第466話 人員手配と本

俺たちは近くの領地を持っている貴族に手紙を持って、人を連れてくる役目を引き受けることにした。


飛んでいけば早いけど手紙を呼んで、理解して準備するまでに時間がかかりそうだな。


手紙は国王の封蝋が押してある。


それを3通もらって、「じゃ、みんな頼むね」と言って全員が瞬間転移していった。ここまで飛んできた時に、王都の城門は見ているので、そこまでは瞬間転移が可能だ、そこからは飛んでいくしかない。


俺、1人が残ったので、新しく城に専用の部屋を借りることにした。


「王様、俺たち用の部屋を一つ借りることはできますか?」


「すぐに、用意しよう」と王様。


キャサリンが発言して「じゃ、私の部屋の隣が空いていますから、そこに案内します」と言ってきた。


「何、お前の隣の部屋をか?」


「はい、何か、ご不満でも?」と声に力がこもっている。


「い、いや、不満はない」と王様、タジタジ。姫の方が強そうだな。


「じゃ、こちらへ、どうぞ」とキャサリンが案内してくれる。


行く時、ちらっと王様を見たけど、不安な顔をしている。


そんな不安そうな顔をしなくたってキャサリンには手を出すわけないじゃん。


メンバー全員の目があるのに‥‥‥


しばらく歩いて行くと部屋の前に立つけど、扉を開けると大きな部屋で綺麗だった。


「じゃ、私は、戻りますので、何かあれば、きてくださいね」と言ってキャサリンは、戻っていった。


俺は誰もいない部屋を見て周り念話で『部屋を借りたから、俺がいるところを目印にして戻ってきて』と伝えた。


『了解』と3チームから帰ってきた。


俺はテーブルの近くに置いてある椅子に座って、地下にあった本を広げてみる。


1000年前の本だからボロボロなのかと思っていたら、魔力がかかって本を守っている。


だから売りに出されたばかりのような本だった。


流石に新品とは行かないけど、時間の経過の古さを感じない。


一冊取り出して、表紙を開いていく。


そこには明らかに俺の字でかいてある。


(この本を手に取るときには、何かが起きていなけえればいいがと思っている)


もう、一度、表紙を見ると、この本って勇者物語ってかいてあるんだけど‥‥‥


俺が、今まで勇者物語読んでいないから?


なんで勇者物語を、あんなところへ置いておく必要があるんだ?


俺への嫌がらせか?


パラパラっとページをめくってみた。別に俺に伝えたいことが書いてない。


なんだ? もう一度、表紙を見ると第1巻と書いてある。


異空間に入れてある本を全部、取り出してみてみると、第17巻まである。


コリンに確認する必要があるけど、コリンに見せていいものじゃないと思える。


17巻だなんて、そんなに勇者物語は出ていたのかな?


と言うことは、未来まで行っているのか、俺は、そこで書かれた本を持っているのか?


それとも俺が生きている時に本が、どんどん出版されたのか?


でも冒険していないと書けないよな、書くこともないし。


でも17巻、全て読んでいきたい思いもあるけど、わかっている未来は興味ない。


未来は自分で切り開くものだと思っている。


いくら未来予知ができたって、決まっていないわけだし、でも、そうすると未来が変化するのか?


俺が本を読む未来と、読まないで訪れる未来には、どこかで変化するのか?


本を読むと避けられる世界、しかし本を読まないと避けることができない世界もあるのかな?


どうする? 読む? 読まない?


う〜ん、悩むな〜、もう。


結構、時間をかけて悩んでいたみたいでジャネット組から連絡が入った。


「はい、ジャネット、そちらは、どう?」


「はい、王様の手紙で、私たちはきたことをやっとわかってもらえて今、人員の手配をしています。あと、もう少しかかります」


「うん、わかった。待っている間、食事をしてね、毒が入っていないか確認すること」


「あっ、はい、わかりました」


「魔族はいない?」


「ええ、ここにはいません」


「うん、わかった」と言って念話を切った。


テーブルに置いてある本を見て悩み始める。


俺は見ない方に傾いている。でも悩んでいるところもある。


確か、ボールドウィン王国に行った時、姫のエレノアが本を持っていて、その本が一巻だったような‥‥‥


でもボールドウィン王国は遠い国だから手に入れるのも難しいと思う。


確か、3巻か4巻までしか出ていないと思う。


そのあとを読めば、これから先のことがわかる?


