第77話 今回のお連れは
定量の牛乳、砂糖を鍋で沸騰寸前まで温める。泡立てた卵液をそこにいれバニラエッセンスを落とす。そしてゼラチンを振り入れる。こうしてできたプリン液を濾しながら100mlビーカーに流し入れ冷蔵庫で冷やして固める。その間にカラメルソース作りだ。手慣れた戸村先輩の
「こっちにいっちゃったかな?あ、戸村、もう始めてたのか。遅くなった。」
と平原先輩が現れた。しかも平原先輩は1人ではなく、見た事のない可愛いらしい女子を連れていた。服装もふわふわとしたピンクの花柄のワンピース姿でどこのアイドル連れて歩いてるんですか、と突っ込みたくなった。
「あ、如月さん、こちらは高校2年の秋まではこの高校にいた
平原先輩は凄く赤い顔をしながら紹介してくれた。
「
蔵森さんは平原先輩が照れて言えないワードをはっきりと微ピンクに顔を染めながら告げてしまうような女性だった。平原先輩の側にちょこんと立つそれすらベストポジションだ。ふと戸村先輩を見ると平常運転だ。間中はちょっと羨ましそうに見惚れていた。
「あれ、蔵森さんってもしかして、平原先輩がデートで忙しいのデート相手ですかね?」
前回のかき氷の際に戸村先輩がそう言っていた。平原先輩は在学中、片想いの相手がいるって有名だった。その方だとしたら、想いを遂げたとか言う奴?
「そう。それ。今日は後輩に見せびらかしにきたんでしょ。」
できたカラメルソースをコニカルビーカーにいれながら戸村先輩がからかった。
「わー戸村さんの理科室クッキング!覚えてます!2年の時の文化祭のかき氷素敵でしたよね!そうそう、私カルメ焼き、自宅でやってみたけど上手く膨らまないの。販売するほど綺麗に作れる戸村さんってやっぱり凄いですよね!」
戸村先輩のからかいを軽くスルーして可愛くヨイショをする蔵森さん。平原先輩をとられて面白くない戸村先輩もどこかこのヨイショに弱いらしく、冷蔵庫で冷やし中のビーカープリンを見せたり、スパチュラ泡立て器を見せびらかしたりサービスしている。実に面白い。
平原先輩はそんな蔵森さんを幸せそうに眺めていて見ているだけで重度の胸焼けを負いそうだ。そう言えば、
「間中、今回、安田先輩は呼ばなかったのか?後から来るのかの?」
「安田先輩は『本番さながら模試』を受けに隣県までお出かけです。ノープロブレムです。」
「本番さながら模試」とは大学受験生が本番のように色んな人がいる見知らぬ会場で模試を受けるという奴で申し込み制だ。きっとアドバイスと称して、確かに良い体験なんだろうけど、日程とか会場とか、絶対、戸村先輩、謀ったな。
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