つらい軍隊の下働き

俺は八歳の年に軍に下働きとして村長の家から厄介払いされた。


俺を連れた軍隊の人は、村が見えなくなると俺を馬から下した。


「もう、いいだろう?、おい、その小僧を歩かせろ」


「そうだな」


一緒に馬に乗っていた軍人は、俺と馬を降りて、俺の腰に逃げないようにロープをつないだ。


「これで逃げられないだろう」


「おい、行くぞ」と俺のロープを馬に結び、引っ張っていく。


「うわっ」と声がでた。


俺は引っ張られることで歩かざる負えない。


馬につながられたロープで引っ張られながら歩いていく。


しばらくは歩いていたが、そのうちに数年間の引きこもりの為、足が痛くなってきた。


「足が痛い」と声を荒げたが、軍人の人は馬を止めてくれない。


足の痛みはあるが、それよりも疲れと眠気で目がトロンとふさがってきてフラフラしながら、歩いていく。


その時に転んでしまった。


「ぎゃははっははっ、あー面白い」と


「ぎゃははっははっ」


全員が笑う声がする。


「よーし、こいつのせいで進行が遅れそうだが、ここは俺に免じて休憩だ」と言うや馬から降りる。


「おい、小便はしておけよ」と言う軍人。


俺が返事をしなかった。と言うか、頭がもうろうとしていたのもあった。


そうすると一人の軍人が、俺を殴ってきた。


「返事くらいするのが軍人ってもんよ」


「ひゃあははっは、そいつは軍人じゃないぞ」


「それも、そうだな、しかし、これからは軍の掟に従うしかないんだ、その基本が返事だ、なあ、おまえ、わかったな、返事は、はい、だ」


と言いながら、また、叩こうとしたので、俺は涙を流しながら、はい、と答えた。


休憩が終わった後、俺は馬につながれたロープに引っ張られながら歩いた。


どれくらい歩いたか、わからない………


足が痛いと思っても、足を触る余裕なんか与えてくれない。


自分の都合で、止まることや休むことなんて、できない。


転んで膝にけがをしても、誰も止まってくれない。


ただニタニタ笑うだけ‥‥‥


両親と暮らしていた時を思い出して、また頬を涙が落ちてきた。


そして、これから、どうなるんだろう?


そのことばかり気になった。



俺が八歳の時に村に軍人がきて、俺の意思とは別に俺を連れて行った。


村長は、少しばかりの金をもらって、厄介払いした。


村長の奥さんが、あからさまに、あースッキリしたって連れていかれるときに言っていた。


連れていかれた王都って言うのは、村とは違い、建物が多かった。


それよりも塀が高く、そびえていて近づくと見上げるような高さがあった。


軍人の帰還なので、あっさりと門を通る事が出来て、俺の取り調べもなかった。


それは門を通ると、まっすぐに軍の施設に連れていかれて、違う軍人に引き渡された。


「こいつが、村から引き取ってきた奴です」と敬礼しながら俺を前面に出す軍人。


「そうか、わかった、もう、行っていいぞ、あとで報告を書いておけ」


「はい、わかりました」と言って軍人は、どこかに行ってしまった。


「おーい、軍曹を呼べ」と受付をした人が言う。


はい、わかりました」と言う声。


しばらくして新たにきた軍人が俺を連れていく。


この人は軍曹と呼ばれた人だと思う。


「おい、今日から、ここがお前の休む場所だ、まあ、物置だがな」


軍曹が扉を開けたので、中をみると、掃除道具が入っている。


軍曹が「いいか、よく聞けよ、この道具で、食堂の床を掃除するんだ、しかも、それだけじゃないぞ、水汲み、洗濯、修練場の草取り、掃除、石拾い、なんかも、お前の仕事だ。そしてあそこも、あそこも、キレイにしておくんだぞ。つまり、お前は雑用係だ」とあちらこちらを指さし説明する。


