第2話 前世よりも上手に生きるために(後編)

俺が育つ家の前で、捨てられて10歳になった。


相変わらずアリシアに手を引っ張られて連れていかれる日々。


どこに行くにもアリシアと一緒。


村の中でも、外でもアリシアとは行動を共にする日々が続く。


服を泥で汚すこともあり、そんなときは、両方の親に怒られた。


俺は幼少期には、アリシアからもらった、おさがりを着ていた。


俺がスカートだったこともあった。


でも、俺は気にしない、だって仲が良いアリシアが履いていたものだから。


そのときまで、男がスカートを履くことがないことをわかっていなかった。


次第に、恥ずかしくなり、スカートを履くことは無くなったけど………



「いいクリス、あの大きな木のところまで競争だからね」


またかと少しうんざりしながら「………うん、わかったよ」


アリシアは活発な女の子に成長して、髪の毛は腰まで長くて、誰もが美人だと思うような顔立ちで、目がクリクリとした笑顔が可愛い女の子だ。


「アリシア、待ってよー」


「クリス、遅っい」


先を行くアリシアに追いつこうと、頑張ってみたけど、とても、無理。


俺よりもアリシアの方が走るのも早く、木に登るのも上手だった。


良い言葉で言うと活発、悪い言葉で言うと、お転婆なアリシア。



村人たちも俺とアリシアの2人が、遊んでいるのを見ることが多くあり、木の上で木の実を食べたり、話をしているのを目撃したり、近くの川で魚釣りをしていることを見かけていた。。


2人は、住んでいる所も隣で、歳も近いこともあり、本当によく遊んでいた。


そのうちに畑仕事も二人して手伝うようになり、感謝もされていた。



俺たちの村にも、時々だけど、冒険者が来ることがあった。


冒険者は、一人で来ることはなく、数人の冒険者が、村長から依頼されて魔物の討伐と言うことで数日、泊まっていた。


俺とアリシアが興味があることは、冒険者と言う言葉と、冒険者が仕事で魔物を減らすために来ていること。


冒険者の中には、女性もあるので、俺たちは、女性に話しかけることがあった。


冒険者の男性も多くいたが、荒々しく、言葉遣いも悪いし、酒を飲んで暴れる人もいた。


なので俺とアリシアは男性の冒険者は嫌いだった。


もちろん、女性も、お酒を飲む人はいたが………


村には、住んでいない家が数件あったので、その家を冒険者たちに提供していた。


夕方近くに、冒険者たちは到着して、村長と空き家で話をして、明日から討伐すると言う話になったみたい。


俺とアリシアは夕食まえに、家を抜け出して、窓から、覗いてみる。


興味深々で灯が付いた窓の中を背伸びしながら覗いている。


もう、家に帰らないと怒られてしまう。


のぞき込むながら「ねぇ、アリシア、もう、帰ろうよ、お母さんから怒られるよ」と俺が小声で言う。


「もう、少し」


「もう………」と、ちょっと、心配になってくる、また、怒られるんじゃないかと。


俺たちの背の高さじゃ、背伸びしないと見えない。


足がプルプル震えながら、伸ばしてみていると、冒険者の女性と目が合った。


「女性と目があっちゃったよ、やばいよ、アリシアちゃん、帰ろうよ」と俺は見るのをやめる。


一向に、帰ろうとしない………アリシア


そうこうしているうちに、目が合った女性が出てきた。


「君たち、なにか、よう?」


アリシアがのぞき込むのをやめて、俺を後ろにかばうように立ちふさがる。


「あっ、いえ、どんな人かなって思って」とアリシア


「どんな人?………、うっ………、どんな人ね、う~ん、 一概には言えないわね」


「そうなんですか?」


「私たちは冒険者だけど、王都のギルド所属で、冒険者になって、まだ5年目なのよ、冒険者にはランクがあるんだけど、全員じゃないけど、私は、ランクはDランクよ、あっ、ごめんなさいね、私の名前は、ケイシーよ」


