第287話 神獣ウルフ(前半)

ウルフは神獣たちの中でも、殺したり壊すのが役目と言うツライことを担当していたらしい。


俺は、奴に同調するのではないけど、本当にそれがしたくてやっていれば、ここまで心が壊れることはないと思ってしまう。


その理由は、奴が家庭を持ち子供まで作って仲良く暮らしていたとジャネットに聞いたからだ。


本当なら、世界の監視するために、家庭を持つことはないはずなんだけど。


たまたま、世界が平和で、それが長く続いていた時に、良い奥さんに出会えたのかな?


その奥さんを愛してしまい、神獣の仕事はしていたかも知れないけど、家族を持つことで、奴の心の安らぎの時間だったと思いたい。


それが奥さんを、誰かに殺されてしまい、結果的には、精神がやられてしまうことになった。


ということは、よっぽど家族を愛していたと思う‥‥‥


誰が、奥さんを殺したのか、それを確認する必要もあるけど、過去に遡れるのか?


そんな魔法があるのか?


未来予知ができるジャネットならできるのかな?


なんだか、そう考えていくと、そこに引っ掛かりができてくる。






ウルフの視点


俺は猪の化身の神獣だ。


特には巨大な猪として世界を監視したているが、俺を支配する神レイチェルに命令を受けて行動するのが普通だ。


神レイチェルは、神獣を支配下に置いている神だから、命令には絶対服従をしなければいけない。


俺が神獣として、現世に生きていられるのは、神レイチェルのおかげだけど、俺の存在理由が影響している。


それの存在理由は、破壊、殺戮が主な担当だ。


何かが起きたら、神レイチェルから指令を受けて、その国や村や町の人を殺したり、壊すのが、俺に任されたことだ。


でも、俺は、本当は、そんなことをしたくない。


そりゃ、人の形になって街を彷徨くこともあって、俺に厳しく接する奴もいるけど、俺に優しい人もいるから。


ある時、俺が、壁に寄りかかって人の動きを見ていたら、俺の目の前で、一人の女性が石につまづいて転んでしまった。


持っている荷物も投げ出してしまい、転がった。


俺は、慌てて、女性に近づき起こしてあげた。


「大丈夫ですか?」


「はい、ありがとうございます」


「あ〜ぁ、膝を擦り剥いていますよ」


「えー本当ですか?」女性が自分の膝を見て、痛そうにしている。


俺は転がって散らばった荷物を集めてあげた。


「本当にありがとうございます」


女性は荷物を受けたり、歩いて行こうとしたんだけど、足が痛そうにしている。


俺は、「どこか人に見られないところに行きませんか?」


と変なことをいってしまった。


「えっ」


「あぁすいません、変な意味じゃないです、実は私、少しだけ治癒魔法が使えるんです」

俺は慌てて訂正した。


女性は笑って許してくれたけど、近くに家があるということで、家に案内された。


家に着いて、彼女は親がいないということで、家が壊れそうになっていた。


扉を開けて、中に入れてもらい、彼女を椅子に座れせて、


「足を見て良いですか?」


「‥はい」


俺は彼女の足を見て、傷が大きく血が出ていたので、治癒魔法で「ヒール」と唱えて治してあげた。


「どうですか?」


彼女は立ち上がって足を動かしてみている。


「あっ、痛くない」


「あっ、よかった」


「すごいんですね」


「いえ、大したことないですよ」


「あの、もし宜しかったら、お名前を」


「俺ですか、」


そういえば俺は、名前がなかった。


名前を考えて、「ウォーレンです」と答えた。


俺たちは召喚される時に、召喚主から名前をつけてもらうけど、今の俺は神から監視する役目を負っているので、名前がなかった。


「あのウォーレンさん」


俺は初めて女性から名前を呼んでもらえた。


仮の名前でも嬉しかった。


俺は、彼女に会うために、家の近くを彷徨くことをしたら、よく彼女と話をしたり、彼女の家でお茶をすることを重ねた。


本当に彼女といると心が温かくなる。


彼女の笑い顔を見るために、俺もびっくりするくらいなことをした。


俺が、彼女の笑顔を見るために、冗談を言うなんて、自分自身で驚いた。


そんな日を過ごしながら、彼女にプロポーズした。


彼女は涙を流しながら、了承してくれて、俺たちは郊外の村に新居を構えた。


本当に幸せな時間が続いて双子も生まれた。


しかし、村長には、なんだかわからないけど嫌われているみたいだ。


何かにつけて文句を言ってくるようになった。


子供の鳴き声がうるさいとか。


そして俺には村にも友人ができた、その友人はダニエルと言う名前だ


ダニエルは何かにつけて俺の家に遊びに来た。


そして3人でよく話をした。


子供は小さいから、妻が、時々、ダニエルの前で授乳する時もあったけど、ダニエルは、それをジーと見ていたが、子供をみていると思った。


オムツを変えるときに、妻が前屈みでしていたときに、ダニエルは胸元をみている時もあり、俺は何気なく注意していた。


その時、近くの国で戦争が起きた。


この村までは、距離があったけど、注意していた。


神レイチェルの呼び出しもないと思っていた。


徐々に戦争は大きくなっていき、俺がいる国まで戦争が広がってきた。


戦争の広がり、今、俺が住んでいる村まで、拡大してきている。


そんな時に、久しぶりに神レイチェルから、国の破壊の命令が届いた。


俺は、近くまで戦争が近づいてきているので、確認をしてくると言って、家を離れた。


家から遠く離れたところで、巨大な神獣になって、命令通り街や人を殺戮していった。


その時に思っていた事は、どうして戦争なんかするんだ、と言うことだ。


戦争が広がらなければ‥‥、俺が出てくる必要はなかった。


5日で戦争を起こした国を焼け野原にして、俺は家に戻ってきた。


しかし、家の扉を開けると、テーブルの向こう側で、無惨に妻が殺されていた。


それも性的な暴行を受けて。


そして子供達2人も、すぐ近くで殺されていた。


俺は、絶望して、大きな声で叫んだ「なぜなんだー」


俺は、死んだ妻と子供を手元に引き寄せて、泣き叫んだ。


俺は膝を床について涙を流しながら「ウ、ウオーーーーーーフゴッ」と声の限り叫んだ。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


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