第154話 調印式

何だか、公爵なのに、使い走りになっている気がする。

あっちに人を連れて転移したり、こっちに人を運んだりしていることが多いから。


一瞬で移動ができる魔法だから、使われ放題。


今度、一回の転移が、「料金をいただきます」って言いそうになるのを我慢する、っていうのは、嘘だけど。


まぁ、それで平和な世の中が長く続くのであれば、問題はない、俺一人が苦労すればいいだけのこと。


前世の話をするけど、本当に無残と言えば、簡単だけど、言葉では言い表せない死に方ってあるんだなと思う。


あの死んでいくときも、暗闇に引きずり込まれた感覚!


薄れゆく意識の中で恐怖と言えば、簡単な言葉で済ませてしまいそうになるけど、そんなもんじゃない。


今、、動かなければ時間がない、感覚は昔から俺の中にくすぶっている。


まだ、それが、終わっちゃいない。


いまだに、その感覚が大きくなってきている。

このことは、誰にも話しちゃいない。


というか話せない、あまりに現実味がなくて、どう話したらいいか、俺自身も、説明が難しい。

でも

でも、感覚が、研ぎ澄まされれば、澄まされるほど、俺の心臓は早くなる。


この感覚が何なのか、今はわからない、けど、わかることは、ことを早くなすこと。


俺から手を広げなくても、俺の手の中には新たなことが次々と起きていく。


俺が村にいる時から感じている感覚と言うか、違和感と言うか、恐怖感というか、「そんな簡単な言葉では言い表すことができない、何かが、近い将来、俺を待ち構えている。


それに、たぶん世界は巻き込まれていくだろう。

そのための準備が、まずは国のつながりであり、結びつき、つまり友好国と言う事だと思うけど、間違いなのかも知れない。


もしかしたら、間違っていて、そんなことじゃ対処できない可能性もある。


急がなかければ……、俺の心の中で叫び始める声が聞こえてくる、もう近づいてきている、その時が………




俺って調印式の3日前の午前中にダイラス連邦の幹部たちを連れて、オーリス王国に転移した。


ダイラス連邦の幹部たちには、練習のために短距離転移で練習をしている。


なので、ふらつきのような感じは大丈夫と思うけど、あっても軽いだろう。


今日は午前中から集合場所の首長の屋敷に来ている。

まずはメンバーのソフィアとイザベラを先に転移させる。


最近は自分が一緒じゃなくてもいいんだけど、安心のために幹部連中は俺と一緒に転移をする。


首長達、5人と俺1人を王城の中の借りている部屋に転移する。


普通は誰もいない部屋なんだが、王族と王子と宰相がいる。

俺達が転移してくると、首長に王様たちが近づいてきた。


なごやかに握手している。


王様の挨拶が終わると、王妃様、次に王子様、次にシャーロット王女と宰相が挨拶を交わした。


そして全員で、違う部屋に移るために部屋を出て行こうとしたが、王様が俺の方をチラッと見て頭を下げた。


今、ここには、先に転移で送っておいたソフィアもイザベラもいるしアリシアもコリンもいる。久しぶりに4人が揃っている。


しばらくは俺たちに用事がないだろうと思って屋敷に帰ろうとしたが、シャーロット王女が戻ってきた。


俺だけでも、しばらくは、ここにいて欲しいと言われたので、しょうがなく、お城にいることにした。


シャーロット王女が、それだけ伝えると走って出て行った。


俺だけ入ればいいかもわからないけど、用事がないので全員でお城を楽しみながら、残っている。


部屋には俺たちの他に侍女が1人いる。


しばらくはメンバーで、この部屋で侍女が出してくれた紅茶を飲みながら過ごしている。


王様たちは忙しいだろうけど、俺たちは待たされるだけで暇だ。


そして、またシャーロット王女が戻ってきた。


忙しい人だ。


「皆様、お待たせして申し訳ありません」


そして、侍女に「私にも紅茶をもらえませんか?」と言って紅茶をもらっていた。


俺たちも、もういっぱい紅茶をもらって、ドアがノックされて、違う侍女の人がクッキーを持ってきてくれた。


俺たちは紅茶を飲みながらクッキーを食べて、時間を持て余していた。


そして、ドアをノックする音がして、王子が入ってきた。


「まだ話が行われているところですが、今日のところは何もないと言うことなので、戻られてよろしいですよ」と王子が言ってきたので、俺たちは、そそくさと「では、失礼します」と言って王子の目の前から消えていった。


残されたシャーロット王女と第一王子は、俺たちが消えた後、2人して、「なんだか、すごいね」と王子が言うと、シャーロット王女が、「あの公爵だもの」と言っていた。


「公爵はとても好感が持てますわ」


「私も公爵様に初めて会った時はときめきました。」


久しぶりにシャーロット王女と第一王子が話していた。


「そうだね、公爵は、すごいよね。


「本当に、いろいろなところで公爵殿に助けてもらっている。」


「もし公爵殿がいなかったらと思うと、私たちはどうなっていたのか?」


「本当に、今では生きていなかったかもわからない。」


「そして私が出向いたアーロン伯爵事件でも、麻薬の発見をしていただき、そして井戸まで掘ってもらった。実際に現場でクリス殿が魔法を使っているのを見たが、現実のものとも言えないほどすごかった。公爵殿が、わが国にいてもらえて本当に助かった。」


シャーロット王女が、「アリシアが大好きな方ですもの」と言っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る