第12話 面談前 お昼休み
「俺は如月の言う通りに早弁して面談に挑むと言うのに、お前らは!」
「おっ、細田、まあ、座りたまえ。吹奏楽部が来るまで、一緒にコーヒーでも。」
物理準備室の主である、物理の髙山先生はコーヒー好きで、アルコールランプが熱源のサイホン式コーヒーメーカーを準備室中央に鎮座させている。今日は私達のために準備室を空けて本人は職員室に行かれたが、コーヒーを用意してくれたのだ。
私がコーヒーとお弁当を食べ、早弁常習犯の幸太朗が購買名物超特大チョコチップメロンパンを、間中がコーヒー片手に長い具沢山太巻き(なんて弁当だ。斬新すぎる。)を一本食いしている所に現れた細田がちょっとキレていた。
「俺は砂糖ミルクましましだ。」
デンと座って甘党を暴露しながら細田は間中が差し出した購買気まぐれパン耳ラスク(購買のパン屋さんがたまに持ってきてくれるからそう呼ばれている。キャラメル味で非常に美味しい)を摘んだ。
「次、木原さんからなんだろ?幸太朗の元カノで、幸太朗を犯人呼ばわりしたという。どうすりゃいいのよ。俺。そこなんかあるかと慌ててやってきたのにお前ら、緊張感ないしくつろぎすぎだし、コーヒーとか優雅に楽しんでるし。」
細田がキレた理由を吐露しながら甘〜いコーヒーを美味しそうに飲んだ。
「うーん。まあ、今まで通りに普通に?まあ、幸太朗を犯人扱いした理由は知りたいかなー。」
と幸太朗をチラッと見て答えると、太巻きを食べ終えた間中が、
「いつ、どこで、どちらから告ったのかとか幸太朗との破局の原因とか。聴いて欲しいですね。あ、あとどこまでいったとか思春期の男子高校生としては非常に興味がっ、ごっ」
間中は最後まで言わせてもらえなかった。幸太朗に口にラスクをまとめて突っ込まれたからだ。
「普通に事件のことだけ聞け、細田。」
涙目の間中を睨みながら低い声で幸太朗が言うと、
「あのさ、瑛里ちゃんとか呼んだら怒る?口滑らすために親しみ込めてみてるんだけど、」
「気にしねーよ。」
幸太朗が機嫌悪いまま投げやりに答えた。
そんな中、木原瑛里がキョロキョロしながら理科室1に入ってきたのが、マジックミラー越しに見えた。慌ててこちらの存在がバレないように細田とラスク咀嚼中の間中は一旦廊下に出ると理科室1へと木原を追いかける形になりながら入っていった。
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