第22話 ある意味事件な訪問者6/1(火)放課後

 犯人の大体の目星は付いたが、事件を起こした時間、侵入の仕方が分からなかった。スペアキーでも無ければ密室だ。もちろん部長と職員室と音楽の先生(吹奏楽部の顧問)が鍵を持っているわけだが。


 放課後、理科室2で唸っているとドアが音を立てて勢いよく開けられた。寒気がしたので、幸太朗、もちっと静かに開けられないかいと小言を言おうと振り向くと


「きっさらぎちゃ〜ん♡ここにいたの!一緒に理科室4へいきましょお〜」


にこやかに戸村先輩が仁王立ちしていた。寒気の原因は、これだ。納得した。戸村先輩とは今春卒業された科学部OBで数学班の先輩でもある。この先輩の在学中、何が困ったって第二の実験テーマとして掲げている「調理器具と実験器具の互換性」だ。このテーマにかこつけてちょいちょい理科室4でお料理をなさり、部員達に振る舞うという。あ、口調とやることはあれですが、科学部の男子ときいて目に浮かぶような風貌のメガネ無し版だと解説しておきましょうか。


「先輩、大学終わりですか、早いですね。」


「ほら、早くう。理科室4開いてないんだもん。化学班今日は休みかしら。」


ようするに理科室4を開けろと。


鍵を持って立ち上がると戸村先輩の保冷ケースに気がついた。


「先輩そのケースは」


「そっ。この子のために早く開けて!」


 この子とはでっかい透明な氷であった。

どうやらかき氷に使う用の透明な氷を時間かけてじっくりと製作して持ってきたらしい。


 ほどなくしてわらわらと部員達が集まり、理科室2からかき氷機(戸村先輩の代が部費で購入して理科室2に保存していた。)を運び出すとかき氷大会が始まった。


「今日は氷の記念日だから。かき氷の記念日も別にあるから悩んだんだけど、上手くいったからすぐ来たくて。」


と言いながら、シロップ持参で来るあたりぬかりない。


「あ、如月ちゃん、あとで、連れがくるから。これ、冷凍庫に入れといて。」


「連れってまさか、平原先輩ですか?」


戸村先輩の相棒といえば、当時数学班で部長だった平原先輩だ。静かな人だが、存在感があり頭が良く、行った大学も凄かった。


「ブブー。タケちゃんはデートで忙しいの。来るのは吹奏楽部OBの蟹江くんでーす。今吹奏楽部の方に顔出ししてるから。幸太朗から聞いたわよ。事件。蟹江も他ルートから聞いたらしくて、助けたいってさ。」









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