第8話 魔物に襲われたあと
私たちの住んでいる村がミノタウロスに襲われた。
村の門番たちが、何をしていたのか?
いや、例え門番がいても、警鐘を鳴らすしかなかっただろう?
門番は冒険者じゃない、普通の農民が交代で見張りをするだけだ。
そんな人たちにミノタウロスの相手は無理だ。
でも村人を逃がすことはできたかも知れない。
しかし後でわかったことだが、門番の人の遺体が見つかった。
そして村長も死んでいる。
*********
まずは、状況を確認する必要があるので俺の父親が、アリシアの家にいくことになった。
アリシアは泣き疲れて俺のベットで寝ている。
母親と俺は、アリシアの家の外で待つ。
父親だけが、アリシアの家の中に入って状況を確認する。
瓦礫を乗り越え、アリシアの家の中に入っていく。
ガタガタ音を立てながら確認をしている。
しばらくたって父親が出てくる。
「あなた、どうでした?」
「やはり、アリシアの両親とも死んでいた」と落ち込んでいる。
「今は、散らかっていて、これだけしか持ちだせなかった」とアリシアの少しの服。
「あっ、良かった、それだけでも残っていて」
「今は散らかっているから、探しにくいけど、あとで探してみるよ」
「ええ、お願いね」
「アリシアのことだけど、どうしようか?」
「どうするも、何もないと思うけど、アリシアちゃんは、私たちの家で暮らしてもらいましょう」
「ああ、それしかないね」
「ええ」
俺たちが家に帰ろうとしたとき、俺たちの家の中から、泣き声が………
俺たちは家の中に入る事に躊躇した。
しばらく、アリシアの泣き声や周りの泣き声を聞いている。
生き残った人たちが、死んだ人を悲しんでいる声が、あちらこちらからしている。
すすり泣く声、大きな泣き声を上げる声………
みんな悲しんでいる。
あちらこちらで、泣く声が聞こえているが、俺たち家族も悲しみにくれている。
小さい村だから、ほとんどの人と顔見知りだ。
多くの家が壊されたりしているが、俺の家も、窓ガラスが割られているし、玄関もヒビが入っている。
たぶん、ミノタウロスに蹴られたんだろう、足跡が付いている。
無事な家を探す方が大変な状況だ。
父親が、アリシアの家に入って、アリシアの服や使えるものを持ってきている。
アリシアの様子を見るために、母親が中に入ってアリシアをなだめている。
俺たちは、手持無沙汰で家の外で待っているだけ………
父親が「ちょっと、周りの様子を見てくる」と言って立ち去った。
俺は、もう一度、アリシアの家にいく事にした。
あの時は、置いていたアリシアのこともあり、しっかりをミノタウロスを見ることができなかった。
俺は瓦礫の山を乗り越えてミノタウロスのそばに行き「これがミノタウロスか?」と言って毛を触ったりする。
ここに置いていても、良いのだろうか?
俺は迷ったが、そのままにしておいた。
突然、ミノタウロスが姿を消したら、騒ぎになってしまう。
まだ、生きていると思われると厄介だ。
ミノタウロスの横にいるアリシアの母親をみると、無残な姿………
あちらこちらを食われている。
アリシアの母親と父親を動かしたいが、俺がやると変に思われると思い、それは、やめておいた。
と、そこに目についたものがあった。
俺は、それを家に持ち帰る事にした。
アリシアの家からでて、俺の家に帰ろうとした時に、ちょうど、父親が帰ってきた。
「おかえり」と俺は言うと父親は暗い………
「村が壊滅的な状況になっている」
「そう………」
俺たちは、二人して家の中に入る。
底には誰もいない………
母親は、まだアリシアについているんだろう。
俺たちは水を汲み、飲んだが、落ち着かない。
イスに座って、テーブルにコップを置いて、何も話すことはない………
そこに扉が開く音………
母親が出てきた。
母親がイスに座るので、俺が飲んだコップを差し出すと、母親は、飲んだ。
母親も顔色が悪い………見知った隣人を失った悲しみは、母親にも影響している。
その中で一番、悲しんでいるのがアリシアだ。
もう、夕食の時間だが、動くことができない。
俺がイスから立ち上がって、パンを持ってくる。
そしてテーブルの上に置いて、一つ持って、アリシアの家から持ってきたコップに水を入れて、俺の部屋に持って行く。
自分の部屋なのにノックをするのも変かなと思ったが、俺はノックをしたが返事はない。
そーと扉を開けて、除くとアリシアは俺のベットに壁側に向いて寝ているのか?
