第574話 救世主への道31(レジーナ王国編)

話のいきさつからアレクが大柄の男性と腕試しすることになった。

見た目が小さいから、舐められやすいことがあるけど本当の年齢は、人の一生を上回っている。


城砦のベランダで勝負することになったが、かなり広いベランダなので大丈夫だろう。


戦う前に、全員で集まって作戦会議をする。


輪になってヒソヒソ話をする。


「アレク、本気でやっちゃダメだよ」


「うん、それは、もう、あの人、死んじゃうよ」


「それで、どう戦う?」と俺が聞くと


アレクはちょっと考えて「‥‥基礎魔法だけで何もしない」と言い放った。


「でも、もしはないと思うけど、危険を感じたら、こだわっちゃダメだよ」


「うん、わかっている」


「あっ、でも」と言いかけて、やめた。


その理由は、アレクは今日はミニスカートを履いているから、転ぶとかない限り、大丈夫だと考えた。


何が大丈夫かは、説明いらないよね。


というのは初めの頃は神獣たちって洋服を着るって概念がない、洋服は魔法で作っていたからだ。


魔法で作ることで着替える楽しみを覚えてからは、魔法で作るよりも買う楽しみにもなっているから。


もしかして履いていないということは心配しすぎだと思うし、男の俺の口から言うものじゃない。


「では、これより王国最強戦を始める」と、えっ、ゼノって王国最強なの?


それに、もし勝ってしまうようなことがあると‥‥‥それも13歳くらいの女の子に‥‥‥それってまずいんじゃいかな?


まぁ、城砦の中の、ここだけの話であれば、いいか。


「アレク、頑張って」と言う声援が飛ぶ中、試合が始まった。


「では、はじめ」とクロード伯爵


アレクは、すぐに基礎魔法を展開して、ただ立っているだけ、なんだか貫禄があるんだけどアレクの戦いを見るのは初めてだと思う。


腕を組んでミニスカートを履いて足を広げて立っている。


ゼノも突っ込んでいこうとしていたけど、アレクの構えを見て、様子をみているような感じ?


俺の目でアレクの状態をみていると、アレクの体から、すごい量の気が出ている。それを放散して散らばらせるのではなく、まとっているような感じになっているから、素晴らしい魔法になっている。