「あっ、私の名前は、アリシアで、この子はクリスです」


「そう、よろしくね」


「あっ、こちらこそ」


「ねぇ、君たち………冒険者に興味があるの? それとも、、わ・た・し?」


ちょっと怒ったような感じで「冒険者のほうです」とアリシアが言い切る。


「まぁ、そうだよね、私にも弟と妹がいるんだよね」


「えっ、そうなんですか?」と俺


「うん、今頃、どうしているかな?」


「あの………冒険者って、どうなんですか?」


「どうなんですかっって言われてもね、危険な仕事だよ。冒険者ギルドで依頼を受けて、数日かけて依頼があった場所に行って、そこで話し合いをして詳細を聞いて、魔物を討伐すれば、ギルドでお金がもらえるって感じかな?」


「へ~、そうなんですか?」


冒険者のお姉さんと、アリシアと俺とで、座って話をしているが妹弟がいると言うことで、お姉さんは親切に俺たちに説明してくれる。


「一番、重要なのは、自分の命を粗末にしないこと、そのためには、剣が上手くなるか、魔法を上達させることだ」


アリシアは「剣を?」


「この世の中には、戦う手段として剣か魔法のどちらかしかない。私は、剣が使えるから、剣で戦ってしく」と剣の鞘に手をかける。

しかし、魔法も、少しならできる」と冒険者のケイシーは、何やら聞こえなかったが言葉を呟いて手のひらに炎をだしてみせた。


「「うわっ、すごい」」


二人して、初めてみる魔法に驚いている。


「あっ、熱くないんですか?」


「熱くはないよ、自分の魔法だからね。火の魔法は生活にも直結しているから、使えると便利だよ。あとは使えないけど、水の魔法だね」


「火と水………」


「火の魔法は、焚火を起こす事が簡単だろう? それと水の魔法を使えたら、水を汲みにいかなくていいからね、いつでも水を飲むことができる」


「えっ、飲めるんですか?」


「ああ、飲めるさ、美味しいぞ」


「へ~」と目を輝かせる。


「そうやれば、魔法が使えますか?」


「そうだな」


「まずは、火の呪文を習得する必要がある」


「えっ? 呪文」


「そうだぞ、クリスと言ったかな、君は魔法に興味があるのか?」


「………はい」


「そうか、そうか、横の君は剣かな?」


「あっ、はい」


「お互い違うものを習得すれば、お互いが助けられる、特に剣士は前衛で魔物に対するが、魔法使いは、後方で剣士をタイミング良く援護することができる」


「?………魔法使いは、援護なんですか?」


「普通は、そうだな、剣と魔法の両方ができる奴は見たことがない。剣が使える者は、剣を練習して技術を伸ばしていく………魔法使いは、魔法を練習していくので、魔法が得意になる」


