第10話 土井美香
次に現れたのが同じ第一発見者の土井美香、副部長だ。肩ぐらいの長さの髪をハーフアップにした160センチくらいの目力の強い感じの人だった。
「2年の細田です。今日はありがとうございます。副部長の土井美香さんですね。美香先輩とお呼びしても?」
またか。そこから入るのか。と思っていると
「あ、美香ちゃんって呼んでいただけると、嬉しいんですけど、」
細田のイケボでポッと顔を赤らめてちゃん呼びを要求している。
「先輩に恐れ多いですけど、その方が宜しければ。美香ちゃんはいつも部長と一緒に来られるんですか?」
この甘ったるい細田の受け応えに無表情で座っている間中が怖い。幸太朗なんかヒーとかキモっとか細田頭おかしいとかずっと煩い。
「今回は亜佑美から一緒に行ってくれって頼まれたんです。間違えて鍵を借りたままになっていたから恥ずかしいって訳わかんないこと言って。一緒に行って良かったです。亜佑美、悲鳴あげて役立たずでしたもの。私がすぐに職員室に行って先生呼んで来たんですよ。その間、座って何もしないですし、あの子。先生連れて、あ、顧問の山岡先生はまだだったので、教頭先生を。戻ってきたらもう部員達が来て、あの像からリード引っこ抜いてたりしてたんですよ。」
「慌てて私、2年のリーダーの木原と1年のリーダーの玉澤を残して後の子達は教室にいかせました。木原が犯人は佐田っていう二年生だって言い出して。クラリネットのリードケースから使用中のを盗るとかマミュマミュの髪の毛を切るとかコントラバスの松脂を溶かすとか凄く詳しい人がやったなって私は思いましたけどね。」
「さすが、美香ちゃんは鋭いですね。あと心配なのですが、美香ちゃんは被害とかありませんでしたか?」
労わるような口調が「キモい。ちっとも心配してないくせに。」幸太朗、同意だ。
「心配してくれてありがとう。フルートパートはね、多分大丈夫だったのよ。だって皆、楽器が自前だし、軽いから持ち帰ってたから。楽譜もね、あれはパート練習用の楽譜だったんだけどフルートは楽器庫に自分のスペースが無いもんだから楽譜も置きっぱにしてなくて各自持ち歩いてるから、本当に何も被害を受けなかったの。」
「フルートだけ被害を受けてないから犯人はフルートの中にいるって言われるのが一番困るんです。他パートに嫌がらせをして楽しむなんてうちの子達にあり得ないです。」
可愛いふりをしたがっているが部長よりしっかりしているようだ。幸太朗はというとぶつぶつと
「無い。俺、無い。」
呟いていた。誰もお前のタイプかどうかは聞いてないって。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます