第9話 アリシアがいる村

村にミノタウロスの二体が襲ってきた。


村は壊滅的な状況で家や壁の損傷、そして多くの人命が失われた。


しばらくは復旧作業に追われた、俺たちも、手伝いに駆り出される。


家や壁だけじゃなく、畑も荒らされているから農作物が心配だと村の人が言っていた。


俺とアリシアは手伝いに駆り出されて、もう、くたくただった。


部屋もアリシアと同じ部屋にすると落ち着いていたが、俺の部屋から机が無くなった。


歩くことも横になっていく必要があるほど、狭くなった俺の部屋。


なんとか、ベットの横を通り部屋から出ようとすると、ふら付いてアリシアとの境になっているシーツに手がかかってしまう。


そんな時に限ってアリシアが着替え中だ。


俺は慌てて見ないように目を閉じたり、よそを向いたりするが、アリシアの目が怖い………


アリシアの家から運び込んだのは、ベットとタンス………


俺の家にはタンスはなく、服を畳んで置いてあるだけ。


もちろん下着も重ねてベットのヘリの棚に置いてある。


頭のところが棚状になっているから、母親は、洗濯したあとは、畳んで置いておくだけ。


もちろん、下着も見える状態で………


アリシアはと言うと、ちゃんとタンスに入れて見えないようにしている。



アリシアは夜になると泣いていることもある。


俺が目を覚ましたらアリシアのベットに行って手を握ってあげると、アリシアも気がついて、泣くのをやめて、俺の手を握り返してくれて、アリシアが寝付くことを待つこともあった。


時にはアリシアは泣きやむことはなく、俺が眠気にウトウトしているとアリシアがベットをポンポンと叩くことがあり、アリシアと一緒に寝ることもあった。


寝るだけだよ。


アリシアと寝ると、暖かくて、アリシアを守っていかなければって言う思いになる。


アリシアは俺が夢の中でみた記憶にあるらアイラに顔立ちが似ている。


走馬灯のように見た記憶だかだから、はっきりとはわからないけど、正確も似ているのかな。


俺には、アルベルトが死ぬときの記憶がある………最後までライラのことを思っていたアルベルトの記憶………


同じ国の軍の奴らが裏切り、切られたアルベルト………


最後に魔力はなかったはずなのに、ライラのところまで転移できた………


ほんとうに、それが最後だった………


俺たちは、アリシアの家にいき、使えるものは、持ってきている。


そして時々、近くに咲いている花を共同墓地で眠るアリシアの両親の墓に手を合わせている。


アリシアを入れて家族が4人になった。


なんだか、家も花が生けてあったり、家が変化しているような気がする。


家族が増えると、こんなにも違うのか?


いや、女性だからか?


それとも、アリシアだからか?


以前はアリシアは粗暴な女の子だったような気がする。


それが、最近は、そんなことは無くなり、変わってきたアリシア。


俺と同じ部屋にいて、シーツで仕切っているだけの部屋で以前より狭くなった部屋では、俺のスペースは変わっていないが、部屋の感じが違ってきている。


明るくなったような気がする。


でも、アリシアは朝から厳しい。


アリシアは、朝、俺を起こしに来てくれる。


「ほらっ、クリス、起きなさいよ」と言って布団を取り上げる。


「うっ、まだ、眠いよ」と言っても容赦ない。


「早く起きて、顔を洗って」と言われる。


もう、二度寝をすることはできない、アリシアが布団を畳んでいるから。


バサッ、バサッと布団を音を立てて広げながら丁寧に畳んでいく。


俺は、それを横目に服を着替える。


アリシアは寂しさを紛らわせるために、忙しくしているみたいな感じ?