俺は机の上に、静かにコップとパンを置く。
「アリシア、ここにパンと水を置いておくよ」と小さい声で………
その声を聞いたのか、アリシアはガバッと起き上がり俺をベットに引っ張り込んだ。
アリシアは何も言うことなく、俺を抱きしめるように腕を回す。
俺の胸に顔をうずめているから、表情はわからない。
それでも時々、泣き声をあげている。
そのたびに俺の体をアリシアの腕に力が入る。
俺はアリシアの体に腕を纏わりつかせていく。
どれくらいの時間が立っただろう。
俺たちは、眠っていた。
お互いを抱きしめるようにして、夢の中に落ちた。
俺は夢の中で、以前、行ったことがある空間にいた。
あの全部が白い部屋………そこで、俺は、また以前の人だとけど、その人と会った、
でも、今回も俺は問いかけても、何も言わない。
俺は何を言おうか、迷っていたが、以前、見たアルベルトのことを見せられた。
それが終わったとき、「あなたがアルベルト?」と言う言葉を口にしたが、返事はなかった。
そう言った瞬間、俺は白い部屋から退出させられた。
「はっ!」と目を覚ましたて頭だけ起こして見える範囲をキョロキョロしたが、俺の部屋だった。
俺はふーっとため息をつき、目の前で寝ているアリシアを見つめる。
アリシアは、瞼を腫らしているが、スースー寝息を立てている。
何の夢を見ているのか、わからないがアリシアは笑顔だった。
俺は再度、アリシアを抱きしめて瞼を閉じた………
*******
次の日、部屋に朝日が入ってきて俺の顔を照らした。
普段は入る事がない朝日が、昨日のミノタウロスの襲撃で雨戸が壊れて朝日が入ってきたみたい。
昨日から態勢が変わったような気がしない、だから腕が痛みを覚えるが、動くわけにはいかない。
俺は、じっとアリシアの寝顔を見ている………
そのうち、アリシアが動き出した。
パチッと目を開けて、俺に「あっ………クリス………おはよう」と言った。
「うん、おはよう」
と言うと俺は起き上がろうとしたが、アリシアの体の下に腕があるから動けない。
「あっ」とアリシアも体を起こしてくれると、やっと起きることができたが、腕が痛い。
ジンジンしてしびれている。
俺は腕をさすりながら、ベットに座っている。
「………クリス、ありがとう」
「ん? なにが?」
「……うん、何でもない」と言うアリシアを見てるが、アリシアの目は赤いし瞼も腫れている。
「アリシア……その……大丈夫?」
「うん、ありがとう、クリス」
俺がベットから立ち上がり、アリシアも立とうとしたときに、ちょっとふら付いた。
俺が手を取り、アリシアを支える。
俺たち、二人が俺の部屋から揃って出てくると、もう、そこには母親がいた。
「あっ、二人とも、ちょっと待ってね」
「お父さんは?」
「横にいってるわ」
「そうなんだ」と言うとアリシアが俺の袖を引っ張る。
「ちょっと、見てくるよ」
「………ええ」と気を遣う母親。
俺たちは、二人で外に出て村をみると、結構、被害が大きいことがわかる。
今日は天気で良い日なのに、村全体がどんよりしている。
アリシアは昨日とは違い、ずいぶんと落ち着きを取り戻した。
アリシアはゆっくりと歩を進め、歩き出すが、中が見える位置に来ると、突然、家の横に行き吐いてしまった。
アリシアの背中をさすりながら、待つことにした。
「大丈夫?」
「‥‥うん、だいじょう‥ぶ」アリシアの顔色が悪い。
「ねぇ、アリシア、後にしない?」
「ううん、ここまで来たから、いくわ」 アリシアは強いな
俺たちは歩いていく。
「お父さん」と外から声をかける。
父親がアリシアの家の中から顔を出して出てくる。
「二人とも、もう、起きたのか?」
「うん、アリシアが家をみたいって言うから」
「そうか」
「いま、使えそうなものを探している」
「そうですか」アリシア
「それでな、アリシアちゃん、これからは俺たちと暮らさないか?」と俺の父親。
「!っ………そ、そちらさえ良ければ、そうですね、よろしくお願いします」
「じゃ、アリシアちゃんは俺たちの家で暮らそう」
「それで、今から家の中のものを運び出すんだけど、家探しすることになるけど………」
「はい、大丈夫です」
「まずは、緊急は、服からだね」
「あっ、はい」
「じゃ、中に入るのは、こっちでするから、俺から受け取って運んでもらえる?」
