第5話  生徒会室で像と対面

 普段の私ならもう下校する時間だというのに生徒会室にてかの粘土像と面会するはめになった。5月下旬の17時といえばまだ明るいが、あまり気持ちの良いものではなかった。


生徒会室はもう誰も居らず間中が鍵を開けてくれた。とりあえず幸太朗に運ばせてきた(結局付いてくると言ってきかなかった。待てができない奴である。)秤で重さをメジャーで縦横高さを測り、刺さっているリードの数を数えようとしたら穴がいくつか空いてる事に気づいた。


「この穴にもリードが刺さってたみたいだが?」


「あーそれは、リードが諦めきれなくて復活を試みて抜き取った部員が何名か」


「で、復活したのかの?」 



「無理だろ。赤く塗られた時点でもう、」


と幸太朗が呟いた。おや、リードを知っているのかという疑問が顔に出ていたのだろう。


「いや、あの、木原がリードについてうるさかったんだ。」


慌てて弁明をする幸太朗が怪しくてやはり犯人なのでは?と細い目で私と間中が見やると

更に幸太朗は慌てて


「いや、だから、あいつひたすら自分語りするタイプで、そこが苦手なんだけど、お互い竹が共通点ね、竹刀とリードがね。とか訳分かんない事言ってさ、リードについて詳しくされたって言うか。」


違う違うという感じで両手をふりながら弁明を。何やら親密で仲良かった時期はあったようだ。


「別れとは悲しいものだのう。間中。」


「ですね。犯人として名前を挙げられてしまうんですからね。」


したり顔で2人でうなづきあった。


 マミュマミュは20センチ大の髪の長い人形のはずだが、無惨にも硬式野球部のマスコットの様な短さになっていた。


「このマミュマミュは普段は何処に置いてあったのだ?」


「さあ?部員に聞いた方が良いですね?」


楽器ケースの持ち手は、ネジとともに33個ほど、透明のレジ袋にまとめられていた。


「持ち手はこんな感じで?」


「音楽室の黒板のそばにフックがあってそこにぶら下げられていたよ。」


幸太朗が嬉々として告げてきた。何度も言うが犯人か?お前は。まあ、現場を見たからな。


「散乱していた楽譜はまだ、吹奏楽部の顧問のもとですね。確認作業が松脂のせいで大変らしくて。」


と間中が付け加えた。 


「松脂なんてなんで吹奏楽部に?」


と疑問に思って聞くと


「コントラバスの弓に塗るそうです。なんでも4000円くらいする瓶を溶かしてばら撒かれたとか。嘆いてましたよ。」


「楽譜はさぞベトベトに。」


と憂いると、


「酷かったね。踏んだら危なかったよ。」


自分の心配をしながら容疑者幸太朗がうなづいた。ちょっとイラッとしたが、仕方ない。


「私は、明日の朝と昼休みと放課後の細田を手配しておくから間中は吹奏楽部の部員達を連れて来てくれ。その時にでもマミュマミュの事は聴くとしよう。場所は理科室1にするか。幸太朗はボイレコと隠しカメラを用意しておけ。」


指示を出すと


「事情聴取、一人当たり何分くらい?」


間中が吹奏楽部の部員数を数えながら聞いてきた。


「待て。事情聴取というと吹奏楽部員達を犯人扱いしているみたいになって怯えられても困る。聴き込みというと刑事が歩くイメージがあるし、フワッと細田と面談と部員達には伝えてくれ。」


「細田と面談…。」


不本意な顔の間中はほっておこう。


「さて1週間しか無いのであろう。一日で終わらすしかないとすると、朝が30分、昼が細田がご飯を食べながらやったとしても40分、放課後が16時から19時までか。朝、3人、昼4人、残りは放課後が精一杯だな。」


「分かりました。まずは第一発見者の三年生からで、二年生、一年生の順で?」


「だな。第一発見者が三年生なのだな。なら余計それが望ましいな。あ、間中、指紋採取キットまだ残ってるか?」


「知ってたんですか?化学班のお遊びを。まあ、ちょっと化学班の指紋を採取みたいなお試しぐらいしかしてないので、残ってますけど。」


間中は化学班のリーダーだ。


「知ってるも何も。部長になって始めてのお買い物だったんだぞ。それも使おう。」


そんな打ち合わせをして生徒会室を後にした。

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