「魔法の練習?」

「剣の練習?」


「さぁ、もう遅くなるぞ、両親が心配しているだろう」とケイシーは立ち上がる。


「「あっ、はい」」と俺たちもケイシーにお礼を言って帰ろうする。


ケイシーは、家の中に入ろうとしたけど、俺がもどって、足を止めさせた。


「あの、魔法の呪文を教えてもらうますか?」


「そうだな、いいいかい、良くお聞き……『火の聖霊の能力を、われがもらい受けて発動する、火の魔法よ、いでよ」って言うんだよ。


「へー、覚えるのが大変ですね。 えっと火の聖霊?………」と途中までしか口に出していないのに俺の下に下ろしたままの手の平に炎が出現する。


あたりは薄暗いから、すぐに、自分の足元の明るさに気が付いた。


「うわっ」と足を動かすが火は離れてくれない。


冒険者のケイシーが、俺の手を取り、上で上げてくれた。


「落ち着け、クリス……何もでていない手の掌のイメージを考えるんだ。そう、そう、ゆっくりとだ。

よし、いいぞ、収まった。ふうっ」


アリシアも、近寄ってきて、『大丈夫?」と心配の目


「うん、なんとか」


「それにしても、すごいな、初めてだろう、魔法を使えたのは?」


「………うん」


「よし、今日は遅いから、もうお帰り、明日、早く、ここにくるんだ、魔法を教えてやるから、でも、朝だから、少ししか時間は取れないよ、わかったね」


「はい」と言って、今度こそ、帰り道をいく。


掌を見ながら、トボトボと歩き出すが、横のアリシアが、「さっきの、どうやったの?」と聞いてくる。


「よくわからないよ」と本当のことを考えて言った。


家に帰ると、おかえり、遅かったね、と言われたが、うん、ごめん………しか答えなかった。


翌朝、早く起きて家の扉を開けると、そこにはアリシアが立っていた。


「おはよう」とアリシア

「うん、おはよう」と答えたが、アリシアは朝早くにも関わらず、眠そうな目をしていない。


今日の日を待ちわびたように目を輝かせている。


アリシアと二人で、冒険者の女性の寝ている所に歩いていく。


しかし、冒険者の寝ている家に近づいていくと騒ぎが起きていた。


「おーい、こっちだ」

「ここに運べ」

「ひどいぞ」と言う声。


俺たちは、走って騒ぎが起きている所へ急ぐ。


近くにいる大人に聞いてみる


「どうしたんですか?」


「おおっ、クリス、早いな、いや、それがな昨日、急に魔物が畑に出て、冒険者たちが出向いていったんだが、返り討ちにあったんだ」


「えっ?」それを聞いて、俺とアリシアは、顔が青くなる。


あちらこちらに寝かされた冒険者たちの中からケイシーを探していく。


昨日と同じ服の女性を見つけた………


ケイシーだ。


地面に横たわるケイシーは、ひどいケガを負っている。


横に、村の人がいるが、体にできた傷を抑えることしかしていない。


「ケイシー」と言うと、かすかに反応があった。


俺はケイシーの手を握る。


反対側でアリシアがケイシーの手を握る。


たった少しの時間しか話す事が出来なかったけど、優しいお姉さんみたいなケイシー。


「ケイシー、死なないで」と涙を流しながら、言うが、ケイシーは、手をピクッと動かす事しかできないみたい。


俺はケイシーの掌を一生懸命に握りながら、祈ることしかできない。


ケイシー、ケイシー、元気な姿を見せて………目を開けてよ。


必死に願う俺の手の平が、ほのかに熱くなる。


冷たくなろうとしているケイシーの手も、徐々に温かくなってきたが、俺には、そんなことよりも、ケイシーが目を開けてくれることを願った。


ケイシー、目を開けてよ。


ケイシー、もう一度、俺に魔法を教えてくれるっていったじゃない。


ケイシー………


そのとき、ケイシーの手が俺の手を握り返してくれた。


俺は目を開けると、ケイシーは、目が開いていた


「ケイシー」と言って俺はケイシーに抱き着こうとしたが、村人も、アリシアも俺を見ている。


「えっ?」


後ろをみると、横たえた人以外は、俺mの周りに集まっていた。


「えっ? なに?」


俺は全員の顔を見て、どうして俺の顔を見るのか、説明を求めたが、誰も何も言ってくれない。


俺はケイシーの前にいるアリシアに目を向けた。


アリシアも俺を、ただ見ているだけ。


ケイシーの目も、俺をただ、ジッと見ている。


「えっ、なんなの?」


あまりに見られるものだから、大きな声で「なんなの?」って叫んだ俺は、頭がぼーっとしてきて気を失った。


****


俺が目を覚ましたのが、次の日の朝………


あれっ? おれ、どうしたんだろう?