「わかったか?」


「………」


「返事をしろ」と、一気に吹っ飛ぶように殴られた。


ガラガラ、ガシャ


「いいか、軍隊は規律を重んじる場所だ、お前は軍人ではないが、規律には従ってもらう、その基本が返事だ、いいな、わかったな」


「………はい」と口が切れて痛みがあったが、もう、これ以上、殴られたくない………


「では、今日からやってもらおう」と言うと俺は返事を慌てて返した。


「はい」


「よし、良い返事だ」と言うと、どこかに行こうとして振り返り、


「お前の食事だが、みんなが食べ終わった後だ」


「はい」


「つまりみんなが食べ残さなかったら、お前の分はない‥ということだ」


「‥‥‥はい」


「いいな、お前は軍に売られたんだ、それだけの働きをしなければならない、俺も協力できるのは、ここまでだ、まぁ、しっかり頑張ってくれ」


「はい」と答えて案内してくれた人は立ち去った。


俺は、小屋の中を見るが、いままで、こんなことをしたことがない。


小屋の中には匂うような汚い毛布が一枚だけ置いてあった。


***


俺は八歳になって、もうすぐ九歳だが、まだ自分で食っていくことはできない年齢だ。


そして、俺は、今まで両親とともに生活していたから、どうやって、それが実現することができるのか、わかっていないし………考えてもいない。


ただ目の前にあることをやる事しか、考えられない。


今は実際に軍に雇われている訳ではないけど、囚われの身だ。


軍の施設から出ることは許されない。


脱走しても、行くところはない。


もう、あの家にも戻る事もできない……リサに会うこともできない………戻り方もわからない………


自分って、どうなるんだろう?


