第11話 原田美津
朝は3年で金管のリーダーの原田美津で終わりとなる。
癖毛のふわふわした髪を一つのお団子にした小柄でぽっちゃりとした可愛い人だった。
「あなたが、細田くんね。私、安田さんと同じクラスなの。」
科学部3年のクセの強い女子の名前をあげてきた。
「僕は生物班なので安田先輩には大変お世話になりました。美津先輩ってお呼びしてもよろしいですか?」
と細田は普段使わない僕なんて言いながらにこやかに微笑んでるが、
《ゲー。よりによって安田先輩かよ。これ、脅しかよ。のるかバーカ》
幸太朗、細田の心のうちを代弁するでない!聞こえたら、どうする気だ。指を立てて、シーっとやると幸太朗は舌打ちしてボイレコとカメラの調子を確認し始めた。
「事件が発覚した日、昨日ですが、何時に登校されましたか?」
「私は、朝練をサボったの。テスト勉強が大変だったから疲れちゃって。門田さんと土井ちゃんは文系だからいいけど、理系はさ、数Ⅲがキツイわけ。土井ちゃんに頼まれたから残ったけど、ちょっとでも成績下がると親に部活辞めなさいって言われるし。だから、事件を知ったのは一限目の終わりに教室に訪ねてきてくれた土井ちゃんからだったわ。」
「どんな被害を?」
「私は、楽器が自前だから持ち帰ってたの。まあ、金管、トランペットとしては楽譜って事になるのかしら。あと、ビニル手袋が無いのよね。」
「ビニル手袋ですか?」
それは報告にない事だった。細田はこちらをチラッと見て、間中と視線を合わせて確認をしたらしく、
「何に使うビニル手袋なんですか?というか美津先輩のものですか?」
「私のよ。両手ないの。金管楽器ってね、ピストンの部分がネジ蓋になってるんだけど、オイルを差してピストンを動きやすくするために度々開けるのよ。それが時々開かなくなっちゃうの。で、ビニル手袋を使うのよ。瓶の蓋が開かないとかと同じ感じ。で、楽器庫に置いといたんだけどないのよ。誰も知らないって言うし。私、犯人が指紋残さないように使ったんじゃないかと思って。ねぇ、名推理でしょ?」
※数Ⅲとは数学Ⅲの略であり、多くの理系の学生が勉強する。微分積分、複素数平面など、挫折を呼びやすい難しさ。
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