ライラを思う

あの事件があったあと、俺はちょっとした有名人になっていることに気が付いた。


ライラのあとをついて歩いている時に、良く声をかけられる。


あの事件から侍女のアマンダとも少しだけ仲が良くなった思う。


ライラ姫暗殺事件は、瞬く間に王国中に知れ渡る。


たぶん、服装や持ち物から、隣国の者だろうと言うことだが、それだけでは決定的な証拠とは言えない。


俺はいつでも、どこでも、ライラの後ろに控えて行動していることが当たり前になってしまった。


あの事件以来、俺は近衛隊の中でも昇進した。


軍では少尉だったが、二階級も特進して大尉になってしまった。


つまり、ローリー大尉と同じだが、最近は会えていない。


そんな中、ライラが俺に話してくれたことがあった。


実はライラには、隣国のスタンリー王国からライラを側室に欲しいと言って来たそうだ、それをライラたち王族は断ったそうだ、


それは当然だと思うけど、自分の国の可愛い姫を50すぎのおっさんの側室に欲しいと言われて、はい、そうですか、とは言えない。


しかも正室が5人、側室が10人以上いるそうだから、ふざけんなって俺も思った。


ライラたちは、評判の良くない隣国の王からの誘いを断った。


どうも、そのことが王のメンツをつぶしたと、怒っているらしい。


だから、また、狙われることもある。


普通だったら姫を狙うよりも、皇太子や王を狙った方が良いと思われるが、メンツをつぶさた敵はライラのことを暗殺しようとしたか、無理やりにでも連れだそうと暗躍したみたい。


