第139話 首長

しばらくはアリシアの眠る顔を見ていた。


アリシアがスースー寝息を立てだしたのを見て、俺も睡魔に襲われる。

握っていた手が動いた。


俺は目を開けてアリシアを見た。


「ごめん、クリスの方こそ、疲れているのに」

「俺は大丈夫だよ、でも大変な日だったのは間違いないけど」


アリシアは俺のベットに寝ている状態で、布団を少し開けた。


「えっ…」


アリシアは俺に横に来てもいいと言っているみたいだ、たぶん、間違っていたら、殴られるから、聞いてみることにした。


「横に寝てもいいの?」

「うん…いいよ」


アリシアの横に俺も寝かせてもらった。


今はダイラス連邦は冬に向かっているので、一応、部屋にも暖房はあるが、「アリシアの体って温かいね、そして、いい匂いがする」と俺が言う。


俺がアリシアのベットの端に寝ると、緊張や疲れからか、、横になったら、すぐに目があけてられない状態に陥ってしまった。


つまり、眠ってしまった。

なんて、もったいないことをしたんだろう。


翌朝、目が覚めたらアリシアは、もういなかった。

朝の甘い時間が……



俺は、その晩、寝ているときに夢を見ていた。

2人して村で遊んだ懐かしい記憶。


あまりの懐かしさに目が覚めた時には涙を流していた。

俺は涙を拭きながら、もう一寝入りしようと思った。


それを邪魔する奴がいた。


ノックの音が小さくする。


ドアの外から小さな声でソフィアが、クリス、ごめんなさい、お客様なの、と、せっかく二度寝しようと思ったのに。

しかたなく俺はベットから起きて着替える


ドアを開けて部屋の外に出ると、ソフィアが、騎士が例の件で来てほしいと言ってきているんだけど。


宿の外で、昨日の騎士が待っていた

もう、なんだろうなと思いながら騎士に尋ねる。


「申し訳ありませんが伯爵様、首長様がお会いしたいと言う事ですので」と騎士は話した。


首長が会いたいと言う事は拒否するわけにはいかないので、騎士が「こちらに、どうぞ」と馬車の扉を開けくれたので、俺は馬車に乗り込んだ。


もう、なんだろうなぁと思いながら馬車から王都を見ている。

先程の騎士は馬車の中にいないが馬車の横に馬に乗ってついてきている。


いま、俺が乗っている馬車に、馬に乗っている騎士が、全部で5名いる。

馬車の周りを騎士が、つかず離れずいる。


なんだか自分を守っているような感じなんだが、伯爵とわかったからかなぁ。


でも、あの事件の、あの場では早急に国の役人を連れてきてもらわなければいけなかったので、仕方なく正体を現したんだが。


なので気にしなくていいんだが!

そう言う訳にもいかないのかな。


しばらく馬車の中で、あれやら、これやら考え込みながら馬車に揺られていると、大きな屋敷に到着した。


騎士は、扉を開けながら、「こちらのお屋敷が、わが国の首長様のお屋敷です」


わが国?


首長と言うのは、何人かいたと思うんだけど、普通であれば、わが国と言うのは使わないと思うんだけど。


なんだろうなぁ?と思いながら言われた通り屋敷の中に入っていく。

早く宿に戻って二度寝したいんだが…


案内を騎士から屋敷の執事ヘ受け継いでもらうと、ある大きな部屋に案内された。


帰りは、歩いてかえるのかなと思っていると執事が、騎士と馬車は外で待機しているそうだけど。


ある大きな部屋に通されて、しばらくは紅茶が出てきたので紅茶を飲みながら待っていると、長く待つことなく、すぐに男性と女性の人と女の子が入ってきた。


俺は立ち上がったが、手で静止を求められたので、また、座った。


2人は、こちらを、じーっと、しばらく見て話さないので、俺の方から、「あの…ご用件は‥」と聞いた。


俺から質問すると、一人の男性が答えてくれた。


「何も話さず見つめて申し訳ない、あまりにも若いので」と言った。


「失礼ですが、伯爵様はおいくつでいらっしゃいますか?」と女性の方が聞いてきた。


俺は、「もうすぐ16歳になります」と答えた?


なんだろうか?

俺は、歳がどうかしたのか?、と言いそうになったが言わなかった。

そうすると2人揃って、頭を下げてきた。


「このたびは私たちの娘を助けていただき本当に、なんとお礼を言って申し上げたらいいのかわからない、感謝しております」


「娘さんですか?」


俺は、あまり、わからずに話を聞いていたが、娘さんと言うのは、人身売買の奴らに拉致されていた人の1人のことみたい。


「本当に、なんとお礼を申し上げたらいいのか、この子が家庭教師の目を盗んで屋敷を抜け出してしまい探していたところでした」


と横にいる女の子の頭に手を置いた。

その女の子が、「エヘヘ」と笑った。


そうすると親が、エへへじゃありません、本当に連れ去られるとこだったんだから。

「こちらが、あなたを助けてくれた方よ、あなたからもお礼を言いなさい」


女の子が「ありがとうございました」と笑いながら言っていたが、多分、眠らされて拉致されたんだろうな、だからあまり詳しいことを知らないんだろう。


そんな顔をしているから!

男性の方が、この国のトップの首長らしい。


そして横にいる女性が奥様と言うことだ

そして拉致された女の子が娘だと言うことだ。


と言う事は拉致された8人の女の子の中にいたんだろうな。

俺にとっては8人の女の子は、ついでと言う意味で助けているので、あまり気にしなかったけど。


後で、お礼がしたいと何度も言われたが、俺は辞退した。


その代わりと言ってはなんだが、自分は、これでも一応、伯爵の地位にあるので、この国で何かあったときには手を貸してほしいと、お願いした。


そしたら首長は、「もちろんです」


「あなたと、あなたの国に対しては最大の恩義があります、それを反故にするような事は決してしないと誓います。


そこで、あなたに、お願いがあるのです。


娘まで助けていただいたのに、それ以上のことをお願いするのは申し訳ないんですが、あなたの国のオーリス王国と友好関係を結びたいと以前から思っておりました。」


そこでなんで俺がいるんだ?と思っていたが…


「つきましては、伯爵様にその橋渡しをしていただきたい。


あなたのような方が伯爵をしている国を、私は信用したいと思っております。

以前から考えてはいたのですが、なにぶん、きっかけがないと動きにくかったのです。


それが今回のことで、良いチャンスができたと思っております。

何かあったときには共同で対処が出来るように、ぜひともその橋渡しをお願いします。


これは他の首長の総意でもあります。

どうか、お引き受け願えませんでしょうか」と頭を下げられた。


俺は、本当は関わりたくはなかったんだが、アリシアが拉致されて、他は、しょうがないと思ってやったことだ。


でも乗り掛かった船なので、しょうがないと思い許諾した。


メンバーと一緒に、屋敷に泊まるように言われたが、それは丁寧にお断りをしておいた。他人の屋敷や部屋じゃ落ち着いて眠れないから。

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