第13話 木原瑛里
木原瑛里は誰か探すようにキョロキョロと辺りを見ていて、間中に促されてようやく席に着いた。
「木原瑛里さんですよね。2組の細田です。よろしくお願いします。」
細田は爽やかに笑顔で挨拶をした。木原瑛里は細田を
「知ってるわ。」
と答えた。
「瑛里さんって可愛い名前ですよね。海外でも通用しそうで。瑛里さんって呼んでも良いですかね?」
温度の低い木原の返答にもめげずに名前呼びを始めた細田に
「好きにすれば」
と窓の方を眺めながら木原は答えた。
「では瑛里さん、初めに佐田を犯人と名指した理由をおききしても?」
細田がキレ気味だ。自分のイケメンとイケボに見向きもしない木原にイラッとしたのがよく分かる。だって、それ最初に聞くことじゃないでしょーし。
「別に。あんな変なもん作るの佐田くんくらいだっていっただけよ。」
「なるほど。根拠もないのに犯人呼ばわりを。」
間中が暴走気味の細田を「落ち漬け」と口パクと手つきでなだめている。
「細田さんも知ってるでしょ。佐田くんのホラー趣味。私と佐田くんが別れたのも、彼のホラーのせいだし。デートはホラー映画鑑賞だし、SNSの返事は心霊写真とかだし。兼部してるから忙しいとか言って付き合い悪いし」
細田と間中が急にうんうんとうなづきはじめた。おい、事件の方を聞け!
「えーごほん。事件前に最後に鍵を閉めたのは瑛里さんだとお聞きしましたが何か変わった事とかありませんでしたか?」
「ないわ。ちゃんと職員室に鍵返したし。」
「そうですか。事件の朝は何時に登校されましたか?」
「七時半頃よ。鍵開かないと入れないから、こればかりは先輩の後よ。」
『おい、幸太朗、木原さん態度が凄いな。』
こそこそと木原の元カレ幸太朗に思わずきくと、
『イケメン細田に
『別れたとか語ってるぞ?』
『ただ時々一緒に帰ったりSNSで会話したりバレンタインにチョコ貰っただけ。あー剣道部に差し入れくれたり、2年になって一回一緒に買い物に行った。その時映画観た。でもサイコパスキモを最後に最近連絡よこさなくなったよ。』
『それを世間一般では付き合っていて別れた。つまりの元カレカノと言うのではないか?』
『それなら、俺と如月もカレカノになる』
ゴフッ。思わずコーヒーを吹き出しそうになった。
『如月とよく一緒に帰るしSNSやりとりするし、チョコ時々くれるし、剣道部にも差し入れくれたし、買い物も一緒に行くじゃん』
同じ数学班だから、一緒に帰ることもあるしSNSのやり取りもするし、チョコは手なづけるためだ。剣道部には時々数学班の仕事で迷惑をかける事があるからお詫びをして、買い物は戸村先輩のクッキングの材料を買いに、荷物持ちとして連れて行った…だけだ。
『終わったぞ、木原の聴取』
幸太朗に言われてミラーの向こうを見ると木原が間中にお辞儀をして出て行く所だった。いかん!みはぐった!大事な面談だったのに。思わず幸太朗を睨むと、何?と首を傾げるばかりであった。後でビデオを見直さなければと自分の失態にうなだれるばかりであった。
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