暇だったら考えてしまうから。


その結果、しわ寄せが、こちらにきている。


今でも、アリシアと剣の練習はしている。


いつ、魔物が村に来てもいいように………


大人たちは、俺たちの剣の稽古を、遊びだと思っている。


でも、俺たちにとっては真剣な稽古だ。


しかし、朝からたたき起こされて、畑仕事や水汲みをすることもあるため、筋肉を鍛えることもできる。


俺とアリシアは積極的に、畑仕事をしたり、水汲みをする。


毎日、畑仕事や水汲みをしていると、剣の稽古をしても、キツクなくなってきた。


もう、ひ弱な昔の俺じゃなくなってきた。


アリシアに助けられてばかりの俺じゃないけど、朝には弱い。


体を鍛えておかないと、アリシアや家族を守れない。


積極的に近隣の家の水汲みを手伝った。


水は飲み水もいるが、畑にも水は必要だ。


でも、水があるのは、門の外の川に行かなければならない。


そして木の桶で水を汲むんだけど、水が漏れていく。


だから大変な仕事だ。


俺の目的は将来、アリシアを守れる冒険者になること。


でも、親やアリシアに冒険者になりたいって言うと反対されるだろう。


俺は、昼間はアリシアと畑仕事をしたり、水汲みをして、家族が寝静まったあと、家からもでて、門を通るのではなく、兵を乗り越えて魔法の訓練をしている。


ケイシーと稽古した魔法を試している。


そうすると、色々な魔法が使えることがわかってきた。


夜に出かけて、魔法を稽古していることを知られてはいけない。


今、覚えて練習をしている魔法は検索魔法。


魔法を波のように広げていくと、生物だったら、すぐに検索に引っ掛かってくる。


俺が展開している魔力と違う魔力を判別する。


生物には魔力があることがわかっている。


しかも、それぞれで違う質の魔力があることが。


人だって、同じようで全員が違うと言うことが。


俺は家から出れない雨の夜は、家族だけじゃなく、村全体の検索を稽古している。


それで、わかったことだが、同じ人でも、どう説明すればいいか、迷うが、魔力の質が違うと言うか、そんなことがあるみたいだ。


一番、魔力が多いのは俺の次はアリシアだ。


アリシアは、魔法の才能があると思う、ただ、まだ、それを引き出せていない。


俺も人のことは言えないが、今、何が使えるのか、稽古中だ。


魔法の検索魔法、一つ取ってみても、色々と面白い………


検索魔法を広げていくと、そこに何がいるのか、わかることも多い。


しかし、まだ、見たこともない魔物がいることが多いが。


俺には、魔法の素質があるみたいで、魔力も大量にあることがわかっている。


それを引き出してくれたのがケイシーと言う存在だ。


ケイシーのあとには、能力拡大は、やはり、魔物の存在が大きいと思える。


俺が無意識の時にアリシアに使ってしまった結界の魔法。


結界の魔法は、自分の守る魔法であり、敵を囲う魔法でもある。


ミノタウロスの時に、アリシアを残していくのが心配で、無意識に発動した結界魔法。


どれくらいの効果があるのか、わからずに使った。


どこから自信がきたのか、わからないけど、どんな魔法かも、わからずに。


自分が使う魔法は、熟知しておかないと………


あっ、でもケイシーは呪文を唱えていたな………と、今、思い出した。


もう、呪文の言葉なんて、忘れてしまった。


まぁ、使えるからいいか? と思い直してみたが、本当に、それで良いのか、考える。


こんど、機会があれば、誰かに教えてもらえればいいな。



あの事件から2年たって、俺は15歳になった。


俺が15になるまでに畑仕事、水汲みなどをやって体力をつけたのと、魔法の訓練を順調に研究していった。


俺は、すべての魔法についての知識はないが、こんな魔法があるのかな? とか、こんな魔法があれば………と言う研究をしている。


あれから村には魔物が出るようなことはなく、平和、そのもの。


魔法を研究しても、使うチャンスさえない。


俺は、ある夜、村から魔法の稽古のために、もっと効率よく、抜け出すことができないか、考えている。


アリシアは、もう寝息を立てて寝ている。