もし、これでライラが連れ去られていたら、こちらのメンツが丸つぶれ。


たぶん、秘密裏に連れさられたライラが、公にでることはない。


地下牢に閉じ込められて一生を送るしかない。


普通に地下牢に捕らえられているなら、まだしも、鞭打たれたり、性奴隷としての生活が待っている。


そんな奴の元に、かわいいライラをやる訳にはいかない。


*****


今は、ガルシア帝国が、隣のスタンリー王国に戦争を仕掛けている。


攻め込まれているスタンリー王国とは、あまり、国交はないから、救援はしないそうだ。


国と国のことは、非常に微妙な関係がある。


スタンリー王国に手を貸すと、俺たちの国も危うくなる。


問題はガルシア帝国………


ガルシア帝国は、スタンリー王国を手中にすると、俺たちの国にまで侵略してきた。


******


ある時、ライラが王女として視察にいく話があった。


一度、狙われているライラは、行きたくないと反対したが、王族としての務めを果たす必要がある。


そのため、無理やりにでも、王都から離れた侯爵の領地を訪れることになった。


侯爵の領地にいく朝から、ライラの護衛として、俺はライラと馬車にのっている。


ライラと俺、そして侍女たち3人と、近衛騎士隊の8人と、兵士10人、下男を5人。


ちょうど、数えてみると、28人いる。


いざと言う時にはライラを主に守るのは近衛騎士が専門、賊に主にあたるのは兵士の役目………


下男たちは、荷物の積み下ろし、テントの設営、食事の用意だ。


食事は侍女の3人が分担してやる。


28人もいるので、結構、多いと思う。


普通なら、国の中なので、半分の人数で行くらしいが、今回は、あの事件の後なので、人数が多い。


王都を朝に出発して、途中の宿場町に着いた。


その途中には、何事もなかった。


宿場町の門を通る時に、連絡が行っていたみたいで、すぐに馬車の列は、門を通り抜けることができた。


そして、宿場町を管理している文官のところに泊まることになる。


俺たちは、街で一番、大きな建物の前に馬車を止める。


兵士や近衛隊の騎士が、先に馬を降りる。


周りを警戒して、他の馬車から降りた侍女が、ライラの乗っている馬車の扉を開ける。


俺は馬車が止まった時点で索敵魔法を開始。


そして俺が先に馬車から降りる。


侍女がライラに手を貸しながら降りてくる。


もちろん、馬車が到着していたときに、管理の文官は並んでいる。


「遠いところをはるばる、このような小さな町に、ようこそ、ライラ王女さま」


「ええ、お気遣いありがとうございます」


「では、どうぞ、ご案内いたします」と文官


ライラは侍女に手を取られ、屋敷の中に入っていく。


屋敷の中に入るのは、俺と侍女さん3人と、近衛隊の4人だけ、あとは近くの宿屋に泊まる事になる。


簡単な挨拶のあと、俺たちは部屋に案内された。


ライラは最上階の角の部屋で、次の間には侍女たち3人が泊まる。


俺はライラの向かいの部屋、そして近衛騎士たち四人も俺の横の部屋に二人ずつ。


対面の部屋でいた方が、対応しやすいからだ。


つまり、窓から入らない限り、俺たちの部屋の前を通る事になる。


俺はライラ専属の護衛なので、ライラの部屋の前に一人で泊まる。


あの事件があってから、ライラを守ったと言うことで、二階級特進しているので、もう、大尉だから。


この馬車列の中でも最上級士官になっているが、これもライラの意向が働いている予想がする。


俺は、ライラの警護に付けないときは、剣の訓練もしているし、魔法の勉強もしている。


ライラの警護に付けない、今は、入浴時間だ。


入浴には、直に警護できないが、監視は怠っていない。


しけし、髪が長いのもあるが、洗ったり、乾かすのに2時間以上、かかっているから、それだけ時間が空いてしまうから、でも、そこを狙われることもあるし、手伝っている侍女たちが襲わないとも限らない。


この日は食事会もあったが、何事もなく、夜を迎えた。


俺が自分の部屋で、ライラの周りを監視している。


ライラの部屋に近づこうとする奴などを監視している。


そして俺たちが泊まっている屋敷を見ている奴などを………しかし今のところ異常なし。


俺は寝るときも、監視する必要があり、油断できない状態で起きていることも必要だが、ライラの警護になって、新たに魔法を作った。


誰かがライラの近くに行くこと、又は俺たちが泊まっている屋敷を監視している奴がいれば、俺の頭に警報がなるように。


俺が寝るために、ベットに入る前にライラのことを検索したら、もう寝てしまったみたい………久しぶりの馬車の旅で疲れたみたい。


ライラは、もうグッスリだ。


ライラは、この屋敷に到着しても、ドレスの着替えとか、入浴とかで時間を消費している。


屋敷では話す時間もなかった。


俺も初めてで勝手がわからないからライラに任せるしかない。


なに事もなく朝を向かえ食事を済ませて、見送られて宿場街を出た。


こんな豪勢な馬車なら、それ相応の人が乗っていることはバレバレ。


まぁ、お忍びじゃなく、公式な訪問だからしょうがない。


検索魔法を馬車の中でやっていると魔物が現れた。


まだ、遠いが、備える必要がある


俺は馬車の窓を開けて、「魔物が接近中、止まれ」と言う。


馬車は、ライラの乗っている馬車を中心に囲うように配置される。


何があってもライラを守る………そのことを俺は考えている。


兵士、近衛隊の騎士、下男たちが散らばる。


下男も剣くらいは、持っている。


自分の身を守りながらライラを守る必要がある。


護衛が少なくなると、道中にライラにも危険が及ぶ可能性もあるからだ。


馬車が配置についた時には、もう百メートルの位置にいる。


奴らは、オークの集団。


少なくとも8体のオークがいる。


顔は豚を連想させ、人型だが、人よりも大きい。


俺の村で、両親と丘で食事をしていた時の奴とは、違う。


あのオークは、全身が毛むくじゃらだった。


しかも、こいつらよりも大きかった。


俺は時々、冒険者ギルドにもいき、色々な資料を見せてもらったりしているうちに、冒険者になってしまった。


しかも、近衛隊の大尉と言うことでCランク以上ということで、俺はBランク………


Bランク冒険者になる時に、剣でも魔法でも使えると言って、なったのがBランク。


その時に試験があった。


俺は相手をしてくれた試験官を剣でも魔法でも一瞬のうちに、倒してしまった。


ライラの慰問が決まったときに、できるだけ経験を積んでおきたかった。


しかし、冒険者になった、その時点で、本では知っていても経験がないことから、Bランク冒険者として依頼を受けて魔物討伐を数回だが、こなしている。


あとは本で、こういう時は、どうすれば良いのか、本で読んだ。


オークの群れの八体を倒すしかない。


俺はローリー大尉と練習した結界を使うことにした。


俺は結界を張るためにイメージをしている、ライラだけじゃなく、ライラを守る人までケガを負うことがないように………


俺は馬車の周りに展開して剣を構えている騎士や兵士、下男たちの外側まで結界で覆った。

観察してみると、オークたちは、手に何も持っていない奴と、こん棒を持って振り上げている奴とボロボロの剣を持っている奴がいる。


ぶおーっ、とか、ブヒィとか、言葉じゃ表せないことを言っているオークたち。


見ている間に、もう前線の兵士の前まできているオークたち。


オークの一体が、剣を振り上げて兵士に、すばやく振り下ろされる。


兵士が剣で受け止めようと、剣を横にして構えて、殺されると思い、目をつぶる兵士。


「ガンッ」とひときわ大きな音。


オークに攻撃された兵士は、何も起きないことを不思議に思い、恐る恐る目を開ける。


オークは、なにか固い物に当たったようにしびれているような感じ。


わぁーと兵士は、後ろに下がって体制を立て直そうとするが、オークたちは、ある一線から入って来ようとしない。


なんだ?


