生きるための軍隊生活
俺は掃除をしていたら、以前、助けてもらった、魔法師のお姉さんに紙を渡され、必ず一時間後に行くように言われた。
何があるかも教えられることがなく、食堂にかかっている時計を気にしながら、仕事をこなしていく。
俺は今は、15歳になっているが、こんなことは初めてだ。
渡された紙には、地図が書いてある。
地図には、今、いる所と、行く場所が書いてある。
「じゃ、行こうか?」と紙を広げて、どっちに行くんだ?と見てみる。
けっこう、入り組んだ場所に行くみたいだけど、こんな遠くに行くには、初めてだ。
俺が掃除している場所とは違い、いつも行かない場所を指定している。
結構な距離歩いてきたが、場所が分からなくなり、歩いている人に聞くよりも紙を見せた。
「あの、すいません、ここに行きたいんですが」と通りすがりの人に紙を見せる。
「ん?え~と、あっ、君がここに行くのかい?」と言われて、俺をじろじろ見る。
「ええ、行けって言われて」
「そうなんだ、ここはね、そこから、右に曲がって、しばらくすると左に曲がる道があるから、そこを………」
途中からわからなくなってきた。
それを感じた、この人は、途中で道を聞きながら行くことを勧めてくれた。
道を聞きながら、進んでいくと、やっと、ここだと言う場所にきた。
俺は扉の前に来たが、その前に人が立っている。
「何か用か?」と言われて、どう答えたらいいのか、迷っていたら、立っている人が俺が持っている紙を取り上げた。
「なんだ、この紙は?」
立っている人は、俺が持っていた紙をすらすらと読み、俺に後ろを見せて、ドアを叩いた。
「指令、例の奴が来ました」
「通せ」と中から聞こえる。
立っている人が扉を開けてくれた。
「どうぞ」と俺を招く。
俺は、こんな扱い初めてだから、緊張した
おずおずとした足取りで、中に入ると「時間通りだな」と言われた。
中に入れてもらえて、俺は訳が分からず立っている。
「え~と名前はアルベルト………間違いないか?」
「はい、そうです」
「よし、そこに座れ」と指さされた椅子に腰かけた。
周りを見渡す事ができないほど、緊張している。
向こうは、こちらを観察している。
と、おもむろに「君は魔法を使えるのか?」
「えっ?」
「いや、君を推薦してくれたものが、いてな」
「………」
「いままで、君は軍での仕事は住み込みで掃除をしていたそうだが、間違いないか?」
「あっ、はい、そうです」
「そうか」フーッ、と葉巻に火をつけ、吸って煙を吐く。
モアッとする煙草の匂いに、俺はむせそうになる。
しかし、一生懸命、我慢する。
なんだろう? なんで、こんなところに呼び出されたのか?
「君は、15歳だったな」
「はい、そうです」
「………………」と、しばらく黙る。
「それでは、我が国の魔法師部隊に入隊せんか?」
「はっ?」と聞き返してしまった。
「もう一度、言うぞ、我が国の精鋭部隊が揃う、魔法師部隊に入隊せんか?」
「はい、入れるなら、入りたいです」と訳がわからないが、適当に答えた。
「そうか、そうか」と急に笑顔になる。
なんだ? 魔法師部隊? えっ、それに入隊って?
えっ、どう言うこと?
テーブルの上に、どこからか持ってきた、用紙が一枚………
「この用紙に、名前を書いて」と言われてペンをくれた。
俺は、なにかわからずに、用紙にサインをする。
「しました」
「よし、これでお前も、我が魔法師部隊の一員だ」
「えっ?」
「訓練に励むように」と言ってチリン、チリンとベルを鳴らす。
また扉が開いて先ほどの扉の前に立つ人が入ってきた。
「今日から、我が魔法師部隊の隊員だ」と言って、俺に違う紙を持たせて、部屋から追い出した。
その人は「お前、名前は何という」
「アルベルトですが」
「そうか、アルベルト、今もっている紙をみて、その場所に今から行くように」
「あっ、はい、わかりました」と言いはしたが、何が起きているのか、わからない。
とまどう俺に、もう言うことはないと言う雰囲気の、この人。
「では、また会おう」と帰っていった。
一人、取り残された………俺
また紙をもらって、そこにいくしかない………
一体、ここはどこなんだ?