いつの間にか、自分のベットに寝ている。


俺がベットから起き上がり、扉を開けると、いつも食事をするテーブルに冒険者のケイシーがいた。


俺はケイシーが自分の家にいることに嬉しくなり、すぐに近寄る。


「やぁ、クリス、起きたかい」


「よかった、ケイシー、あれは夢だったんだね」と


でも、そこで、シーンとした空気が流れる。


「どうしたの?」


「いや、私の服が血まみれなのは、わかるかい?」


「えっ、血まみれ?」


俺はケイシーの服を見てみると「これが………血?」


「うん、そうなんだ、君は私の命の恩人だ」


「えっ?、昨日のは、夢じゃないの?」


「ああ、ちがうよ、君は魔力切れを起こして、気を失ってしまったが」


「えっ、自分が魔力切れって?」


「ああ、頭が混乱するのは、わかるよ。君は昨日、倒れている私に魔法を使って

生き返らせてくれたんだ」


「えっ? 魔法を使った? うそだぁ」


「現に死ぬような傷を負っていた私は証拠だ。仲間でも、前衛の私が一番の重症だったんだ」とケイシー


「………」


「嘘じゃないみたいよ、アリシアちゃんが、話してくれたわ」母親


「………」


母親が「あのね、あのとき、ケイシーさんの手を握っていたクリスの手が、光り輝いていたって」


「そ………そうなの?」


「クリス、初めの魔法を使ったのは火の魔法だろうが、今度は、私を助けてくれたんだ、その恩返しをしたいんだ、しばらくの間、私が君の先生のなろう」


「えっ、先生?」


「ああ、そうだ、魔法は得意ではないが、使えないことはない、魔力の集め方、練り方くらいは指導できると思う」


「私たちも応援するわ」と母さんは嬉しそう。


父さんは「そうだぞ、こんなことはめったにない、こんな小さな村から魔法使いが出るなんて栄誉なことだ、せっかく、こうして言ってくれているんだ、その言葉に甘えよう」


「三人が、それでいいなら、俺は教えてもらいたい」と言っていたら鍵がかかっていない扉が勢いよく開いて「わたしも………」とアリシアが飛び込んできた。


ケイシーは、扉が突然、開いてことに驚いたが、すぐに笑顔になり、「うん、いいわよ」と


これで、アリシアと俺はケイシーに魔法を教わることになったが、まずは体力からつけるために、遊べと言うことだった。


村の中や、村から離れて、走りに回る。


ケイシーの訓練は競争して走り回ることから始まった。


時には、畑仕事をしたり、近くの川で魚を取ったりすることもあった。


朝からお昼までは、体を鍛える訓練で、午後からは、剣と魔法の訓練の時間になった。


集中することから始まり、また動かずに耳を澄ませること。


周りの音に集中すること、小川にくれば、水が流れる音、単純な水だけの音じゃないのがわかる。


まっすぐに流れる水もあれば、そうじゃない水もある。


何かに当たって流れを変える音もすることが分かった。


ケイシーは自分では使えない魔法を、教えることは上手だった。


たぶん、色々、試したんだと思う、自分も魔法が使えるようになるんじゃないかと。


しかし、それは叶わぬ願望だったみたいだ。


いくら練習しても、魔力が少なければ魔法は使えない。


ケイシーは魔力想定をしてもらったら、魔力は、あまりないと言われたそうだ。


それから、お落ち込んで魔法を使うことはしなくなったそうだが、やり方は頭に残っていると言っていた。


自分では、生かすことができない魔法の練習法を俺たちに施してくれた。


俺たちは、街の外に出て、川の近くで、訓練していた。


いや、今日は遊んでいた。


その日は、あまりに熱くて、三人とも川に入って遊んでいた。


水かけに夢中になっていた俺たちとは違ってケイシーが気が付く。


「二人とも、水から上がって、早く」と、声が引きつっている。


ケイシーが見ている方を見ると、大きな魔物がいた。


ケイシーは、急いで、装備が置いてあるところに走ろうにも、そこには魔物がいる。


しまった、どうする?