いつもいく森に瞬間にいく事ができれば………そう、あの場所に………いるイメージで………と考えてたら、その場所に立っていた。


「えっ?」周りをキョロキョロして見渡すが、俺がイメージしていた森の場所だ。


しかし、あまりにも思い付きで、できたため、剣を持っていない………しかし俺は歩き出そうとした、今は月明かりがあり、結構、明るく見える。


検索魔法を展開して警戒をする。


そうすると、さっそく、検索案法に引っ掛かった奴らがいた。


しかし、気が付いたのは、奴らの方が先みたい。


敵の魔法の質はゴブリンだ。


しかし、村から遠く離れているとは言え、こんな近くまでゴブリンがいるなんて………


どうする>


考えても分からないから、やるしかない。


火の魔法は森が火事になってしまうし、村から火の明るさが見える可能性もあるため、風魔法を選択。


ゴブリンどもは、襲ってこない………俺は急に現れたので、様子見。


そのうちにゴブリンどもは、ギッとかギギッとか言い出した。


俺にはゴブリン語はわからないが、これが戦闘開始の合図だろう。


ゴブリンどもが動き出したから。


木の陰や、木の枝の上、生えている背丈のほどの草の陰に隠れていたゴブリン。


あちらこちらにゴブリンがいる。


ゴブリンは、手に武器を持っている奴もいる。


「ギッ」

「ギギッ」と声を発している。


俺は試しに使う魔法は風魔法のエアカッター。


手の魔力を集め、一気に右手を横に振る。


すごい勢いで飛んでいく風の刃


それだけじゃなく、幅が広い。


幅が広く、すごい勢いで飛んでいく魔法を避けることができる奴は少ない。


エアカッターで、木や草やゴブリンの体も半分に切られた。


次に俺は後ろに向けても同じ魔法を発動していく。


後ろのゴブリンも、同じように上下真っ二つになる。


しかし、木の上にいた奴は、木が倒れていくので、急いで木から降りる。


その数、5匹。


俺は発動したエアカッターの二本を、追いかけさせる。


当然、エアカッターの方が早いから、ゴブリンが逃げ出す前方から、迫っていく。


一瞬で逃げ惑うゴブリンを切り倒す。


「ふーっ」とため息。


俺は特に、夜は明るさがある火魔法よりも、風魔法や土魔法、水魔法を稽古していた、今回は、その稽古の成果がでたみたいだ。


でも、、この大量のゴブリンはどうする?


このままにしておけば、魔物が集まる。


今は夜だから火魔法で焼いてしまうと目立つ。


しかし、俺の周りは木がない、先ほど木を切ったから、火の魔法を選択しても大丈夫だよな。


しょうがない、火魔法で、焼いてしまおう。


でも、その前に集めなければ。


俺は死んだゴブリンの足を持って、一か所に集めて、火魔法で焼却した。


でも、あまりにも多くのゴブリンだったので、火が大きくなってしまった。


複数に分けるべきだった。


しまった~失敗してしまった。


もう、少し、ここにいて、消化を確認しなきゃならないのに。


*****


翌朝、やはり、朝から、騒がしくなる。


自分の部屋で騒がしくて目を開けるとドアを開ける。


そこにはアリシアと両親の姿。


「どうしたの?」と寝ぼけ眼で聞くと


「昨日、村の遠くで火が上がっていたそうだ」


「えっ、ほんとう?」と、とぼけた。


若くて戦うことができる村人が、武器を持って偵察にいく。


若い村人と言っても、5人しかいない。


俺の父親も若い方に入るみたいで、加わった。


「お父さん、俺も行こうか?」


「いや、お前は、ここで母さんとアリシアちゃんを守ってくれ」と言われたので、無理にいくことはやめた。


「うん、わかった」と言って、村の門までいき、見送る。


母さんが「大丈夫かしら?」と言うので、検索してみたが、今は魔物もいないし、道中も安全な道だ。


現場を見ても、誰かが火を焚いてゴブリンを焼いたとしかわからないだろう。


父親たちは、一日かけて、現場を見にいったが、やはり、誰かがゴブリンを討伐して焼いたとしか、わからなかった、と言っていた。


たぶん、冒険者だろうとも。


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