第401話 ボールドウィン王国、その後

俺は神がおかしくなることもあると思うし、そうじゃなければ俺を勇者にしたのは、誰なんだと言う思いもある。


この世界には最高神が3人いる。


一人は創造神ナサニエル、もう一人は宇宙神アラスター、そして、もう一人は生命の神クリスティアナ。


宇宙神アラスターが宇宙を維持し、その中で創造神ナサニエルが星を作り、生命の神クリスティアナが生命を与える。


ということを考えれば、俺を勇者にしたのは生命の神クリスティアナと言うことになる。


まぁ神だから、ちょっかいは出すこともあるだろう。


でも生命の神クリスティアナが、人や草や花や木や魔物に生命を与える神なら、俺を勇者にしたのはクリスティアナと考えるのが妥当だろう。


3人の神が仲が悪いのか?


俺が考えているのは、真偽性はないけど、創造神ナサニエルが、どこかおかしくなってきているんじゃないのか、ということだ。


創造神ナサニエルが、神でも精神を病んできてウルフと結託して、悪いことをやり始めたから、クリスティアナが俺を勇者にしたてあげた、なんてことを考えたけど、これじゃ、空想小説になってしまう。


実際にはわからないわけだから、考えてもしょうがないし、目先のことだけ、注目しよう。


とにかく、あのタールのようにドス黒いオーラの魔力が正常ではないことは、考えなくてもわかる。


ドス黒いオーラは、体の異常か精神の異常でしか、発することができないものだから。


普通なら、あんな黒いオーラが出てくることがないと思うし、もし出てくるような人がいたら、正常じゃないし、眠れることなんてないから、


人の体は、落とせば、落とすほど限界はなく、落ちていく。


精神を司る大脳が異常になれば、当然、体も正常でいられるわけはない。


そんな黒いオーラを体から発する奴が、正しい行いをするとも思えない。


悪いことをすればするほど、自分自身が破滅していくし、多少、顔が良くて女性が近寄ってきても、優しい性格でいられるかというと、それはない。


俺は魔力が強くなってから、人の生きていく『気』を見ようとすると見えてしまうが、多くの人の気(オーラ)は薄〜い黄色をしている。


しかしメンバーの気を見ると、その黄色がよりハッキリしているし、輝いている。


それを維持するだけも、病気になりにくい。


自分が持つ『気』というのは、大切なものだけど、普通の人は見えることもなく普段の生活をしている。


それを見ようとも、感じようともしないで。


何事も努力しない限りは、見えもしないし、わかることもない。


でも努力しても、努力しても、そんなに簡単に見えもしないし、わかりもしない。


と言っても努力の仕方が悪いとか、足りないと思うと思うけど、できないことを、そのまましたってできるようにはならない。


物を見る時には、いろいろな面から見ることが必要だから、同じことをしても、わかるレベルにはいかないだろう。


俺もわからない時は、あまり、そのことについて考えないようにしている。


もちろん忘れているわけじゃくて、そうするといつの間にか、それがわかるしできるようになっているから、わからなければ、今は、その時じゃないんだと思うようにしている。


前世の俺は、両親からも捨てられて辛い思いをしたけし、軍に入っても、殴られたり蹴られたりする毎日で、冬は隙間風が入るよな小屋だし、恨みに思っていたけど、俺は、俺に固執しなかったから、よかったと思う。


もし固執してしまったら、また、違う人生があったと思うけど‥‥‥心残りなのは、ライラのことだけ、あの優しかった眼差しを今でも、俺は覚えている。


クリスの中に生き続けて、統合された精神が、思い出すのは、ライラのことだけ。


ライラ‥‥‥



俺は最近の傾向から、ウルフたちが大規模なことを陰でやっていると考えている、そのための揺動じゃないだろうか?


じゃ、何をしているのか?


そこがわからない。


以前に俺の夢の中に出てきた声だけの奴のことがあるけど、最近は、聞こえてこない。


夢の中の声の奴は、空間のことを言っていたよな。


空間か、久しぶりに考えてみるか?