今から何が起きて、どう行動するのか、わかると言うことになるけど、それじゃ面白くない。


よし、この本はしばらくは封印しよう。決めた。


やっぱりわかっていることよりもワクワク感とかドキドキ感が違うよね。


その時、肘が本にあたって、本が一冊、床に落ちてしまった。


落ちた本は、本の中を開きながら床に落ちた。


その開かれたページは‥‥‥‥‥‥白紙


ん、なんだ、この本‥‥‥全部中が書いてあるのかと思ったら違うのか?


俺は落ちた本を手に取り本の中をパラパラと見ていく。


落ちた本は13巻‥‥‥13巻で全部が真っ白、つまり書いていないけど、表紙だけは勇者物語となっている。


俺は17巻、全部を見直していくことにした。


4巻までは最後まで書かれている。


5巻を手に取って開いてみると半分までが書かれている。


書かれている最後のページをみてみると途中で終わっている。


つまり、文章の途中で止まっているんだ。


その文章は『勇者クリスが正体不明の敵に対峙し   』で止まっている。


なんで、こんな中半端に止まっているのか?


そこにちょうどパトリシアから念話があった。


「ただいま、到着しました。王からの書簡を見せて領主に会いまして、今、準備中です」


「うん、了解」


俺はふと気になったことを口にしてみる。


「あっ、パトリシアに聞きたいんだけど、コリンは、今、どうしている?」


「えっ、コリンですか、今は暇なので執筆していますね、あっ、今、顔を上げましたよ、5巻を書いているって言っています」


「あっ、そう」


「コリンがどうかしたんですか?」


「いや、なんでもないよ、じゃ、念話を切るね」


と言って、また、本を見てみると『勇者クリスが正体不明の敵に対峙していると、敵は魔法のファイヤーボールを投げつけてきた   』まで進んでいた。


やっぱりか!


これはコリンが今、書いている勇者物語と連動しているみたいだ。


詳しくはわからないけど‥‥‥ということはコリンは勇者物語を17巻まで書くのか?


いいや、17巻で終わりとは限らない、入手した時で17巻だったということも考えられる。


どうして俺は、これを現在の俺に託したのか、冗談で送ったのか?


もう、何がなんだか、わからない、混乱することばかり‥‥‥


ロゼッタとアレクとアリシアのチームから連絡が入った。


「ご主人さま、こちらは領主から接待を受けて美味しいものを食べていますのじゃ。今は人員の手配中ですじゃ」と言ってきた。


「あっ、そう、毒は入っていない?」と聞くと


「はい、大丈夫なのじゃ、チェックしたのじゃ」と


「うん、わかった、念話を切るね」


これで、しばらくすれば大勢の人が、ここに来ることだろう。


それまでに俺は食事をするために本を異空間収納に入れた。


俺の異空間収納には多くの出来立てのものが入れてあるから、ボールドウィン王国で買ったものを出すことにした。


今、ここは食事を出せる状況じゃない。


王族の3人も食べていないと思うけど、城から、誰かが出て街に買いに行っているかもしれないけど、王様たちを食べても、食べた気がしないから、俺だけでいただくことにした。


俺が熱々の焼き串を出して食べようと口を開けた途端、ノックのなしに入ってくる人がいた。


それはキャサリンだった。


「あ〜、勇者様だけ、食べている、私もお腹減っているのに‥‥‥」と言われた。


一度、焼き串を見て、「これ食べる?」と食べていない焼き串を差し出すと、「いいんですか?」というから、しょうがなく、違う焼き串を出してあげた。


「あっ、んもう、その焼き串でいいのに」とキャサリン


と恐ろしいことを言う。

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