俺がみていても、惚れ惚れするような魔法力。


アレクは結構、練習を欠かさずしているみたいで成長している。


本当にアレクの体全体をエネルギーの膜が澱みなく流れている。そして体から離れないようにしているんだろうけど、アレクの体から10センチの幅で覆っているようだ。


まだミニスカートを履いたアレクが腕を組んで立つ姿勢で腕を組んで仁王立ちっていうのが、なんだか似合わない。


突進してこないので痺れを切らしたゼノが、剣を前に構えて突進してくる。


剣をまっすぐにして突いてくる。


アレクの方を見ると、同じように腕を組んだまま立っている。


「っ‥‥‥」どうなるかみているだけど緊張する。


他のみんなも生唾を飲み込んでいる。


そう思っている瞬間‥‥‥「キンッ」と高い音がして剣の先が折れた。


ゼノは、剣をアレクに突き立てた格好のまま、止まっているが、、もちろん剣の先はない。


「カランッ」と音がして、2人から少し離れた位置に剣先が地面に落ちた。


それを合図に、アレクがすごく速い動きでゼノの腹部を殴った。


ゼノは、悶絶して白目を見いてくの字になり、そのまま意識を失った。


あまりのことに、その場いる全員が、話す言葉がない。


アレクの技術力が、ここまで高いとは、俺も考え直す必要がある。


「勝者、えっと」


「あっ、アレクです」と俺が言う


「勝者、アレク」と声を大にして称えた。


メンバーがアレクの元に近寄って、、よかったねとか、すごかったよ、とか喜んでいる。


クロード伯爵は人を呼びにいって、兵士4人を連れて戻ってきてゼノを運んで行った。


「それにしても、我が国で一番の戦士を倒すのか? すごいな貴殿の仲間は」


「ええ、私も人と戦っているアレクを見るのは初めてでしたから、驚きました」


「人と?」


「あっ、いえ」


そうだ、俺たちは人と戦ったことはない、いつも戦うのはウルフだったり魔族だったりする、人と関わりがあるときには戦闘はしない。


「‥‥‥もしかして、お前さん、王都の倉庫襲撃に関わっているのか?」


「‥‥‥」


「沈黙するってことは、関係ありか?」


「‥‥‥」


「するって言うと例の亀もお前さんの仕業か?」


「‥‥‥」俺は沈黙を守った。


「あんな女の子がメンバーにいるようなお前さんは、それだけ能力が高いということか?」


「‥‥‥」


「全て否定しないんだな」


「‥‥‥」


「お前さん‥‥‥、いったい何者だ?」


「俺は‥‥‥一介の小さい村出身の二十歳前の男ですよ」


「‥‥‥そうか、秘密があるんだな」


「はい、いっても良いですが、とてつもなく信じられないことですから」


「そうか、しかしな、あんな小さな女の子が、何もしないで剣の先が折れるような何かを使えるか?」


「‥‥‥」


「と言うことを考えれば、あそこにいる女性たちも全員が特殊な能力を持っていると言うことか?」


「そうです‥‥‥」


「それを統べるお前さんは、どれほどの能力を持っている?」


「さぁ、それは、どうでしょう?」


「お前さんは、どうやってここまできた?」


「えっ、馬車に乗ってですよ」


「嘘を言うなよ、親書には日付が書いてあったんだよ」


「‥‥‥」


「日付はな、今日だ、王都から早くても3日はかかる、ここまで、そんなに早く来れねえよ」


「‥‥‥俺たちは魔法使いのパーティーです。ですから、それは簡単なこと」


「しかし、魔法使いだって、空を飛べる奴はいねえよ」


「俺たちならできます。実は白状しますが、俺は、この時代ではありませんが勇者の称号を持つものです」


「なんだって、勇者?」


「はい、俺たちからみれば、この世界は過去の世界になります」


「なんだって? おい、ちょっと待てよ、話が頭に入らねえよ」


「だからいったじゃないですか?」


「だから、こんなこともできます」といって俺は透明の魔法を使い、視界から消えた。


「えっ、おい、どこに行った?」


もう全員が俺たちの方をみている。


俺は姿を現して「これが勇者として得た魔法です」


「お前、本当に勇者なのか?」


「はい、そうです」


「さっき、いったよな、未来から来たって」


「はい、そうです、この時代、ここで戦争を起こすことであなたの国が戦争を仕掛けることでレジーナ王国は滅びます。

俺は、それを止めるためにきました」


「まぁ、俺も王の命令とあっちゃ、従わざるおえないからな」


「はい、その王がレジーナに戦争を仕掛ける理由を知っていますか?」


「いいや」


「レジーナの姫を側室に欲しいからです」


「なんだ、そんな理由か?」


「はい、実は狙っているのは、第二王子のルーカスですが、王は薬を投与されて正常な思考をすることができません。

その薬を城の井戸に投与して、さらに精神を患うような人間を増やそうとしています。

これでは、この国も長くはありません」


「なるほど、それでお前さんが出向いてきたわけか」


「はい、そうです」


「お前がいう理想の世界とするためにか」


「そうなりますね」


不穏な空気を出している。


クロード伯爵は俺たちとは違うのか?


「‥‥‥」クロードは伯爵は黙ってしまって考え込んでいる。


「理想の世界かぁ」と小さくクロード伯爵は、つぶやく。


「よし、決めた、お前さんの理想の世界に付き合ってやろうじゃないか」


あ〜よかった。


「皇女殿下も喜ぶでしょうね」


「それなんだが、王女殿下とお前さんの関係は?」


「いえ、関係なんてありませんし、少し前に図書館でお会いしたことで、話ができたんですよ」


「そうか」と一言。


なんだ、何か気にすることななのか?


もしかして、こんな年齢の人が独身?


「クロード伯爵、もしかしてあなたは、独身ですか?」


ちょっと聞いてみたくて‥‥‥


「そうだが」


「そうですか、では、あの首飾りは?」


「それは、俺が皇女に送ったものだ」


やっぱり、そうだったんだ。


となれば年齢差はあるが、話は速い。


「クロード伯爵、俺の計画では、皇女殿下を王に据えるつもりです。そして、あなたが後見人となってくれれば‥‥‥」


「なんだって、お前さん、皇女殿下を王にするつもりなのか?」


「はい、そうです、もうあの人しかいないんです」


「しかしなあ」


「王の次は第一王子ですから、第一王子も薬でおかしくなっています。また第二王子も薬を入れた張本人です。

それで2人を操ろうとしているわけですから。

あとは、誰がいます?」


「そうだな、いねえな、皇女殿下の下は年が離れた妹が数人、王子はいるが、まだ、小さい」


「ということは?」


「それしかねえな」


「決まりですね。あなたも腹を決めたんだったら、国政に関わることになるからには、ここはゼノに譲るべきですね」


「そうだな、ゼノの奴も、良い頃合いだろう」

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