第20話 幸太朗胸をおさえる

「また何かありましたら、協力します。今度は細田さん、触ってみたいです。バスケ部の筋肉って有名じゃないですか。骨と筋肉のバランス見るの好きなんです。」


 対価を提示する事を忘れずに協力を申し出た城内さんを見送ると3人で集まった。


「幸太朗、城内さんどうだった?」


 幸太朗の意見を聞きたい時もある。城内さんが嘘をついてなければ、私の考えと一致している所があったのだ。


「痛かった。」


 いや、しりたいのは身体触られての感想ではなく、と幸太朗をみやると、胸を押さえていた。


「胸をやられたのか?」


 背中や腕を触っていただけの気がと首を傾げると、


「話を聞いて胸が痛くなった。あの人、部活やめたくなくて相当無理してたんだ。心が強いから身体が先に痛んで警鐘を鳴らしたんだ。」


 幸太朗が真面目な事を言った。


「卑怯な事をする人には見えませんよね。正々堂々と生きてるタイプだ…。」


正々堂々と触っていたしな。間中の意見にも同意だ。


「吹奏楽部の内情に詳しくて、城内さんの言葉を借りれば、犯人は逃げられない者。間中の言う卑怯な事をやると言えば、部活に残れた奴だと私は思った。」


 現在の部員の中に犯人がいるだろうと思ってはいたが、この線に絞って調べて間違いないと確信した。


「他の中途退部者の話を聞かなくても良いのですか?」


 間中の意見はもっともだが、


「城内さん以外の5人のうち2人は学校まで辞めてしまったんだ。他の3人にしたって大人しく辞めた奴らが今さら何故嫌がらせをするんだ?ここで、さらに中途退部者に話を聞けば、犯人だと言う噂が更に広まってしまう。むしろ、早く消してやりたい。」


「先日の面談をまた見直してみましょう。」


「安積さんに城内さんへ嫌がらせをしていた奴らの名前を聞き出そう。それから、幸太朗、あれは作ったかの?」


 胸を押さえたままの幸太朗に問うと


「できてる。」


 と吹奏楽部員の顔写真、指紋入り面談回答書をファイリングしたものをよこしてくれた。


「こんなの作ったんですか?こっわいなー。本人達が知ったらいろいろ問題に。」


 間中が真っ青になっている。


「終わったらちゃんと廃棄するさ。あと、フルートだけ何もされてない事に糸口がある気がするんだ。副部長は必死にフルートパートを庇ってたがの。」


「副部長が何かもっと知っているのかもしれませんね。」










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