第11話 運命の子
今現在、俺は15歳になった。
アルベルトの本を読んで知りえた知識は膨大なもの。
貪欲に本を読みあさった知識が俺にも共有されている。
****
15歳と言えば、この世界では大人だ。
115歳になれば、貴族は、教会に行って、魔法能力の測定をする。
しかし、俺の村には教会なんて、無いし、お金もない。
魔力を測定するだけで、本当に大金が必要になる。
まぁ、魔力測定すると、どの能力が使えるのか。判断しやすいと言うこともあり、ほとんどの貴族は受けているみたいだが。
それにしても魔力測定するだけで、家が10軒、立つくらいの金額がいる。
実際には、教会へのお布施と言うことで納めるらしいけど。
それにしても高い………あっ、家、10軒って言ったのは、俺たちの家の場合だね。
貴族様の家は、もっと高額だけど………
俺は家の都合もあるけど、魔力測定なんて、受けることはない、いや、受けたくない。
その理由は、俺はアリシアの家が襲われてから、魔法の研究をしてわかったことがあるからだ。
それは、俺が、こんな魔法が良いなとか、こんな魔法を使いたいなとか、これがあると便利だよねと思っていると、使えるようになる………
こんなスキル、人がわかったら、どう思われるか?
アルベルトの幼少期のことで身にしみてわかっている。
だから臆病にもなる。
アルベルトが、幼少期、木のキリンだっかか、像だったか、クマだったか、忘れたが、それが欲しくて手を伸ばしただけで、浮遊魔法が発動して手元に取り寄せたことが発端となって起きたこと。
あまりに嬉しくて、村中に言ってまわり、幼いアルベルトは、使う機会が無くなり、村の住人から悪い噂が広まり、精神的な病になっていったこと。
それらのことが起きて、数年に及ぶ引きこもりの生活を虐げられたこと。
アルベルトはやせ細り、青白くなって元気がなくなってきた。
その時には現れた女の子に救われたこと。
本当に幼少期も、軍に入ってからの生活も、悲惨な生活………唯一、アルベルトはライラのことを、思っていたことだ。
俺の魔法の知識は、すべてアルベルトの知識だ。
アルベルトは、軍の施設でも、城の蔵書庫でも、本を読んでいた。
そこで、ライラと知り合った。
ライラの方から好きになり、あとからアルベルトはライラの正体をしり、それでも好きになっていったこと。
ライラのために、一生懸命頑張ろうとしたこと。
今でも考えると俺の胸をズキッと締め付ける………
俺には現生の魔法のことは理解も知識もない。
しかし、アルベルトが生きていた時代の魔法の知識、能力、使い方はわかっている。
アルベルトがローリー大尉と行った訓練と蔵書庫で読んだ、魔法の知識………これは、俺の宝物だ。
しかし、アルベルトの覚えている魔法の知識も非常識が多いような気がする。
それを見極める手段はない。
まぁ、その時、その時でやれることをするしかない。
*****
アリシアと一つの家で暮らすようになっても相変わらず一緒の家で暮らしてるアリシアは手厳しい。
朝から「クリス、今日は畑仕事をだよ、早く起きて」と言って叩き起こされる。
「ふあ〜、まだ、眠いよ」
「ほら、ほら、ダラダラしないで、早く着替えてよ」
「うん、わかった」と言って寝ぼけた頭で上着を抜いて、下も脱ごうと手をかけたて、前を向いたら、アリシアが見ていた。
「あの〜、アリシア、向こう行ってて欲しいんだけど」と言うとアリシアは顔を赤くして
「もう、早くしてよね」と言いながら部屋から出て行った。
バタンッと勢いよく閉められた扉。
俺はパジャマを脱いで、服を着替える。
部屋を出ていく時に、アリシアのベットが目に入ったけど、アリシアはパジャマをきれいに畳んで上に置いている。
俺のパジャマは、脱ぎっぱなし。
今日だけはベットに戻って、パジャマを畳みなおす。
きれいに畳んで、「よし」と言って部屋から出た。
テーブルが置いてある部屋には、もう誰もいないから、
「うっわっ、まぶしい」
朝日が、真正面から当たっている、寝不足な目には、つらい………
俺は両手を伸ばして背伸びした、「さぁ、今日もしょうかな」と言って歩き出した。
もちろん畑へ。
俺の家の畑に行くと、アリシアの家が持っていた畑も、今ではうちの家族が耕したり、収穫を行う。
今日はアリシアの家の畑を耕す日だ。
面積は二倍になって大変だけど、俺たちが手伝えるようになったから、その分だけ良いと思う。
猫の手ほどのことしかできないが………
いや、猫以下かも………
しかし、畑仕事も重労働だ、草も生えるし、害虫もでるから。
少しでも放置すると草が生えてくる。
ミノタウロスの襲来で畑も荒らされてしまったから、収穫物は少ない。
俺は、あれ以来、稽古もかねて検索魔法を練習している。
遠くまで魔物の気配をサーチする。
今は、魔物は近づいていない。
魔力が上がってくると、体にも変化が現れてきた。
「畑仕事は腰にくるね」とアリシアが腰を叩いている。
なんだか、おばさんみたいだけど、確かに腰にくる。
「うん、そうだね、後で、揉んでやろうか?」と俺が冗談まじりに手を動かすと
「‥‥‥うん、やめておくわ、手つきが、 いやらしいから」と言われた。
「あっ、クリス、ちょっと水を汲んできてくれない?」
「うん、わかった」と言って桶を持って共同の井戸に汲みに行く。
俺は角を曲がって共同水汲み場まで行かずに、魔法で水を出して桶に入れた。
少し時間を置いてから戻ることにした。
「はい、水、汲んできた」
「随分、早かったわね」とアリシアが言ってきたから、あれでも早かったか、と思った。
「ここに撒いてくれる?」とアリシアが指差すところに水を撒いて、アリシアが耕していく。
俺も鍬を持って、畑を耕す。
アリシアが背を伸ばしたり、腰を痛そうにしているから、俺が後ろから近づいて、アリシアの腰をくすぐる。
「ちょっと、クリス、やめてよ」と言いながら笑い出す。
俺が手を離すと「もう、くすぐるのやめてよ」と言うアリシア
「早く畑耕すよ」と言って鍬を持って耕し始める。
「あれっ、腰が痛くない‥‥‥」と言って体を起こしている。
「さっき、俺がくすぐったから痛みが取れたんじゃない?」と言っておいた。
「そ、そうなんだ」
そんなことを楽しみながら、俺は、このままでは………と言う思いに駆られている。
このまま、アリシアと共に、畑仕事をしながら、村で暮らすことも良いんじゃないかと思ってしまう。
でも………俺には、なにか使命があるように思ってしまう。
自分のこじつけで、そうなりたいって言うのがあるんじゃないかと思えるが、まずっは冒険者になること………なにが俺を呼び寄せるのか?