そう思っていると、先ほどの人が戻ってきて「こらっ、さっとさっと、掃除しねえか」と怒鳴ってきた。


俺は、怒った大きな声にビクッとさせて、その人を見た。


「お前な、お前は売られて、ここに来たんだ、もう家族の元に戻れねえし、お前が働かないと俺が、怒られるんだよ。さっさと、あそこから掃除しろ」と指さす。


軍曹が、掃除箱から、ほうきを取り出し、俺に渡す。


「おまえ、掃除の仕方、知ってんのか??」


「………いいえ」


「はぁ~~~~」


「いいか、ちょっと、こっちに来い」と軍曹がほうきを持って歩いていくので俺もついていく。


「いいか? こうやって、ゴミを履いて集めていくんだ、そして集まったゴミを、これで取って」また、歩いていく、「ここに捨てるんだ」


「いいか、わかったか?」 返事しろ」


「はい」


「じゃ、任せたからな」


俺の担当になったせいで、軍曹はブツブツ文句を言っていたが、俺には、それでも優しく思えるところもあった。


徐々に、軍での暮らしが長くなると、色々なことに慣れてきた。


しかし、慣れてきても、俺の生活が変わる訳じゃない。


寝るのは、掃除用具の置き場で、臭うような場所で隙間風が吹いている。


夜でも、時々、大声で軍人が通り過ぎて起こされる。


そして軍の人でも、色々な人がいて、俺をいじめる人もいた。


****


「ぎゃっ、ははっ」


俺が食堂をモップで掃除をしていると、騒がしい数人がいる。


チラッと、その人たちをみると、粗暴な感じがする。


何かと俺に、ちょっかいをかけてきて、俺に暴力をふるう。


今日も、ここを掃除するために、奴らがいたところから、モップをかけ始める。


しかし、いつまでたっても、他に行かない。


俺は、心の中でどこかに行けばいいのに、って思ってチラッと見ると、俺と目が合う奴がいた。


「おや~、掃除している奴がいるぞ~」と言いながら立ち上がって俺の方に来た。


「これは、これは、掃除人様、ご苦労なことですな」と、大げさに体を揺らしながら言う。


俺も、少しは慣れたもので、「ありがとうございます」と頭を下げた。


その頭を下げたところに、奴は膝蹴りをくらわした。


ドガッっと変な音がして、俺は、転倒した。


倒れたあと鼻血が出てきた。


「おい、おい、まずいぞ」といいながら、、その数人は去って行った。


その様子を遠くから見ていた、他の人たちが駆け寄って俺を助けてくれた。


「すいません、ありがとうございます」


「それにしても、酷いね」


「いつもですから」


「それにしても、酷いよ」と軍には女性もいる。


その人の恰好をみると、帽子をかぶって、他の人とは違う服で、横には棒が置いてある。


「あの」


「ん? どうした?」


「あの棒は、なんですか?」


「ああっ、君は、これに興味が出たのかい?」


俺はうなずく。


「これはね、魔法を使うために必要なものさ」


「まほう?」


「ああ、そうさ、君は見たことがないのかい?」


俺は頷く。


「そうか、そうか」と機嫌が良さそうに笑う。


「いいかい、ここには剣で戦う奴らもいるが、私みたいに魔法で後方から援護する者もいる」


「へ~、そうなんですね」


「君も魔法が使えたらエリートになれるぞ」


「そうなんですか?」


「ああ、剣を使う奴らと違って、我々、魔法師部隊はエリートだからな。君も魔法が使えたら、私たちの仲間になれるぞ」


「ほんとうですか?」と俺は、声を大きくする。


「ああっ、ほんとうだぞ、いいか、魔法を使える奴と、そうではない奴がいる。魔法を使えない奴は、永久に魔法を使うことができない。だから剣で戦うんだ」


「魔法を使うことができれば、魔法師になれるんですね」


「そうだが、難しいぞ、簡単ではない、そしてこれだけの人数の軍人がいて、魔法使いがエリートだと言うには訳がある」


「そ、それは?」


「使える人が少ないからだ」


「魔法が使える人が少ない………」


「そうだ、いいかい、魔法を見たことはあるかい?」


「いいえ………」


「じゃ、少し見せてやろう」と言うと、その女性は、手を出して、手のひらを上にした。


「炎の聖霊よ、我は魔法を行使する者、いざ、炎魔法を具現化しろ」と言うと手の平に火が出現した。


「うわっ、キレイな火ですね」と言うと、その女性は顔を赤くした。


「おほん、ほめても何も出んぞ」


「え~と」と俺も女性をまねて、手の平を上にして「炎の………あれっ、なんだっけ?」と言うと、手のひらから炎が出現した。


「うわっ、熱い………あれっ、熱くない」


「き、君は、何なんだ?」


「えっ、何がですが?」


「君はさっき、魔法を見たこともないって言っていただろう」


「あっ、それは、以前、使ったものが魔法だと思っていなかった…から……です」


思い出してしまった。最近は忙しくて、思い出していなかったことを。


つらい両親の記憶を………


俺の気持ちが沈んでいく。


急に顔が暗くなった俺に女性は「どうしたんだ?」と聞いてきた。


「いえ、村でのことを思い出して」


「そうか、そうか、人はな、つらい思い出があるから強くいなるんだ。君もつらい思い出があるから、強くなれるぞ」


「ほんとうですか?」


「ああ、保証する」と言って、女性はウィンクをして去って行った。


*******


俺が洗濯物を洗うため井戸にいくと、いつもの軍人がいた。


「おいアル、シカトしてんじゃねえぞ」


「なんとか言えよ、えっ、アルよ」


「なんだか、こいつみていると殴りたくなるな」


「おいおい、顔はやめておけよ」


「わかっているよ」


「おりゃ〜」と言いながら、俺は腹を殴られたり、蹴られたりした。


「はぁ、これでスッキリした」


「おい、行こうぜ」


俺は散らばった洗濯物を集めて、お腹の痛みを手で抑える。


「いててっ」しばらくは洗濯物を集めても動けなかった。


俺は痛む腹を抑えながら、洗濯をしないと次の雑用が待っている。


******


俺が唯一、気を抜くことができるのは俺が寝泊まりする小屋だけだ、それは掃除道具が入れてある俺の寝泊まりする小屋だ。


小屋は、もちろんベットなんかない。


軍は、俺に衣食住があるからといってお金をくれることもない。


本当の住み込みで、提供してもらえるだけありがたいと思えと、よく言われる。


まぁ、世の中には、 浮浪者などの孤児もいるので雨がしのげるだけ良いのかもわからない。


逆に俺は、これでも良い方だと、考えると気持ちが少しだけ楽になる。


俺が着ている服も、もちろん廃棄される寸前の服を着ている。


あちらこちら、破れたり、ボタンは取れたり、引きちぎられたりしているけど、大きな穴が空いている服もある。


それらをもらって捨てないで、冬は毛布代わりにしている。


また、ぼろ布を下にひくと、少し寝やすくなるから。


それらをもらえるだけでも、良しと思わないと、やっていけない。


俺は普段は、掃除や洗濯を主にしているけど、洗濯なんて、一日かかっても終わらない。


洗濯するものは、軍服は専門の業者がいるから良いけど、シャツやパンツを洗うのが、俺の仕事。


またタオルなんかも俺が洗っているけど、夏は良いけど冬は水が冷たくてたまらない。


井戸水を使うけど、冷たくて手が凍えて動きが悪くなってしまう。


しっかり洗わないと、殴られるし、本当、軍から抜け出したい。


でも食べ物は残り物をもらえるから、食べることには良いと思わなければ。


毎日のトイレ掃除、軍人が寝る部屋の掃除なども俺の仕事になることもある。


他に用事を言われて、それをしているとサボっていると思われて殴られる。


それを言うと『言い訳するな』って言われる。


本当のことを言っても、殴る奴は決まっている。



俺がいるところは軍だから、簡単な魔法を練習場でしているけど、時々は、練習を見ることはできた。


全員が剣で戦う練習をしたり、魔法師が魔法を使う練習を見る機会もあった。


魔法師が、魔法の練習は、炎の魔法をして、的に当てる練習をしているのを、よく見る機会があったけど、手の上に火を出して、的に当てることを正確にできるか、そして威力。


*****


しばらくして、俺のところに、以前、助けてもらった魔法師の女性が、俺が掃除している所にやってきた。


「あっ、こんなところにいた」と言うと俺に近づいてきた。


「えっと、君の名前は何だったか?」


「あっ、はい、あの時はありがとうございました、アルベルトっていいます」


「うん、間違いないな」と、うんうんと頷いている。


「君のことを調べるのに時間がかかってしまった、と女性は言う。


「えっ?」


「君の、この紙を渡すから、あと一時間くらいたったら、書いている場所に行ってくれ、字は読めるか?」


「あっ、はい、読めます」


「そうか、そうか、それならいい」と俺の背中をバシバシ叩いてくる。


「仕事があるんですが?」


「そんなことは、もうしなくて良いから、いいか、一時間後に、書いてある場所に行くんだ、わかったな」


「あっ、はい、わかりました」


「よし、よし」とまた背中を叩いてくる。


「じゃあな」と言って手を振りながらニコニコ顔で去って行った。


取り残された俺は、意味が分からず、仕事も多いのに、ちょっとムッときた。


それでも助けてくれたお姉さんが言うことを無視はできない。


いつもより、掃除を手早く片付けていく。


今日は、あいつらはいないみたいだ。





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お読みくださりありがとうございます。


ブックマーク、ハートマーク、星マーク、評価も、感想も、ほんとうにありがとうございます。


本当に多くの方の支援には心より感謝しております。

そして、何よりも小説を書くための励みになっています。


誤字脱字がありましたらお知らせください、すぐに訂正を行っています。


また意味不明な文章があることもありますが、なにぶん素人が書いている文章です。お知らせくだされば、訂正しています。


クリスとアリシアの物語をお楽しみください。

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