第483話 1000年前の世界

ガルシア帝国が見えてきた。透明になりながら飛んでいるので上空から見ているけど、そんなに大きな王都じゃない。どちらかというと小さい方だと思う。


まだイーノック王国の方が王都は大きい。


どうしてガルシア帝国が、そこまで攻撃的になったのか?


700年の間に資源を使い果たしたのか?


人が増えすぎたのか?


水質が落ちたか、水源の水が減ったのか?


う〜ん、ここまで来てみたは良いけど、どうするか?


野宿はしたくないから宿に泊まりたいけど、お金が使えるのかな?


俺が持っている貨幣を使っていれば良いけど、そうじゃなければ野宿だな。


まずは情報を得るために、王都の街の誰もいない路地に降りていった。


そして誰もいないことを確かめて透明魔法を解除した。


俺は路地から出て周りを見渡すと屋台があったので行ってみた。


屋台の横で何食わぬ顔を見ている。誰かが買いに来れば貨幣の確認ができるから。


使えないと野宿だし食べものも買えない。


俺の時代の貨幣は、銅貨、銀貨、金貨だから使えるはずなんだけど‥‥‥誰か来ないかな?


美味しそうな匂いをさせながら焼き串が焼かれている。時々、店主が俺の方を見ている。


しばらくすると子供が焼き串を買いに来た。


「おっちゃん、焼き串、一本遅れ」と言う。


言葉は大丈夫みたいだ。


少年の手に握られている金を見てみると、銅貨だった、でも形が俺の持っている銅貨と違う、俺のは丸い、少年のは四角だ。


俺は錬金術を使って、一度、その場所を離れて影に隠れて錬金術を使い四角した。これで大丈夫だろう。


元の場所に戻ったら、もう少年はいなかった。


試しに買うことにした。


店主に「これで、何本買える?」と俺は銅貨を見せながら聞いてみた。


「銅貨なら一本だよ、どうする? いるかい?」と店主。


「じゃ、一本もらえる?」


「じゃ、温めるからちょっとかかるよ」と行って焼き始めた。どうも種類はないみたいで一種類みたい。


「じゃ、あそこの椅子に座っています」


「あいよ」と店主


俺は屋台よりも周りを見ている。


情報を集めながら街を歩く人を見ているけど、服装も、そんなに変わっていないし、街も俺の時代と大差ない。


あとは宿に泊まる時に支払う銀貨や金貨を使えるかだな。


銅貨は四角だったから、銀貨も金貨も四角なのか?


いや、ちょっと待てよ、確認してからだ。


「はい、にいちゃん、焼けたよ」と店主が言うので取りに行く。


店主から受け取って銅貨を支払って、店主に聞いてみた。


「あの、俺、国の外から来たんだけど、この銀貨と金貨は使えるんですか?」と素直に聞いてみた。


店主は、めんどくさそうに答えてくれた。


「ああ、どれも使えるよ」と やった〜


「ありがとうございます、じゃ、焼き串をもう3本ください」と店主にお礼も兼ねて言った。


どうも銅貨だけは四角で、銀貨と金貨は丸いままだ。


店主の機嫌が良くなり「そうかい、外から来たのかい」と軽快に話だした。


「ここらで良い宿はありますか?」


「宿かい? そうだな、良い宿は高いぞ」と言われた。


「じゃ、中程度の宿で良いところを‥‥‥」とランクを下げてみた。


「それなら、ちょうど正面にある、宿がいいと思うぞ」と言って店主が宿を指差した。


俺が振り返ってみてみると、そんなに古くない宿があるのが見えた。


「じゃ、あそこにします」


「また、買いに来てくれよ」と店主


「ええ、また来ますよ」と言って焼き串を持って、宿に向かった。


焼き串を持っていくと、汚されると思う人もいるから、歩きながら3本とも食べた。


焼き串が入っていた袋は異空間に入れた。


ちょうど宿の玄関に着いた。


宿の階段を上がり扉を開ける。


女性の声がして「いらしゃいませ〜」と


声がした方を見てみると俺と同じくらいの女性がカウンターに立っていた。


「お客さま、お泊まりですか?」


「あっ、はい、お願いします」


「何泊されますか?」


「とりあえず、10日お願いします」


「はい、10日ですね、食事付きと食事なしが選べますが、食事付きで申し込んでいても食べなくても料金はお返しできません」


「じゃ、食事付きでお願いします」


「では、前払いでお代金は、金貨2枚になります」と言うけど、結構、高い。


「あっ、はい、わかりました、これでいいですか?」と言って金貨2枚を出した。


女性はちらっと見て「はい、大丈夫です」と言って受け取った。


「では、お部屋は3階の301号室です」と言って鍵をくれた。


俺は女性から鍵を受け取り、階段を登っていく。


3階まで上がり301号室があった。階段を上がって、すぐ横だった。


ドアノブを回して部屋の中に入ってみる。


1000年前の宿は、どんなに変わっているのか?


しかし部屋に入るとベットと机と椅子とクローゼットがあるだけ。


なんだ、普通じゃないか。


部屋には窓があったので窓まで歩いて行き窓を開けてみる。


窓を開けると先ほどの屋台が見える。


屋台周辺には、人や馬車が通っている、なんだか1000前を言っても普通だな。


これから、どうしようかな?