俺を呼び寄せた先に、なにがあるのか?
あれから何回か、あの白い空間の中で意識を持っていかれる。
全体が真っ白なので、同じ部屋なのかわからないし、部屋だと思っているだけなのかもしれいない。
何かが置いている訳ではない………ただ無限に広がる白い部屋。
一応、床や天井はあるが、横の壁はない。
時には、誰も現れない場合もあるが、誰かから見られている感じはする。
ここが、何なのか、まったくわからない。
奥は寝ている時に、連れていかれる。
あの声と白い空間の正体は何なのか?
ある時、突然、声を聞いた。
その声は男性で低音の声で、空気を響かせるような声だった。
その声は、一言………「運命の子よ」と言った。
それを聞いた瞬間に俺はなんのことだか、わからない、突然に運命の子って言われたって。
誰が?………もしかして俺が?
あきらかに俺しかいない場所で、言われているので、俺のことだと思うんだが。
俺が運命の子?
なんの運命の?
たぶん、俺を駆り立てる衝動と関係があると思える言葉。
俺は何がしたいんだ?
それを探す必要があると思う、しかし、なかなか切っ掛けが掴めない。
まずは、村からでることが先決。
しかし、言葉にするのは、勇気がいる。
****
俺は思い切って言うことにした。
畑仕事が終わって、夕方のある日に家族が全員、揃っている時に、話があると切り出した。
その時の家族は、俺が話があると言っても、何も言いもせずイスに座った。
もちろん、ここにはアリシアもいる。
お母さんは、コップに水を汲んで、各人の前に置いていく。
しかし、俺の勇気は引っ込んでしまって言い出すことができない………
シーンとした場は時間だけが過ぎていく。
しかし、今、言わなきゃって、思いに駆られて、やっと口に出すことができた。
「俺………村を出ようと思う」
俺が言葉を口にだしたあと、すぐには反論はなかった。
目を伏せていると誰かが、はぁ~とため息をついた。
「やっぱり………」と母親の声
父親も「やっぱりか、最近のお前はちょっとおかしかったからな」と背もたれに持たれて腕を組む。
腕を組みながら顔は上を向いている父親。
父親は「最近のお前は、ちょっと、おかしいと思っていた、しかし、何か悩みでも抱えているんだろうと思うようにしていたが、やはりか」
「そうね、私も、勘違いだと思うようにしていたわ。でもね、村を出るなんて、簡単なことじゃないのよ」
父親が「そうだぞ、村の外には魔物もいる、人だっていい人ばかりじゃない、盗賊もいるし、人身売買の奴らもいる」
「ええ、ほんとうに………人身売買に使ってしまったら、奴隷として売られることもあるのよ、一生、つらい労働を課せられたり、変な趣味の貴族に買われてしまうことだってあるのよ」
「そうだぞ、村から王都までは距離があるし、そこで魔物や盗賊に襲われることだってあるんだ。
そして王都でも、窃盗やケンカなんて当たり前だしな」
「どうやって生活する、お金を稼ぐんだ」と父さんが言った。
「うん、冒険者になろうと思うんだ」
「冒険者か~」父親
「冒険者と言えば、この村に来ていたケイシーやケインが冒険者だったわね」と母親
「………うん」
「でも、ケイシーはあなたたちを守るために死んでいるのよ。ケインは結局は帰って来なかったし」
「それでも冒険者になりたいのか?」
「………うん、ごめん」と
ここで村からでて動かなければ、あの言葉の意味が分からなくなる。
運命の子よって言った意味が………
そう考えていたら、アリシアが初めて、「私はクリスとここで、暮らしたい」って小さい声で。
「ほら、アリシアちゃんも、言ってくれているんだよ、危険な冒険者なんて、なる必要がないよ」と母親。
「そうだぞ、クリス」
「………うん、わかったよ」
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お読みくださりありがとうございます。
ブックマーク、ハートマーク、星マーク、評価も、感想も、ほんとうにありがとうございます。
本当に多くの方の支援には心より感謝しております。
そして、何よりも小説を書くための励みになっています。
誤字脱字がありましたらお知らせください、すぐに訂正を行っています。
また意味不明な文章があることもありますが、なにぶん素人が書いている文章です。お知らせくだされば、訂正しています。
クリスとアリシアの物語をお楽しみください。
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