第90話 雛ちゃんの預け先

 SNSを飛ばすも知らせを見れたのは間中だけだったのか、細田が現れないので、幸太朗が外でランしてるバスケ部員に知らせた。


 どうやら壊れっぷりを心配されて細田はバスケ部部長の安積さんに部室に閉じ込められていたらしい。


「良かったよぉ〜。雛ちゃん無事でぇ〜。全部圭吾が悪いんだ。許してね。学校で飼うはめになったばっかりに。ごめんね。」


細田は号泣しながら雛ちゃんに土下座しており、相変わらず壊れたままだ。


「キサラギ、ママ。スーチャンチリリリ。スーチャンチリリリ。」


雛ちゃんはまた、新しい言葉を会得したらしい。良かったよぉ〜と泣きながらへたり込んでいる細田は放って間中は現場検証に忙しい。


「間中、この脅迫状、どう思う?」


「あーそれ、早く写真に残して下さい!」


間中が慌ててる。幸太朗に持たせて写真を撮る。脅迫状に『この事件の犯人は科学部の佐田幸太朗……』と書かれているから、その本人と撮るとちょっとした記念写真みたいだ。


「先程の最初の脅迫状、字が消えかかってるんですよ。消えるインクみたいなので書いたみたいです。それも危ないです。わざと癖文字にして、さらに消えるようにするなんて、用意周到な犯人です。って、部長!幸太朗の顔はいりませんからね!何、記念撮影みたいなことしてるんですか!」


間中に怒られた。消えるインクとな。面白い。と脅迫状を眺めると確かに字が薄くなっていってるようだ。


「大体見ましたし、告げ口するな云々言ってますから、他に人が来ないうちに一旦引き上げましょう。」


間中の撤収の呼びかけがあり、細田は大事そうに雛ちゃんの籠を抱えた。幸太朗は剣道着を着替えてから理科室に来るといい、間中と私はとりあえず暗幕も回収することにしてゴミ集積所を後にした。


 安積さんにとりあえず雛ちゃんの無事を知らせると、細田はバスケ部に今日は来なくても良いと返事が帰ってきた。そりゃあそうだよな。


 理科室2数学班にとりあえず雛ちゃんを運ぶ。目が届かない所には置きたく無かったからだ。


「細田、雛ちゃん、うちで預かろうか?うちの両親はハードに働いとるから、ほぼ留守で、雛ちゃん寂しいかもしれんが、犯人に狙われた以上、学校に置いておくのは危険だ。」


世話ができるかあまり自信はないが生物準備室に置いておけなかった。教員に告げ口するなと犯人が言うのであれば、生物の坂本先生やたまの預け先の物理の髙山先生にも頼めない。


「俺、如月の家に雛ちゃんに会いに行っても良い?」


「んーどのくらいの頻度?」


「登下校の際。」


1日2回か。まあ、いいかと口を開きかけると、


「俺、預かる。」


幸太朗が食い気味に入ってきた。


「幸太朗はあまり、雛ちゃんとは仲良くない気が。」


と細田が言うと、


「キサラギ、ママ、ママ。」


雛ちゃんが援護射撃をしてくる。


「うちの母さん文鳥飼ってる。もう1匹くらい鳥籠大丈夫だ。細田、うちの方が通り道で便利だろ。」


説得力抜群だ。そんなこんなで雛ちゃんの避難先が決まると、当然これからどうするかの話になった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る