシア、ジャネット、ロゼッタ、シャーロット、セラフィーナ、アレク、アデル、エイミー、アイリス、コリン11人で行動することにした。


拠点となる宿の確保は終わっているので、安心して街を探索する。


そうそう、この国は、ヴァージニア王国というらしい、女性の王が支配している国だそうだ。


俺たちは当てもなく探索を続けている。


しかしモグラの奴は、転移で現れたところまでは追っていたが、今は山の中腹の洞窟に潜んで寝ている。


なにがしたいのか、さっぱりわからない。


なので、勇者を探すことにしたけど、風貌もわからないから、聞いて回る。


情報を得ようと思ったら、やっぱり買い物が一番だ。


その前に俺たちは冒険者ギルドに行ってみることにした。


もしかしたら勇者だから冒険者ギルドに姿を現すかもわからない。


姿を現していれば情報を聞き出すことができるかもわからないから。


食堂で、お腹を満たしながら店主に冒険者ギルドの場所を教えてもらった。


店主に聞いた通りの道を歩きながら冒険者ギルドを見つけて扉を開けて中に入った。


冒険者ギルドなんて久しぶりだったので、どんなところなのか期待したけど、以前と何ら変わらない場所だった。


ここの冒険者ギルドも横に酒場を作っているみたいで昼間から酒を飲んでいる奴もいた。


冒険者は依頼を達成した後は先に溺れる奴が多くいる。


冒険者ギルドの扉を入ってみると、そこにはソフィアとイザベラとパトリシアがいた。


俺たちと目を合わせると3人は早速、近寄ってきて何も情報がないと伝えてくれた。


俺たちのメンバーは全員がアルコールを嗜む事は無いが、空きテーブルのところに座って、紅茶やコーヒーを飲むことにした。


あとはクッキーや軽く食べものを注文しておいた。


早速、手を伸ばしたのはアレクとアデルだ。


先ほどもお腹いっぱいに食べたはずなのに‥‥‥


俺たちメンバー全員で1つのテーブルに座ることができなかったので2つのテーブルに分けたが全員が紅茶とコーヒーを飲みながら様子を伺っている。


冒険者ギルドのほうは、そこまでうるさくないが、酒場のほうは騒がしい。


あんまり長くいると、絡まれる可能性もあるので、情報がないまま、ギルドを後にした。


俺たちは冒険者ギルドから出てくる時に、入っていく奴らをみていたが、勇者らしき人物は見当たらなかった。


勇者だって依頼を受けることもあると思うが、勇者だと知れ渡っているなら、こんなところに来ない可能性もある。


たまたま、すれ違った男に聞いてみた。


「ちょっと聞きたいんだが、勇者を探しているんだが」と


しかし、その男は、「勇者だと、そんなのいるのか? 俺はこの国のもんじゃねえよ、探しているなら、この国の者に聞きな」


「そうか、ありがとう」と答えて、もう一度、ギルドの中に入ってみた。


今度は1人で‥‥‥


俺は、まずはギルド職員から聞いてみることにした。


職員の前には、数人のグループが並んでいたので、その後方に並ぶことにした。


俺は順番を待ちながら、周りを見渡す


人間模様を観察してみるが、平和、そのものだ。


世界の破滅が迫っているなんて、どこにも根拠もないことだ。


このまま、平和の世界が続けばいいんだが、そうはいかない。


ウルフの奴が空間でなにをしているのか、観察することはできるが、それ以上はできない。


いや、待てよ、何か方法がないのか?


俺が、そう考えながら、待っていると冒険者ギルドの扉が開いて、数人のグループが入ってきた。


俺が一番にみた男は、大柄で筋肉質で背が高い、そして他には女性のメンバーらしき奴が三人。


全部で七人のパーティーみたいだ。


女性が3人いるので、あとの四人は男。


俺が目をつけた男は、俺たちが並んでいる列を通り過ぎて、前にいく。


カウンターでは別の男性が係の人と話しているのに、強引に割って入る。


「なんだ、お前は?」


「ああ、なんでもいいから譲れよ」


「いや、俺の方が先だ」


「お前、俺を知っているのか?」


「お前なんか、知らん」


「俺はな、勇者だ」


「えっ‥‥‥」というと、勇者を名乗る男から殴られた。


「ドガッ」と男が壁に打ちつけられる。


「リーダー」と知り合いの女性が近づく。


リーダーを名乗る男性は、拳1発でダウンした。


こいつが、現れた勇者なのか? かなり強引だな。


でも、俺と違って、筋肉質で、強そうな感じがする。


ここは、見ないふりをしておこう。


騒ぎに巻き込まれる。


そこに騒ぎを聞きつけたアレクが中に入ってきた。


「あちゃ〜」 俺は目を塞ぐ思いだった。


アレクは俺をみたが、男の方に注目している。


その後にメンバー全員が、中に入ってきた。


七人対、十四人の対決に発展するのか?


いや、ここは冒険者ギルドの中だ、そんなことをしたら、ギルドカードが剥奪させてしまう。


この中では不味い‥‥‥


アレクが殴られた男を見ている。


その反対側にいるのが、殴った勇者だ。


「ちょっと、お兄さん、この人がなにをしたの?」


「ああっ、なんだ、ちびすけ」


「私はちびすけじゃない、アレクっていう名前があるんだ」


「チビだからチビ助と言ったんだ、何が悪いんだ」


「チビだからといって、舐めない方がいいよ」アレク


あちゃ〜、もうだめだな。


「あっ、すいませんね、この子、うちのメンバーの子供なんで、許してください」


「お前が親か?」


「いや、親じゃないけど、保護者ですよ」


「ご主人さま、こいつなんか、やっつけちゃって」とアレク


俺はアレクの方を見て「まぁまぁ」と宥める。


その時、勇者を名乗る男が背後から俺の肩を掴む。


「おい、お前‥‥‥お前も、ああ、なりたいのか?」と行って気を失っている男を指差す。


「いえ、ああはなりたくないですね」


「だったら引っ込んでな」


「でも、あの男性は悪くないですよ」


「なに、キサマ‥‥‥」と勇者を名乗る男性が凄んでいる。


「あなた、勇者なんですって?」


「ああ、そうだが、今も龍を倒してきたところだ。これが証拠だ」と行って、異空間から、ツノを出してみせた。


「うわっ、すごいですね、竜は強かったですか?」


「もちろんだ、俺たちが出向いていくんだ、その代償として龍を討伐したんだから、こんな列に並んでいられるか?」


「まぁ、それもそうですね」


「ご主人さま‥‥‥こんな奴‥‥フゴフゴ」とアレクが言い換えて、俺はアレクの口を塞いだ。


冒険者ギルドの職員も手を出せないで見ているだけだ。


ギルド長くらいいないのか?


「でも、龍を倒したからといって、あの男性に誤りもしないんですか?」


「お前、俺に喧嘩、売っているのか?」


「いいえ、喧嘩を販売していませんよ」


「お前、俺をおちょくってんのか?」


「そうですね、少ししていますかね」


周りから、ヒイッという声がしている。


ひそひそ声で、「おい、あの勇者に逆らうみたいだぞ」


「無謀な」


「殺されるぞ」

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