第62話 華道部美人部長
16時半きっかりに美人と噂の高い華道部部長がサラサラのストレートロングヘアをたなびかせザルに剣山を山盛りに抱えて数学班にやってきた。良かった。1人だ。親衛隊までいたらどうしようかと思った。
「あの、とりあえず、お話から伺いたく、こちらに座って頂いて。」
前回教頭先生が来てから出来上がった実験机来客スペースにお通しした。
幸太朗をぎっと睨みながら華道部部長森田さんは座って剣山のザルをどんっと実験机の上に置いた。
向かいに私が座り、幸太朗は亀と鹿の間に避難してしまった。まあ、いいか。
「科学部部長の如月です。前回、文化祭の時はうちの佐田がご迷惑をおかけしました。今回はまた何かやらかしたのでしょうか?」
すると森田さんはザルから剣山を1つ取り出し針の方を上に向けてダンと音を立てて机の上に置いた。あーびっくりした。その音に慌てて幸太朗は亀と鹿の間から這い出しピタリと私の隣に座った。
「前回の件の謝罪は薔薇の花でお受けして水に流しましたけど。謝りにきたのが何故、犯人のそこの佐田さんではないのかかなり気になりましたけど、まあ、細田さんに謝ってもらうというのも気持ち良かったのでよろしいんですけど、」
またドンと剣山を1つ机の上に置くと
「この間、華道部管理の花壇でそちらの佐田さんに会いましてね、何をしているのかと声をかけたら花と会話しているとか言うんですよ。」
あー幸太朗なら有りだ。いや、その辺の不思議ちゃんはもう少し隠して生きていてほしい。
「まあ、その辺は置いといて、ドクダミの件は許してあげると声をかけたら、ドクダミが飾ってほしいと言ったからあれで良かったなどと言って全然反省をしておらず、」
またドンと剣山を机の上に。もう慣れてきたが、かなり針が凶暴だ。これ何個並ぶんでしょう?
「まあ、それは薔薇の花束に免じて許すとして、花壇が今朝見たら荒らされていたんです!そこの佐田さん以外に不審者は思い当たらない!!」
今度は特大の剣山を掴むと、剣山にもいろんな大きさあるんだなと感心したのも束の間、幸太朗の目の前にそれを突き出し、
「これは華道部への嫌がらせ、なんの理由があるんだか、場合によっては成敗ですが、お花の恨みは果たし合いにてはらさせて頂きます。」
なんか時代劇みたいーとつい現実逃避しそうになったが、幸太朗は森田さんの腕を掴むと剣山を取り上げ、すっと立ち上がるとサササっと机の上の剣山を勝手にザルに戻しそのまま奪い取って
「俺、花壇荒らしてない。」
と無実を訴えた。
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