第33話 後日の後日

 前の日、戸棚に段ボールごと押し込んでおいたはずの例の粘土像がガラス戸棚の方に移っていて非常に驚いた。しかも「吹奏楽部荒らし事件解決記念戦利品 木原瑛里作」なんてプレートがくっつけられていた。明らかに間中の字だ。化学班の活動してる理科室4へ行ってみた。


「あれ、間中は?」


1年生しか見当たらない。


「先輩なら今日は生徒会です。」


文化祭が近いからな。生徒会も大忙しであろう。仕方ないかと理科室2へ戻ると幸太朗が来ていて、ガラス戸から像を取り出していた。


「あ、幸太朗、それはだな、昨日木原さんが持ってきたものだ。お前にはお詫びとしてクランキーチョコがあるぞ」


と声をかけたのだが、返事はない。幸太朗は実験机の上に像を置くと、スプレー瓶を取り出した。


「幸太朗、それは何かの?」


「血のりスプレー。これつまんないからデコろうかと。」


「待て、お前が手を加えると、木原瑛里、佐田幸太朗と名前が載るぞ」


「ゲ」


「戻せ、ほら」


しぶしぶと幸太朗はガラス戸棚に像を戻した。危ない。更に気持ち悪くなって飾られるところだった。


「間中は?」


幸太朗は血のりスプレーを自分用のパソコンデスクの引き出しに戻しながら尋ねてきた。知らなかった。そんな所に血のりスプレーが常備されてるなんて。


「生徒会だって。文化祭近いからな。ほら、クランキーチョコ。」


チョコを渡すと嬉しそうに幸太朗の顔が緩んだ。


「あー文化祭か。俺も頑張る。」


「何を?」


「いろいろ」


幸太朗が頑張るとろくなことにならない気がすると思ったが黙った。言葉にすると実現しがちだ。何はともあれ、今日は、平和だった。


第一章fin

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