第21話  6/1(火)安積さんを呼びだす

「あれ、今日は雛ちゃんはいいのかい?」


 朝、理科室へ行くと雛ちゃんのいる理科室3ではなく、理科室2の前で細田と安積さんが待っていた。


「雛ちゃんが安積を怖がるといけないから。」


 と細田は過保護っぷりを発揮している。そんな細田の隣に安積さんは冷たい美男子顔で佇んでいた。理科室2の鍵をカチャカチャと開けていると凄い勢いで幸太朗が廊下をすっ飛んできた。


「おはよう。幸太朗。どうした?」


「いや、どうもこうも。お前、バスケ部イケメン2人も連れ込んで危ないだろ」


 謎な心配だ。


「お前が増えるとデカイ男3人に君臨する女王になってしまいそうだが?」


 首をこてんと傾げてみたが、幸太朗は無視ってガンと理科室2を開けると


「入って。」


 とバスケ部イケメンズを招き入れていた。


 吹奏楽部の顔写真を見せると安積さんは6人を指差した。1年の時に如月さん、安積さんと同じクラスだった3人と隣のクラスの3人だった。念のため中途退部者の名簿もみせたが、覚えがないと言われた。


「朝の貴重な時間にすまなかったな。」


 すると安積さんは私を見据えて


「城内さんの疑い晴らしてくれよ。あんなに辛い思いをしたのにまた酷い噂がではじめてる。どうせ吹部の仲間割れだ。卑怯な奴らの集まりだからな。あいつら一人一人潰して歩きたいぐらいだ。俺は今クラスが離れすぎていて城内さんに何もしてやれない。」


 本当に潰して歩きそうな顔をしていた。これは何か和らげないと。


「分かっている。協力感謝する。それより、協力ついでに、安積さん、城内さんに触られてみないかい?」


 細田を触りたいと言っておったが、ここは安積さんでも良さそうだ。むしろ、安積さんも城内さんに片想いだというならいい機会ではないかと思っての提案だ。だが、色白の安積さんの顔がみるみる赤く染まり細田も幸太朗も私も顔を見合わせてしまった。


「さっさっさっ⁈」


 赤い顔で唇をパクパクしている安積さんにはバスケ部氷のイケメン部長の片鱗もない。


「城内さんは骨と最近は筋肉にも目覚めたらしいが、その辺のフェチでな。この前はそこの幸太朗と生徒会の間中の骨と筋肉を堪能してもらうのと引き換えに話をしてもらったんだが、今度は細田を所望しておってな。筋トレで有名なバスケ部の筋肉に興味があるらしい。安積さんだとなおよろしいかと。」


 安積さんは幸太朗と細田を刺すようにみると、


「断る。細田も断れよ。佐田、お前、あの城内さんの手に手に手に手にっ⁉︎」


 安積さんはガタンと立ち上がると理科室2のドアをバンと開けた。あっお帰りかと思ったが、これだけは言っておかないと


「あのな、城内さんは痴女ではないからな。探究心だから。誤解しないでやってくれ。」


「分かってるよ‼︎」


 怒鳴ると安積さんは猛烈な勢いで去っていった。


「如月〜。」


 細田と幸太朗が涙目だ。


「何かダメだったかの。」


 うんうんと2人がうなづく。人の扱いは難しい。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る