紙を見せて、聞いてみると「えっと、君がここにいくのかい?」と何度も聞かれてしまう。
それとか、何かの用があるのか?とも聞かれたが、わからないと答えた。
俺は、指定された場所にたどり着くのに数人に聞いて、やっと到着することができた。
受付みたいな窓があり、そこに紙を出せと書いてあるので、紙を出したが、受付の人はジロジロ、俺と紙を交互に見ている。
なんだか、嫌な感じだ……
「それじゃ、これに読んでサインして」と違う紙を出されて、俺は紙を受け取り、読み始めた。
なになに………寮の規則?
異性を連れ込まない。
時間厳守
食事は、一日3回、空き時間の時にとる………
俺は、何がなんやらわからなかったが、サインした。
そしてサインした紙を窓口の男性に戻しカギをもらった。
カギには、番号があり、そこが君の部屋だと言われた。
カギの番号は306号と書いてある。
俺は、一階から順に歩いて探した。
途中に階段があり、それを登っていくと、201号と書いてある扉があったので、俺の部屋は、その上だと言うことが分かった。
306号室の扉の前に行くとノックしてみる。
何も言わない。
もう一度、ノックをしようとしたら、食堂で助けてくれた女性が通路を歩いてきた。
「おっ、やっと来たか?」
「あっ、はい、あのノックをしても、返事がないんですが?」
「えっ、ちょっと持っているカギを見せて」
俺が握りしめていたカギを見せる。
「なんだぁ、ここは君の部屋じゃないか?」
「へっ?」
「つまり、今日から君は、あそこじゃなく、ここで生活するんだ」
「えっ? そうなんですか?」
「君、何も知らないみたいだね」
「はい、あの………」
「しょうがないな、私が教えてあげるよ」
「あっ、はい」
「教える前に、私の名前はローリーだ」
「あっはい、ローリーさん、お願いします、状況がつかめていなくて」
「そうだろ、そうだろ、今、我々がいる所は、軍隊の中でも少数しかいない魔法師部隊の宿舎だ。魔法師部隊と言うのは、軍隊の中でもエリートだ」
「はぁ」
「なんだ、その気の抜けたような返事は、元気を出したまえ」
「はい」
「うん、そうだぞ、君も今日から軍人になる訳だ。それも、私が所属している魔法師部隊の一員だぞ」とローリーは言う。
そんなことを言われても、今までのことがあるから、急に言われても、すぐに慣れない。
ローリーが説明してくれたのは、軍隊生活全般のことを俺の部屋の中でイスに座って説明してくれた。
俺の部屋になる306号室は、机、イス、ベット、クローゼットが置いてあるだけ。
しかし、最上階でもあるので、窓が大きく明るい………
ローリーの部屋は305号室だそうだ。
ローリーは、長い髪の金髪で、今は髪を束ねている。
背丈は160センチくらいで、キレイと言うよりもかわいい感じがする。
軍でのローリーの階級は、大尉と言う階級で、その階級のことも教えてくれた。
軍のことを何も知らない俺に、冗談を交えて説明してくれる。
そして俺は、ローリーの部隊に配属になるらしい。
他に隊員がいる場所では、ローリー大尉と呼んで、いない所では、そんなことは良いと言ってくれた優しい人だ。
ローリーは貴族の伯爵家で生まれたが、嫡子ではないため、変な貴族と結婚の話が出た時に、魔法が使えたので家を出て軍隊に入ったそうだ。
ほとんどの魔法師が貴族で構成されていると教えられた。
だから気をつけろよ、と忠告してくれた。
平民は俺だけみたいだからだ。
「じゃ、明日から訓練に入るから、今日はゆっくりしたまえ」と言って部屋を出ようとしたので、俺は「本を読めるところはありますか?」と聞いてみた。
「ん? 本か? 君は本を読みたいのかね」
「あっ、はい」
「そうか、もちろん、ここにも本は置いてあるぞ、そうだな、迷わないように地図を書いてやろう」と言って机の椅子に座って書きだした。
書いている最中、ローリーの髪が差し込む光に当たってキラキラ輝いている。
キレイな人だな……と見とれていた。
「ほら、できたぞ」と俺の方を急に向くもんだから「なあ、なんだ?」
「いえ、キレイだなって思って」髪が………
「おま、お前、な、なんて、ことを言うんだ」と顔が赤い。
「ほらっ、これ」と言って紙を俺に押し付けて部屋をでて行った。
ん? どうしたんだ?
今までローリーが座っていたところには、部屋の外から日差しが差し込み明るさを増している。
俺は窓のそばに行き、まだからの景色を見てみる。
窓の外には、木や施設の景色しか見えないが、それでも俺には十分だった。
そして振り返り部屋を改めて見てみる。
光が差し込む机をみて、座ってみると、まだローリーの座っていたぬくもりを感じた。
立ち上がってクローゼットに歩いていくと、中には、軍服が数着、置いてあった。
ベットにも寝てみたが、ふかふかで眠れるだろうか?と思ったほどだ。
俺は時間があったので、食堂よりも本が置いてあるところに興味が引かれた。
部屋にカギをかけて(何もないが、一応)ローリーが書いてくれた地図を頼りに、歩いていく。
しかし、数人の人に呼び止められた。
お前、何者だ?
どこから入ってきた………と言われて、それなら軍服で歩けと言われた。
それで、追い急ぎで部屋の戻り、クローゼットから軍服を出した。
これを着るのか?
靴下を履き、ズボンを履いて白いシャツを着て初めてベルトを締めて、上着を着た。
ほとんど、ローリーと同じだが、階級章のついている所には、俺には何もない………
今は試験入隊中だからだ。
この期間が終わると俺にも階級がもらえるそうだが、それも実力次第だと言う話し。
俺は軍服に着替えて、紙の通り歩いていくと、扉があり、そこには本が置いてあるのが見える。
扉の前に人がいたので、戸惑いながら、その人に聞いてみた。
その人は俺の顔と軍服を見て、「入ってよし」と言ってくれた。
そして、この人は小さな声で「本の蔵書がある部屋では、話をすることは禁止だ」と言われた。
こそこそと足音を立てずに入ろうとした。
「そこまでしなくて、いいから」と言われた。
と周りにいた人から、クスクスと笑われた。
俺は顔が赤くなるのを感じながら、足早に中へ入っていく。
本棚のところで足を止め、ほとぼりが冷めるのを待ちながら、何があるのか表紙を見ていく。
国の歴史書………魔石関係?………そして見つけたのが魔法のことを書いてあるコーナー。
魔法学?………魔法理論………魔法の詠唱?………魔法石?………魔法書?………魔法の種類と使い方
! あった、あった、これだ
俺は魔法の種類と使い方と言う本を手に取る。
結構、見た人が多いみたいで、本はボロボロだ。
これ以上、崩れないように、本棚から取ろうとする。
その時、「おい、あれって、階級がない奴だ」と言う声。
「おい、貴様、だれの許可を得て、その本を読んでいる?」と結構、大きい声で言われた。
「えっ、許可がいるんですか? それは知りませんでした」と伸ばしていた手を引っ込める。
そこに声を聞きつけた、入り口に立っていた人がやってきた。
「おいっ、お前ら、何を揉めている」
「いいえ、何もしていませんよ、ただ、物知らずな奴に言っていただけです」
「まぁ、なんにせよ、静かにするように」と言って去っていった。
「チッ、助かったな」と言って、難癖をつけた奴は去っていった。
本を読んで良いんだろうかとキョロキョロしたが、こそ~っと本を棚から取って、崩れないように持って開いてみた。
目次があり、その中に、無詠唱の魔法と書いてある。
ローリーから見せてもらった時は、詠唱をして魔法を使っていた。
でも、俺は詠唱の言葉なんて、知らなけど、魔法を使えるから、それを無詠唱って言うんだそうだ。
そのページをめくると、この世に無詠唱を使える人は、存在しない………と書いてるだけ。
えっ? 無詠唱って、使える人はいないの?
他に書いてある本があるのか?
俺は、開いていた本を、もとあったところに直して、他の本を探そうとしたら「終了~」と言う声がした。
えっ、もう終わり?
ガヤガヤしながら、人が動きだす、これだけ多くの人がいたのか?
しょうがない、明日でも、また、来よう、と思って、ゆっくりを歩ていて、その足で魔法師部隊の食堂に行った。
ローリーから説明を受けていたが、本が置いてある途中に見つけていたから、すぐに分かった。
どうすれば良いか、わからなくて、しばらく観察していたら、手を振る人がいた。
「お~い、アル」と
その女性は、もちろんローリーだった。
俺は急いでローリーの座っているテーブルに行くと、ローリーが「あそこで並んで、もらってくるようにと説明を受けた。
その日の食事は決まっているそうで、並べばいいそうだ。
俺はトレーに並べられたものを取り、急いでローリーの元に行った。
なんだか、階級がないと言うことで注目されている。
あちらこちらでヒソヒソ、俺を指さしたり、目線を集めている。
「ここに、座りたまえ」とローリー
皆が見ているので、「失礼します、ローリー大尉」となんだか、恥ずかしい。
「ああ、少しは慣れてきたか?」
「いえ、あんまり………」
そうか、そうか、まぁ、座れ」とローリーの横の空いている席を指さす。
「失礼します」
「ここにいる皆は、我が隊のメンバーたちだ」と紹介された。
「あっ、よろしくお願いします」と頭を下げた。
自己紹介があったあと、「君、いま、いくつ?」と言われたので、「あっ、はい、15歳になりました」
「そうなんだ」
「うん、若いね」と言われた。
今、いる人たちは女性ばかり………
全員が30前?のような見た目。
一人の人が「あのね、もう、すぐ戦争があるかも知れないんだ」
「えっ、そうなんですか?」
「うん、戦争になれば、君も出兵せざる負えないよ」
「えっ、俺が戦争に?」
「そうだよ、それまでに、戦いに慣れておく必要があるよ」
何かわからないが「ああっ、そうですね………」と実感はないが、答えた。
戦争と言われても、よくわからない。
「じゃ、私たちは行くから」とトレーを持って俺以外の全員が立ち上がった。
「あっはい、失礼します」と言えるのも軍隊で下働きをしていたせいだ。
数年も掃除中に、軍隊のことをみていたけど、見ているだけなのと、自分がやるのは違う。
****
俺は魔法師部隊に入ることになるみたいだけど、今は試用期間。
試用期間でも、訓練は実働部隊と同じことを訓練する。
試用期間が終わると、配属先はローリーのいる第三魔法師部隊になるって言っていた。
つまり、ローリー大尉は魔法部隊の、部隊長だ。
魔法師部隊は、7部隊まであるみたいだが、少数精鋭だと言うこと。
一部隊、20人に満たない。
剣を扱う部隊も同じ7部隊になる。
出動する時は、剣の部隊と魔法師部隊が合同でことに当たるそうだ。
俺が正式な軍人になれば、第三部隊は、いくつかの小隊に別れて、剣の部隊の後方から支援することになるみたい。
午前中は座学で、色々なことを叩きこまれる。
食事後は、第三部隊の隊員と訓練をする。
「全員、揃ったな」とローリー大尉
「はっ、正規隊員19名、他一名です」と副官のアグネス少尉。
もちろん、他、一名は俺のこと。
整列している後方に俺がいる。
全員が同じ服に袖を通して整列している。
もちろん、俺も支給された服に手を通して姿勢を正している。
手を回してくれたローリーに恥をかかせるわけにはいかない。
頑張らなくちゃ。
***
魔法師としての訓練が始まる。
副官のアグネス少尉が「それでは、たるんでいないことを、新入りにみせるぞ」と掛け声。
「「「「「はっ」」」」」
「お前らの、火魔法を、新入りに見せてやれ」
「イエス、マム」と女性のジュリー軍曹。
そう、俺が入ろうとしている部隊は、俺以外は女性ばかり。
なんだか、やりにくいけど、それでもローリー大尉に、恥をかかせたくない。
他の部隊も、近くいて訓練をしているが、男性ばかり………
どうして俺が、この部隊に入るのか、疑問だが、ローリー大尉の意向だろう。
ジュリー軍曹が、上官のアグネス少尉に「用意できました」と言うと、アグネス少尉は、ローリー大尉の方を見て、ローリー大尉が頷く。
なんだか、ややこしいな、これが軍隊か。
また、アグネス少尉から、ジュリー軍曹に戻り、ジュリー軍曹が「詠唱はじめ………」と言うと詠唱が始まる。
詠唱を聞いていると、同じじゃないことがわかった。
火の聖霊よ、我に力を貸したまえ、とか、荒れ狂う魔法の炎よ、敵に向かって飛べ、だとか、
そういえば精霊っているのか? 見たことがないけど。
俺に才能が無くて、見えないだけなのか?
魔法を放つと、魔法が的に当たって、ボンッ、とか、音を立てている。
あれっ、俺が放つ魔法の方が大きいような気がするが、気のせいか?
横に一列に並んで魔法を発動させていく。
繰り返し、繰り返し、魔法を発動させる。
そのうち、一人が座り込んだ。
はぁ、はぁ、肩で息をしている。
そこにジュリー軍曹が「貴様、もう、魔力切れか? そんなことでは新入りに示しがつかんぞ」と怒られているが、座り込んだ隊員は、顔も上げない。
「もう、いい、少し休んでいろ」とローリー大尉。
「はっ、申し訳ありません」と言ってジュリー軍曹は、倒れこんだ女性を助けて、後方の椅子に連れていく。
そして戻ってきて俺に近づき「おい、お前もやってみるか?」と聞いてくる。
「はい、やらせてください」と姿勢を正して言ってみた。
「よし、あの位置について、火の魔法を放て」
「はっ、わかりました」と言って、先ほど、座り込んだ女性の空いた位置に立った。
横では、まだ、火の魔法攻撃が続いている。
すぐ近くで見ているジュリー軍曹、そしてアグネス少尉も、俺に注目している。
ローリー大尉は誰かと話している。
「では、いきます」とジュリー軍曹に言った。
全員が詠唱して魔法を放つことをしているのに、俺は何かができるように何も考えずに全身から魔力を集めて、手に集中させる。
俺も、魔法が使えることが嬉しく、もう、あんな生活をしなくて良いと思って魔法を放った。
俺の掌に燃え上がる火は起きなくて、放つ経路にも魔法の痕跡はないのに、的が一気に燃え上がった。
それも、すごい勢いで………
俺は腕を伸ばしたまま………あれっ?
他の隊員と違う………あれっ?
俺が不思議があっていると、足早にローリー大尉が来た。
「ア、アルベルト………な、なんだ、お前の魔法は?」
「えっ、自分でも、わかりません」と本当のことを話した。
「お、おまえっ」と何か言いたそうにしていたが、俺は本当のことを答えたのを、思い出したんだろう。
「そうだったな、初めて会った時、あの時が魔法を使った初回だったな」
俺も、俺の魔法に驚いていることは、ローリー大尉に伝わったみたいだ。
「よし、全員、休憩に入れ」
「イエス、マム」と場を離れていくが、俺には休憩はない雰囲気。
いま、俺の周りには、ローリー大尉、アグネス少尉、ジュリー軍曹が残っている。
そして、先ほど、ローリー大尉と話をしていた人。
その人が近づいてくると、三人は姿勢を正して、敬礼した。
俺も、それを見習って敬礼した。
「師団長殿だ」とローリー大尉。
俺は師団長と言われる人に敬礼したままだったが、下ろすように言われて全員が、手を下した。
師団長と言われる人物は、50代くらいの女性だった。
師団長は、「おまえ、アルベルトだったか?」
「はい、そうです」
「お前は、もう試用期間を無しにして、軍に正式に採用する、これからは座学は、士官用の座学を受けるように」と言われたが、意味は分かっていない………
「はいっ」とだけ意味もわからずに答えた。
師団長は、それだけ言うとローリー大尉と目配せして去って行った。
残された三人………俺がローリー大尉をみると、バシッと背中を叩かれた。
「やったな」とだけ言われた。
「そうだな、あとは、詳しいことはアグネス少尉に聞くように」と言って師団長の後を追って行った。
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