「うん、わかった」
父親が中から持ち出したものを、俺の家に運んでいく。
二人して物を運んでいく。
ある程度、運び終えると、
「あばちゃん、おじちゃん、ありがとうございます」とお礼をしたのと、これからよろしくお願いします、とアリシアは言った。
それから、村の合同葬儀があって、ミノタウロスにやられた全員が、燃やされた。
魔物が寄り付くので、そのままでは埋めることができない。
特に、これだけ大量の遺体では、魔物をおびき寄せることになる。
*****
アリシアの両親の葬儀が終わり、共同の墓を作り、埋葬する。
アリシアの家の中にいた魔物も解体して運び出した。
あんな大きなミノタウロスを、そのまま、外に出すことはできなかった。
両親の遺体も、ミノタウロスもいなくなったアリシアの家………
家とは言えない壊された瓦礫だけが、残っている。
俺たちの家も父親や村の残った人だちが総出で、修理を行った。
家人がいない家は、、そのままにするしかない。
せめて、住んでいる家は、早く修理する必要がある。
家の家も玄関の扉を新しくした。
雨戸も修理して、閉じることができた。
しかし、この家には部屋が無かった。
そう二部屋しかなかったのだ。
今までは両親の部屋と俺の部屋があれば、良かった………あとは食事をするところ。
一緒に暮らすことをアリシアに告げたが、よく考えていないみたいな両親。
「どうしょうか?」と父親
「そうね、困ったわ」と母親
「クリスと同じ部屋と言う訳には………」
「そうなのよね、うっかりしていたわ」
「いいえ、おばちゃん、私は、ここでも良いですから」
「さすがに、それはできないわ、女の子だものね」
「じゃ、俺がここで寝るよ」
「そうね、それがいいわ」と、さも、そうするのが当たり前のように俺の部屋を追い出された。
「でも、それじゃ、クリスがかわいそうだわ」とアリシア
「でも、アリシアちゃんをここで寝かせることはできないわ、そんなことしたら、ご両親に顔向けできないわ」
「いいえ、おばちゃん、私はできたらクリスと同じ部屋でも………」
「あっ、そうだ、部屋を半分にカーテンで仕切るのは?」
「そうだね、それも良いかも………うん、そうだね、アリシアちゃんさえ良ければだけど」
「私は構いません」
「じゃ、そうしようか」と言って父親が動き出す。
さっとアリシアの家に行って、アリシアのベットを解体し始めた。
そこに俺が後ろから近づくと、「おっ、クリス、来たな、これを持って行ってくれ」と
「あっ、うん」と言って父親がアリシアのベットを解体して、俺の部屋に運び込む。
運び終えると、父親が、俺の部屋にベットを組み立てていく。
俺のベットが置いてある反対側に………
そして中央にロープを引いて、その上にシーツをかけた。
「よし、ひとまず、これで行こうか」
「そうな、でも狭いわね」
「うん、そうだな………う~ん、そうだクリスの机を出そう」
「あっ、いいわね」
と言って俺に断りもなく、机を運び出す両親
そして父親は、俺たちを食事をするテーブルの椅子に座らせ、
「アリシアちゃん、これ」と言ってお金を出した。
「アリシアちゃんの家にあったお金だよ」と答えた。
「おばちゃん、おじちゃん、これは、ここで使ってください」
「いいや、いけないよ、君の両親が残したものだから、君のだよ」
「そうよ、あとは、今は見つからなかったから、それはあなたが大切に使いなさい」
「あ、ありがとうござい‥ま‥す」と言ってアリシアは涙した。
「あなたは、もう、うちの子なんだからね、遠慮しないでよ」
「はい、ありがとうございます」
「それと、これ」と言ってアリシアの母親がつけていたペンダントを見せた。
「アリシアちゃんのお母さんがつけていたものだけど、思い出になるものがなかったから、これで、ね」と言ってアリシアの手をとって、その上に乗せた。
「ごめんね、お父さんのものは見つからなかったの」
「はい、母は、これを父からもらったって言っていましたから‥‥‥」
「そうだったわね、聞いたことがあるわ。じゃあ、それは二人の両親の思い出ね」
「はい」
アリシアがペンダントを手に握りしめていた………
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