ケイシーは、「二人とも、対岸まで泳いでいけるよね」


「………うん、それは大丈夫だけど………」

「うん、ケイシーは?」


「私は、ちょっと、あいつと戦うから………」


「そんな剣もないのに?」


ケイシーは目を離さず魔物をにらみつけ、川の底から石を拾う。


「クリス、君には感謝している、たぶん、こいつに、以前、私はあったことがある。そう、あの時の奴だ」


「………」俺とアリシアは動けない、いや、足が恐怖で震えている。


「クリス、君には魔法の才能がある、しかし、治癒魔法に特化だと勝手に考えた私は、聖属性の魔法しか指導しなかった」


「このままでは、君らまで危険だ。私は一か八かの攻撃にでる。そのときに君らは対岸まで泳いでくれ」


「あの魔物を倒すには、なんの魔法が有効ですか?」と聞いてみる。


ケイシーから、魔物の弱点を聞いていた。


たぶん、奴には火の魔法が有効だと思う。


俺は目を閉じて、手のひらを上にして、訓練でしたことを実戦で展開してみる。


チラッとアリシアの方を見て、俺は決意を決める。


「ごくりっ」と俺は緊張から唾を飲み込む。


剣も何もないような状況じゃ、俺がやるしかない。


しかし、ケイシーが手の持つ、石のことを見ている。


川には石ならある。


でも、石を魔物に投げても、逃げてくれればいいが、投げ返されたら?


当然だが、魔物の方が力は強い。


今は魔物は、川のへりの高い所から、俺たちを威嚇しているのか、見下しているのかわからないが、こん棒を振り回している。


浅い川でケイシーが石を持っているが、人の弱い力じゃ、あんな大きな魔物に勝てるとは限らない。


ケイシーの剣は、魔物の近くに置いてある。


あれさえあれば………


と、考えている時に、魔物が飛び上がった。


俺たちに接近できるようにジャンプして、ケイシーの前に下りてきた。


「二人とも、泳いで、早く」とケイシー


俺たちは、ケイシーの言うとおりに反対岸まで、泳いだり歩いたりして、数分かけてたどり着いた。


岸に上がり、はぁ、はぁ、させながら、後ろを振り返る。


ケイシーの姿を探すが、魔物しか見えない。


「えっ? ケイシーは、どこ?」

「ケイシー」と叫んでも、声はしない。


しかし、俺たちの呼び声にこたえるものがいた。


そう、それは魔物。


魔物が俺たちの方をみる………俺たちも魔物は、どう動く?