兵士が、恐々近づいていくと、何かがある事がわかる。


触ってみて「これは………?」と言って、他の兵士や騎士たちを見ている。


それをわかる者はいない………


俺は一人として兵士や騎士を失う訳にはいかないから、後方の馬車の近くから結界を張った。


馬車列の囲いを通り抜け、前線にでてくる。


俺が前線にでると、全員の目が俺に集まる。


一人の年長の近衛騎士が「あの、これは、隊長が?」と結界を指さしながら聞いてくる。


「ああ、そうだが?」


「うわっ~」

「助かった」

「さすがだよ」

「隊長さま、さまだな」などの声。


「こらっ、お前ら、まだ、終わった訳じゃないぞ」


「はい、申し訳ありません」と、なぜか、顔はニコニコ顔。


全員が、これだけのオークの数に無傷じゃすまないと思っていたから。


誰かが犠牲になる事を考えたか兵士もいたが、全員が死亡と言うことも考えられる。


オークたちは、結界の周りに散って、結界を攻撃している。


さあ、ここから、どうするか?


周りはオークだらけ………


この中で、冒険者になっているのは、俺だけ………


俺もオーク数体なら、討伐可能だと思うが、二倍のオークがいる。


どうする?


俺は、オークが攻撃している所を見ている。


あっ、そうだ、全員が、こちらを向いている。


なので俺だけが、転移で結界の外に出る。


もちろん、出るのは、オークの背後、オークの後ろに出た途端、動き出し背後からオークに切りかかる。


二体のオークが、俺の横殴りの剣で、真っ二つになる。


あと6体。


俺は、近くにいるオークたちの、また背後に転移する、そして今度は、ファイヤーボールを無詠唱で発射。


三体のオークが、燃え上がる。


えっ? 俺の魔法って、ここまで強いの?


でも、そこに残った三体のオークが俺の方に突進してくる。


手には剣を持つ奴が一体とこん棒を持っている奴が二体。


俺は、三体のオークに、風の魔法を準備………威力を増すために、一秒、待って風魔法を、強化魔法で鋭利にする。


これもローリー大尉との特訓の成果。


風の魔法が、すごい回転していることで真空を生み出して発射された。


向かってきたオークの三体は、風の魔法のウィンドカッターで切り裂かれていく。


俺は、死体となったオーク八体を異空間に瞬時に入れた。


「………」

「あれっ?」

「どこに行った?」


「さぁ、出発するぞ」


それでも動き出さない騎士、兵士たち………


「どうした? 急ぐぞ」と、もう一度、命令。


俺が馬車に乗り込もうと足をかけていると、一人の騎士がやってきた。


「???………どうした?」


「いえ、隊長、ありがとうございました」と頭を下げた。


「………………」去っていく、その者を目で追いながら、俺は馬車に乗り込み、扉を閉める。


中に入って座ると、すぐにライラが、俺の体をあちらこちらペタペタと触ってくる。


『大丈夫でしたか?」


「うん、ケガとかしていないよ」


おほん、おほん………咳払いの侍女さん


「姫さま、いけませんよ、不用意に殿方に触っては………」


「でも………」


「でも、なんですか?」


「………あっ、はい、わかりました」


口答えすると、何倍にも帰ってきそうな感じなので、黙った。


沈黙が訪れるが、馬車は、車輪の音と馬の歩く音を響かせながら先を急いでいる。


これから行く、侯爵って、どんな人なんだろう?


検索魔法を発動しながら、何事もなく、侯爵の領地についてしまった。


侯爵の領地は、大きい。


遠くからでも、侯爵の住んでいる屋敷?………大きな城みたいな屋敷が見えている。


街も大きく、人もにぎやかだ。


******


何事もなく、侯爵の領地の訪問を終えて、俺たちは帰途に就いた。


何しに来たんだろう?


ライラだけが、侯爵と話をしていた。


俺は別室に待機していたから、わからない。


ライラは国の重要な話だと言っていた。


そして、来てわかったことだが、この領地は、隣の国と近い。





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23年8月29日に、ここまで新たに改稿しました。

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