第367話 対抗魔法3
地下で研究しようとしたら、お客が、次々、訪れてくる。
イザベラがきて、コリンが来て、今はアリシアが部屋を訪れている。
守るために作ったペンダントが、現実味を帯びてくるとは考えてもなかった。
「クリスってさ、村にいた時と、ずいぶん、変わったね」とアリシアは座らずに部屋の中をウロウロしながら話している。
「‥‥‥そう?、俺は自分では、外見が、あまり変わったとは思わないけど」
「昔はさ、私の後から走ってくることが多かったからさぁ、木に登るのも私の方が早かったし」
「それはアリシアが、お転婆だったからだろ」
「あっ、ひど〜い
でも、あのクリスが、ここまで身長も高くなるなんて、思わなかったよ」
「そうだね、俺の身長は魔法の力の向上で急に伸びたからね」
「うん、修行で帰ってきた時には、私もだけど、みんなもびっくりしていたよ。
だって、たったの1ヶ月で20センチも伸びるなんて人間じゃないねって思ったよ」
「実際に、その魔法力が上がったことで、今の俺があるんじゃないかと思う」
「でも以前、一人で1ヶ月間も帰ってこなかったことがあったでしょ?」
「あっ、戦争を止めに行っていた時だね。
俺は、きつかったね」
「クリスでも、そうなんだ」
「うん、だって目を離すことなんてできなかったからね」
「統率が取れている正規軍だったら、良かったけど、そうじゃない奴もいたからね」
「それで目を離すことができなかったということ?」
「うん、そうだよ。
だって、そいつらは、村を襲ったり、金品を強奪したり、暴力を振るったり、殺したり、女性を暴行したりすることがあるから、全部の人を見張ることをしないといけないからね」
「本当に大変なことだったわね」
「うん、そうだね」
「でも、やっと帰ってこれたら、アリシアの部屋に瞬間転移してしまって、アリシアから臭いって言われて、俺、かなりショックだったよ」
「あっ、ごめんね、でも、本当にクリス、臭かったんだもん」
「まぁ、俺も目を離すことができなくて、風呂も入ることができなかったからね、シャンプーの匂いをさせるわけにもいかないからね。
見張っている奴らと同じ匂いじゃないとダメだったらから」
「あっ、そうか、そうだよね、ごめんね、あの時は‥‥‥」
「もう、いいよ、アリシア」
「本当にクリスったら、一生懸命だね、私の知らない所でも」
「うん、まあね、勇者みたいに、なんでもできるチートがあれば乗り越えることもできるだろうけど、俺は違うからね」
「えっ、クリスも勇者じゃない」
「うん、俺は勇者というのは称号だと思っているから、勇者だからと思い上がるのは違うと思っているから」
「へー」
「それだけ、努力した人に、つく称号だと思っているんだ」
「うん、クリスに、ピッタリだね」
「いいや、アリシア、違うよ」
「えっ、何が違うの」
「俺は、今でも勇者だとは思っていないよ」
「もっと、もっと、努力しなければなれない称号だと思うから、勇者の称号がついていても、ついているだけ、それだけだと思っているから、勇者と言っても新米だよ。
俺が王国の書物で見つけた書物には、なんでもできる勇者だ乗っていたんだよ。
ドラゴンが出てくれば、一撃で撃退したりする勇者がね」
「へー」
「俺は、その勇者に憧れたけど、俺とは違うよね、違うすぎるよ。
憧れだから簡単には、なれないのはわかっているから、努力しているけどね」
「ううん、私たちは、思っているのは、違うよ、クリスは、空想の勇者のことに憧れているだけだよ。
空想なら、本当に、格好悪いことは書かないよ。
ヒーローであって欲しいもの。
でも、ここにいるクリスは、私たちが知っている人なんだよ。
その人が、私たちが寝ている間も、寝ずに努力していることはみんな、知っているよ。
努力をしている人を、笑うのは、、知っていない証拠だよ。
知っていれば、自分ができるか、考えてみたらいいんだよ。
クリスは戦争が起きないように国同志を結びつけているじゃない、今、それが、もっと強固になろうとしている。
それが事実だと思うよ、私は。
そんなことを、誰が考えようともせず、やり遂げることができるっていうの?
この大陸にある国の、ほぼ、全部が、クリスの動きを見ているわ」
「俺の動きを?」
「クリスは、それだけ、有名になりすぎたわけだけど、今でも信じられないわね、昔は、私のあとをついてくるだけだったクリスが、今では、こんな格好の良い人になっているなんて」
「‥‥‥」
アリシアは、俺の横に座った。
「セラフィーナやシャーロットから聞いたんだけどね、国交の話に参加したいって言う国が多くあるんだって」
「えっ、そうなの」
「うん、全部はコリンのおかげね」
「へー、コリンのって、まさか本?」
「当たり
コリンの本はね、爆発的に売れているそうよ。
問い合わせが多くて重版が間に合わないってシャーロットとセラフィーナが言っていたわよ。
別に二人が作っているわけじゃないけど、連絡が来るんだって、もっと重版したいけど、どうすれば良いかって言う問い合わせが‥‥‥」
「へー、そうなんだ」
「だってメンバーの中に勇者物語の作者がいるんだよ。
勇者物語の作者って言ったら、もう有名人よ。
サイン会を開いて欲しいって言われているらしいんだけど、相変わらずコリンって、あまり話さないし、忙しいって逃げている見たいね」
「へー、そうなんだ」
「実際、コリンは文書の作成がうまいから、すごく役に立っているのよね
聞いた話じゃなく、現場にいるから、わかる臨終感がコリンが人気の意味みたい。
「まぁ、実際に近くにいるからね。
コリンほど、実体験はないと思うね」
「本当に」
「その本がね、この国だけじゃなく、他の国にも流れているらしいの」
「へー」
「オーリス王国でしょ、ダイラス連邦、ブラッドフォード大公国、ライオネル公国、リッチェスト国、オズワルド王国だけじゃないのよ」
「へーそうなんだ」
「近くの大小の国にもファンがいっぱいいるんだって」
すごいな、コリン。
「コリンって、あまり話さないから、その分、しっかり見ているみたいよ。
勇者物語に、実名で出ているクリスも、そうだけど、私も、実名なのよね」
「えっ、そうなの?」
「うん、そうみたい。
しかも、容姿も書いてあって、挿絵もあるみたいね」
「えっ、挿絵もあるの?」
「うん、それがね、クリスに、本当に似ているのよ」
「だから、クリス、国以外でも、注意した方がいいと思うわよ」
「唯一、知られていないのは作者の顔だけなんだから」
「あっ、その辺は、しっかりしているんだ」
「本当にね」
「だから、謎の作者になっているらしいわよ。
勇者物語、作者、コリン、だけど、顔は不明って新聞に乗っていたから」
書く対象者が近くにいるから絵も上手だしね、そっくりだから、今度、本を持ってくるから、見てみてね。
でも、コリン、本をすぐに隠すのよ」
「へー、そうなんだ」
「うん、なんだか、自分が書いた本は恥ずかしいんだって」
「人のことは書いておきながら?」
「そうだよね」
「今度、見てみてよ、クリス」と言ってアリシアは俺に顔を近づけて、頬にチュッとして部屋を後にした。
へ〜、あのコリンがね〜、有名小説家なんだ!
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