俺たちと魔物には距離がある、それも、水………


あの魔物は水が苦手であれば………


願いは叶うことはなかった。


魔物は俺たちの方をみると、水に向かって歩を進めた。


俺たちはと言うと、足がすくんで動けない。


魔物が接近するのを見ているしかなかった。


「………」なにも、喋れない、しかし、確実に接近してくる。


もう、魔物は、目の前まできて、川から出ようとしている、魔物が全身のブルブルっと体を震わせて水を払い落とす。


俺とアリシアの顔や体に魔物のしぶきが飛んできて、やっと、はっと動くことができた。


しかし、アリシアの目の前には魔物の姿。


フゴッ~と魔物が雄たけびをあげる。


さも、これから、お前を殺すぞ、と言っているように………


「アリシア~」と俺は叫びながら、アリシアに近寄る。


アリシアが魔物に恐怖しながら、俺の方を振り返る。


アリシアの恐怖で歪み顔には、怯えている顔が伺える。


何か、言おうとしている………しかし、声にならない。


そのとき、魔物がこん棒をアリシアに向けて振った。


ドンッ、と変な音を立てながら、アリシアの体が俺の方に飛んでくる。


うっ………とすごい衝撃に俺の体も、宙を浮き飛ばされる。


ゴロゴロ、ゴロゴロ………二人の体は吹き飛ばされる。


俺は体が回転しながら、木の根元で体を打ち付けて止まった。


頭を打ち付けた時に、頭の中に、大量の情報が入ってきた。


うわっ~、頭を抑えて、転がりながら痛みとも思える症状が支配する。


あまりにも情報量が多い為、痛みと勘違いした。


未だ、頭は混乱したままだが、ある記憶から引っ張りさせるものがあった。


その記憶の正体は………俺の中に入っている前世の……人の記憶。


無意識のうちに俺は、右手を挙げてアリシアに回復魔法を使った。


しかし、俺の前に魔物が立ちふさがろうとしている。


今度は俺に向けて魔物は、こん棒を上から振り下ろす。


ドンッ………とすごい音がした。


俺は、逃げることなく魔物のこん棒を右手で受け止めた。


俺は、自分が使えるはずもない魔法を行使した、


その魔法は強化魔法………その時は、そんなことも知るはずもない。


強化魔法のおかげで、俺の体は大丈夫だったが、地面にめり込んでしまった。


めり込んだ地面から足を抜きつつ、魔物のこん棒は俺の右手でつかんだまま………


魔物はこん棒を取り返そうとしているが、動くことはない。


俺は魔物っを振り回してこん棒を取り上げる。


取り上げたこん棒は、かなりの重たさがあったが、俺は、重たさを物ともせずに、立ち上がろうとした魔物に向けて、横殴りで一撃。


立ち上がろうとしたところを狙われた魔物は、あまりにも無防備で俺の一撃で沈んで息絶えた。


はぁ、はぁ、はぁ………


………!っ………俺は急いでアリシアのもとに駆け寄る。


「アリシア、アリシア、しっかりして」とアリシアを抱き起す。


目を覚まさないアリシア


もう一度、寝かせて、アリシアの傷を確認してみる。


服に血が付いている所を、見てみるが不思議と傷はない。


「うっ?、う~ん」とアリシアはゆっくりと瞼を開ける。


「えっ? 魔物は?」とパチッと目を開けて起き上がりあたりを見渡す。


周囲を見渡すと、転がっている黒い物体。


アリシアはフラフラしながら、立ち上がる。


俺はアリシアの体を支える。


アリシアはフラフラしながらも歩き出し、近くに落ちているこん棒を見る。


「ど、どうしたの?」


「………うん、倒した」と俺が言った途端、俺の方を向いて、俺を足から頭までジッと見る。


「嘘ばっかり」


「えっ?」


「何もケガしていないじゃない、あんな大きな魔物に無傷でいられるはずはないよ」


「………」


「ケイシーが来てくれたの?」


「あっ、そういえばケイシー………」と言って走り出した。


川を渡ろうとして初めてアリシアは自分の服を見て、血だらけだとわかった。


俺も止まりアリシアを見て「俺が治した」と小さい声で言った。


アリシアが後ろを向いて服をたくし上げ傷を確認している。


「こんなに血が出ているのに、痛くない………どこも痛くない」


本当にアリシアのシャツは、血だらけ………


確認し終えたアリシアは、先に川を渡り始める。


じゃぶじゃぶ………急いで川を渡る。


「ケイシーーー」と声をかけるが、ケイシーからの声はない。


俺たちは、先ほどいた川のところにやってきた。


「ケイシーがいない」とあたりを探す。


「下流かも?」と言って下流を探し始めるアリシア


川から上がって、下流にいくとケイシーが見つかった。


うつ伏せになっていた。


アリシアとケイシーの手や足を引っ張り、やっと地面に上げた。


しかし、その時には、息をしていなかった。


そして、腹部に魔物からやられた大きな傷があった。


そこからは血が、あふれていた。


はぁ、はぁ、はぁ、はぁ………


大人のケイシーを引き上げるだで、息が上がる。


でも、俺は教えてもらった、回復魔法をしてみたが、もう、ケイシーが目を覚ますことはなかった。


「うっ、うっ、うっ」と悲しみをこらえているアリシア




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

お読みくださりありがとうございます。


ブックマーク、ハートマーク、星マーク、評価も、感想も、ほんとうにありがとうございます。


本当に多くの方の支援には心より感謝しております。

そして、何よりも小説を書くための、なんと言っても見える励みになっています。

誤字脱字がありましたらお知らせください、すぐに訂正を行っています。


また意味不明な文章があることもあるかと思いますが、なにぶん素人が書いている文章です。お知らせくだされば、訂正しています。


この物語は異世界の物語です、現実世界とは違いますので、その点はご容赦ください。

あくまでもファンタジー小説です。

前世の悪い記憶を持つ小心者の主人公が成長していく物語を書いています。

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