俺は作った空間と、魔法陣を展開してできる空間と、もう一つ、勇者のパワーを使いながら作ることができる空間。


どれも同じようで、違うもの‥‥‥


俺は、この空間にヒントがあるような気がするんだけど‥‥‥


本当に空間というのは簡単なようで難しい。


ひとまず自分だけで考えるのは、やめて、みんなの意見を聞いてみることにした。


俺が考えているのをやめて、顔を上げると、全員が俺の顔をみていた。


俺はドキッとして「えっ、なに?」と聞いてしまった。


アリシアが「クリスって、すごいなと思ってさ」


「俺が‥‥‥」


アリシア「うん、そう、クリスって、行動する時と、そうやって考えことをしている時には、集中しているから、何も耳に入らないんだろうなって思って」


「う、うん、まあね」


セラフィーナ「でも、クリス様が、何かに集中している時って、素敵な顔していますね」


シャーロット「あっ、そう、そう、私も思っていたのよ、格好いいなって」


ソフィア「実は、私も、いいなと‥‥‥」


イザベラ「あっ、もう、私もなのに‥‥‥」


コリンが陰で手を上げて「私も〜」と言っている。


「みんなクリスのことが好きなんだね、あ〜ぁ、昔、村にいた時から、私だけがクリスのことを好きっだったのにな」


シャーロット「しようがないですよ、アリシア、クリス様は、もう勇者物語に出てくる人ですよ、あっ、そういえば、耳にしたんですけど、勇者物語が人気がありすぎてお芝居になるそうですよ。

それも王国が経営している由緒ある劇場であるそうです」


アリシア「キャ〜、それ本当? みんなで、ぜひ見に行こうよ」


シャーロット「はい、私も見に行きたいです」


「私も行きたい」とエイミー

「私も」とアレク

「私も見にいく」とアデル

「私も行こうかな」とアイリス


ジャネット「時間ができたら、みんなで行きましょうよ」

「うん」

「うん、賛成」


という感じに収まった。


なんだか、嫌だな〜

俺はいかないよ。

誰が演じるか知らないけど‥‥‥


「そ、それよりもみんな、聞きたいけど」全員が俺の方を見ている。


「空間のことだけど、俺が作る普段、利用している空間と、別次元の空間についてなんだ」


「クリス、それは無理?」アリシア


「えっ、無理?」


「そう無理、神獣たちならいいと思うけど、私たちは参考にならないわよ、難しすぎるわよ」


「そう? まぁ、聞くだけ聞いてよ」


「しょうがないな」


「じゃ、コーヒー入れ直すね」と言ってアリシアが立ち上がる。


「あっ、手伝います」とセラフィーナ


しばらく待っていると、いい匂いが部屋を満たしてきた。


目の前にはサンドイッチとクッキーが並ぶ。


全員にコーヒーとテーブルの中央に大皿に入れたサンドイッチとクッキーが並べられる。


全員でサンドイッチを食べながら、「食べながらでいいから聞いてね」と俺が言う。


「うん、わかった」とアリシアが、サンドイッチをモグモグ。


「空間というのは大まかに分けて3つあると考えている。

一つは、いつも使っている空間ね。

そしてもう一つは、魔法陣を利用して作ることができる空間ね

さらにもう一つは、勇者のパワーで作られる空間ね。

この3つだと思うんだ」


俺が空間の話をしている時に、誰かが『カリッ」とクッキーを感じる音が響いた。


もうサンドイッチはないみたいで、クッキーに手を出したのは、アイリスだった。


「それで、この3つの空間‥‥‥」と説明していると、また、「カリッ」と音がする。


それで、音がする方を見ると、今度はアデルだった。


俺が見るとアデルは齧るのを止めて、俺を目を合わせる。


「この空間が、3つあることに注目している‥‥」と話していると、また「カリッ」と音がして集中できない。


今度もアデルが2枚目のクッキーを齧っていた。


それを見た俺は、黙っているとアデルが、クッキーを大急ぎで食べ始める。


「カリッカリッ」と次のクッキーまで食べ始めて口に2枚、3枚と頬張っている。


よっぽどお腹が減っているのか、クッキーがどんどん、なくなっていく。


全員がアデルの方を見ている。


食べ終わったアデルが俺に向かって、「美味しいですよ、どうぞ」と言って、最後の一枚、残ったクーキーを俺に差し出した。


もう話、進まないよ


と思いながら差し出されたクッキーをとって食べてみたら、「あっ、美味しい」と声に出てしまった。

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