俺は窓から離れて椅子に座って試すことにした。


念話でジャネットに通信を送る。


「ジャネット、聞こえる?」


「‥‥‥‥‥‥」といくら待ってもジャネットの声はしない。


ダメか?


う〜ん、何かいい方法はないかな?


次元の中に行かないと通じないかな?


俺は一つアイデアを思いついたので、基礎魔力を増強してみることにした。


送る力を強くすることで念話が通じることもあるかもしれない。


あとは次元超越剣を取り出して作用させて念話をしてみることにした。


念話も次元を超えることが出来ないのであれば、増幅と次元を超える剣の作用でできるかも。


念話の増幅と次元超越剣の作用で、念話の出力が上がったような気がしたので『ジャネット、聞こえる?』と言ってジャネットに通話を繋げてみた。


『あっ、ご主人さま』とジャネットに通じた。


『そちらは、どう?』


『今は何も起きていません。ご主人さまは、どこにいらっしゃるのですか?』


「俺は1000年前にいる』


『えっ、行けたんですか?』


『うん、そうなんだ、行けたというか、ウルフの奴が逃げ込んだ先が次元の穴だったんだ。それについていったら、1000年前に行くことが出来たんだよ』


『そ、そうですか』


『多分、俺からは連絡できるけど、ジャネットからは念話が通じないと思うから、時々、確認するけど、そちらの方はよろしく頼むね』


『あっ、はい、それはもう‥‥‥あのアリシアが、帰ってこれるのか聞いていますが』


『うん、まだ試していないけど、多分ね』


「そうですか、わかりました』


と言って念話を切った。


あれっ、念話が増幅と次元超越剣でできるとしたら、次元の穴を通って戻ればできるんじゃないのか?


次元空間を利用すれば瞬間転移をすることは可能か?


考えてもらちが開かないから、実験してみよう。


まず念話の時は、これくらい増幅すればよかったよな‥‥‥さらに増幅して、そして次元超越剣の能力を利用して、マーカーまで転移してみると、目の前にはマーカーがあった。


穴から出てくると、そこはウルフと戦っていた場所だった。


ここから俺は、本当の瞬間転移で、もといた場所に戻ってきた。


「うわっ、びっくりした」とアリシア


「もう、クリス、急にこないでよ」とイザベラ


「あれっ、さっき、ジャネットがクリスは1000年前にいるって言っていたよね?」とアリシア


「はい、私も言いました」とジャネット


「帰ってこれたのね」とソフィア


「うん、ただいま」


「うん、おかえり」


「俺、向こうに宿をとっているだけど、誰がいく?」


「えっ、1000年前だよね」とアリシア


「興味はあるけど、怖いような‥‥‥」とシャーロット


「ここの守りも必要だから、2名くらいだね」と俺


「私とアリシアとコリンが行きましょう」とジャネット


「そうだね、様子見は、3人くらいの方がいいわね」とソフィア


「じゃ、ジャネットとアリシアとコリンは用意して」


「何か持っていくものとか、あるの?」


「う〜ん、何もない」


「なぁんだ、それじゃいく用意できたわ」


「はい、私も大丈夫です」


「じゃ、俺たち4人で行ってくるから、あとはロゼッタとソフィアに頼むね」と言うと


「任せるのじゃ、ご主人さま」


「うん、わかった、次は連れていってね」とソフィア


「うん、了解」と言って瞬間転移した。



俺がいなくなってから「本当にご主人さまは、すごいのじゃ」


「本当だね、クリスって考えたら、即実行してみせるから‥‥」とイザベラ


「そうですよ、クリス様は現代における最高の勇者です」とシャーロット


「時々、気の弱さが出るけどね」とイザベラ


「そこが、またいいところです」とシャーロット


「うん、クリス様のそんなところ可愛いよね」とセラフィーナ


「あっ、私も、そう思います」とシャーロット


「でもご主人さまは、いざと言う時がすごいんですよね」とパトリシア


「そうそう、本当にあの可愛い人が、こんなに変わるのかっていくくらい格好良くなるから、きゅんってきちゃうよね」とアレク


「えっ、アレクも、そう思っているの?」とソフィア


「もちろん、だってご主人さまって、可愛いところとカッコいいところ両方とも持っているんだもん」とアレク


「私も以前、ご一緒させていただいた時に色々助けていただいて、ご主人さまみたいな勇者がいいなと思っていました」とエイミー


「クリス様って、歴代の勇者の中でも能力も人間性も最高だよね」とパトリシア


「パトリシアは他にも勇者を知っているの?」とソフィアが聞いてみた。


「うん、数人はね、でも能力を人に誇示する馬鹿もいたわね、女たらしだったり、金に貪欲だったり、物を盗む勇者もいたわね、アイテムを独り占めしたりするような勇者ばかりだったよ」


「そうか、クリスは勇者の中でも、本当に勇者ぽくないけど、そこがいいよね」イザベラ


「うん、最高」とアレク


「そうか、歴代最高の勇者の中の勇者クリスね」


と言う話があったみたいだけど転移して1000年前に行った4人は知らない。

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