第63話 Dying message

 今日の所は、幸太朗が無実を訴えているのとこちらの方で犯人を探すことで同意してお帰り頂いた。とりあえず剣山投げ合いを回避してほっとした。


「とりあえず現場を見に行って来るか。」


と幸太朗に案内してもらって華道部が管轄している中庭の花壇へと向かった。


 夕日の中、その花壇は無残にも踏み散らされいた。花盛りのグラジオラスやガザニア、千日紅、ヒマワリなど見事であったろうに。幸太朗が悲鳴をあげて駆け寄っているから、花と話しをしていたなんて言うのも嘘では無いのだろう。とりあえず幸太朗には花壇には入らないでもらって、現場を写真撮影した。花を踏んだ足跡がくっきり残っているものなどを見ると大きい。写真を撮り長さを測る。念のため幸太朗の靴底を確認すると違う形でほっとした。


 花壇に手を合わせてる幸太朗に


「そろそろ帰ろうか。犯人見つかるかのう?」


と声をかけると、


「犯人、青いジャージの男。犯行時間は7月10日の日曜日。日暮れどき。」


幸太朗がぼそぼそと告げた。


「え!?」


なんだその情報はとびっくりすると、


「お花さん達が教えてくれた。」


としたり顔で言う。ちょっと待って。そこまで?


「分かった。もしかして犯人見つけて連れてきたら、こいつーとか教えてくれるかのう?」


「この花達がそれまで生きてたらね。」


幸太朗は悲しそうに答えた。そっか、さっきの手掛かり情報はいわば花達のダイイング・メッセージなのかとちょっとしんみりしてしまった。



というあらましを次の日間中に伝えると、


「部長、マジですか?花のダイイング・メッセージとか花に面通しとか、花の証言なんか通るわけないでしょ!!幸太朗の不思議世界から戻ってきてください!!」


と怒られた。

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